文字サイズ変更

不幸の温度

#10

#5水色の嘘(中編)

「……テルヌーラ……? だれの、こと……?」

 デスディチャの声は、熱に浮かされたように掠れていた。
 コジャールは、まるで壊れやすいガラス細工を眺めるような、残酷に優しい笑みを浮かべる。

「あら、忘れてしまったの? 無理もないわね。その熱で脳まで焼かれてしまったのかしら。……それとも、隣にいるエルフの『先生』が、都合よく記憶を書き換えた?」

「……コジャール。余計なことを喋るなと言ったはずだ」

 ペテンテの言葉には、いつもの冷徹な余裕がなかった。魔導書を握る指先が白くなるほど力が入り、その瞳には明確な「焦燥」が宿っている。

「本当のことを教えてあげたらどう? ペテンテ。あなたがこの子を拾ったのは、慈悲なんかじゃない。……失われた『テルヌーラ』を、もう一度自分の手で作り直したかったからだって」

「黙れッ!!」

 ペテンテの咆哮とともに、地面から巨大な氷の棘が突き出した。しかし、コジャールは優雅に身を翻し、水の粒子となってそれを回避する。

「あ、あの……! テルヌーラって、デスディチャの前の名前なの……?」

 ラカスが、恐る恐る口を開く。
 デスディチャは、自分の胸元に手を当てた。そこには、50℃の熱源があるはずなのに、今はひどく冷たく、空っぽな穴が開いているような感覚。

「……わたしは、デスディチャ。……『不幸』っていう、名前」

「そうね。今はそう呼ばれているわね。でも、その子が『幸運』だった頃……魔素の副作用に侵される前の、誰からも愛されていた姿。それが『テルヌーラ』よ。……ねえ、思い出して? あなたが一番、温もりを知っていた頃のことを」

 コジャールの水色の瞳が、デスディチャの紅い瞳を射抜く。
 デスディチャの視界が、ぐにゃりと歪んだ。
 見覚えのない、陽だまりのような部屋。自分を抱きしめる、柔らかくて優しい、50℃なんていう異常な温度ではない「本当の温もり」。

「……っ、あ、あああああ!」

 デスディチャの頭痛が激化し、彼女の周囲の雪が一気に爆発するように蒸発した。

「おい、デスディチャ! しっかりしろ!」
「ちょっと! あいつの魔素が臨界点を超えそうよ! 爆発するわ!」

 ニナが叫び、ラカスが駆け寄ろうとするが、熱気で近づけない。
 ペテンテは、苦渋の決断を下したようにコジャールを睨みつけた。

「……コジャール。お前の目的は、彼女を壊すことか?」

「まさか。……私は、あなたたちと一緒に『研究』を続けたいだけ。……ねえ、ペテンテ。私を仲間に入れてくれるなら、この子の暴走、私が抑えてあげてもいいわよ?」

 水色のハーフアップを綺麗になびかせ、コジャールは勝利を確信したように微笑んだ。

作者メッセージ

ロクワ!!!!!!!!!

コメントありがとうございます( ;∀;)

2026/02/13 20:01

♗◈夢見鳥◈♗
ID:≫ 65guhuu.CMb9.
コメント

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権は♗◈夢見鳥◈♗さんに帰属します

TOP