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光の差し込む宗教神殿

#2

指先の記憶

神殿の最奥。かつて王侯貴族が震えながら救いを乞うた漆黒の大理石の床に、場違いなチェス盤が置かれていた。

「ハッ! 駒の動きなんざ、さっきの一局で理解したよ。アタシを誰だと思ってんだ? 何百年もこの世界で『騙し合い』を生き抜いてきたエルフ、フィニティ様だぞ」

フィニティは玉座に足を組み、不遜な笑みで黒のクイーンを前進させた。
正直、チェスなどという退屈な遊戯に興味はなかった。だが、目の前のガキ────フェリスを側に留めておくためだ。この無味だが空腹を癒やす不思議な幽霊を、手放すわけにはいかない。

 対して、白の駒を操るフェリスは、相変わらず楽しげに鼻歌を歌っている。

「えいっ。じゃあ、わたしはこれ!」

フェリスが透き通った指先を動かした瞬間。
フィニティの背筋に、冷たい風が吹き抜けた。

「……ッ、何だ……?」

指し手自体は、セオリーを無視した奇襲。本来なら鼻で笑って一蹴できるはずの稚拙な動きだ。
だが、その駒が置かれた瞬間、フィニティの鋭敏な感覚が「味」を拾った。

無味だったはずのフェリスから、微かに、本当に微かに漏れ出した感情。
それは今まで食らってきた、どの信者の「しょっぱい」後悔とも違っていた。

「おい、ガキ……。お前、その指し方……」

[太字][大文字]「えへへ、お姉ちゃん、困ってる? わたしね、ずっと一人でこればっかりしてたんだよ。白い壁に囲まれた、静かなお部屋で。窓の外を見ても、誰もいないの。だから、盤の中の駒だけが、わたしの『お友達』だったんだ」[/大文字][/太字]

 フェリスは無邪気に笑う。だが、その笑みに重なるように、フィニティの脳裏には一つの情景が浮かび上がった。

消毒液の匂い。規則的な機械音。
そして、薄暗い部屋で一人、誰に届くこともない「チェックメイト」を呟き続ける小さな背中。

 それは、フィニティが最も嫌う「弱者の匂い」でありながら、同時に彼女自身がエルフとして歩んできた数世紀の「果てしない退屈」と、どこか重なる色をしていた。

「……ケッ。……くだらねえ」

フィニティは毒づいた。だが、先ほどまでの傲慢な勢いは消え失せている。
彼女の指が、迷うように駒の上を彷徨った。

「誰にも相手にされねえから、盤の上で『壁』を作って守りを固める……。お前の指し手は、臆病者のそれだよ。見てて吐き気がすんだよ、そんな湿っぽいのはさ」

「……お姉ちゃん、怒ってる?」

「怒ってねえよ! ……ああ、もう、クソッ!」

気づけば、フィニティの黒いキングは逃げ場を失っていた。
思考が乱れた隙に、フェリスの「孤独な軍勢」が盤上を支配していたのだ。

「あー……っ! 負けだ! 負けだよ! ったく、このアタシがガキに一発も入れられねえなんて……。あー、面白くねえ! しょっぺぇ記憶よりよっぽど胃にくるぜ……」

フィニティは頭をかきむしり、大の字になって床に寝転がった。
 
「わーい! わたしの勝ち! じゃあ、約束通り……お姉ちゃん、ポニーになって!」

フェリスが嬉しそうに駆け寄ってくる。
本来なら、教祖としての尊厳を汚す無礼な要求だ。しかし、フィニティは「チッ」と舌打ちをしながらも、ゆっくりと膝をついた。

「……分かったよ。一局は一局だ。ほら、さっさと乗れよ。すり抜けるから、アタシがバランス取ってやるからな」

物理的には触れられないはずなのに、フェリスを「背負う」形を作ると、不思議な温もりが背中に宿る。
味はしない。なのに、空腹が満たされる感覚。

「お姉ちゃん、あったかーい!」

「……うるせえよ。アタシは熱血教師じゃねえんだ。……なあ、ガキ」

「なあに?」

「……。……いや、なんでもねえ」

フィニティは、言いかけた言葉を飲み込んだ。
(そんな悲しい指し方、もうしなくていい。……アタシがいるんだから)
そんな「甘い」セリフは、悪徳教祖の自分の口には、どうしても似合わない気がしたから。

作者メッセージ

‼️ロリは世界を救う‼️
再投稿しました(元のは非公開にしてます)
徒花ぁぁぁぁっ
リア友だったぁぁぁぁっ
将来黒歴史としていじられそう( ;∀;)

2026/02/03 20:13

♗◈夢見鳥◈♗
ID:≫ 65guhuu.CMb9.
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