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浦ヶ丘製作所逆転物語【第2章】

沖田「7割の減産?いやいやいや、そんなことしたら浦ヶ丘さん持たないですよ」
御園「ですが、御社は浦ヶ丘よりもさらに安いコストで同じ品質をご提供いたします」

沖田「…私に浦ヶ丘を切れと?」
御園「いえ。むしろ逆ですよ。手に入れませんか?浦ヶ丘を」

[水平線]
沖田「まんまと乗せられたよ。私はね、前々から君のそのコスト至上主義には賛同しかねてるんだ。コストダウンだけでは目先の利益は出ても長い将来必ず会社は持たなくなる!」
御園「……。」

沖田「あと一歩で、浦ヶ丘の技術が、JAPATAXの手に入るはずだったのに!君が余計な欲を出さなければ、合併は上手くいっていたんじゃないのか!?この不始末、どう収めるおつもりか!」

御園「……沖田社長、大事なメンツを潰してしまい、申し訳ございませんでした。…ですが、」

御園「コストを追求することの何がいけないのでしょうか?確かに商品としてある程度のスペックは必要でしょう。だけど、ユーザーが最後に求めるのは価格、コストパフォーマンスだ!要はカネだよカネ!」

御園「あなたも儲かると思ったから私の話に乗ったんじゃないんですか?それをいまさら綺麗事を並べて、ご自分だけが被害者だと、虫のいいことを…‼︎」
沖田「確かに世の中カネだ!しかしね、君が言うカネと、私の言うカネは、180度、いや、540度違います!」

[水平線]
《1週間後》

追分「社長、お越しいただきました」
御園「わかった」

秘書の追分がドアを開けた。

御園「お待ちしておりましたよ。雨宮専務」
雨宮「あぁ。」

御園「単刀直入に申し上げます。我が社は、浦ヶ丘製作所と合併したい。」
雨宮「その件ですか」

御園「そこで新会社の社長は、雨宮専務、あなたに任せたい」
雨宮「…?」

御園「山陽フィルムと業務提携されましたが、本当によろしいのですか?」
雨宮「どういうことですか?」

御園「山陽フィルムは御社に部品供給を任せたようですが、私には、山陽フィルムでは世界シェアは厳しいと思いますよ。江藤社長は世界1位に立つと豪語していますが、実は現在世界シェア1位のIYETは、あと半年で新製品を出すみたいなんです」
雨宮「本当ですか…⁉︎」

御園「今、山陽フィルムと手を組んだところで、半年以内にIYETを超える製品が作れますか?」

[水平線]
《浦ヶ丘製作所 技術開発部》

磯谷「無理だ。あと5カ月で完成なんか無理だ」
佐藤「それをなんとかするのが、あなたの仕事でしょう」

磯谷「時間を早めて品質を下げるなんて、技術者としてできない。嫌なら、更迭してくれたって構わない」
佐藤「ちょっと待ってくださいよ…」

磯谷光彦は、浦ヶ丘製作所に25年勤めるベテラン社員である。その品質への高いこだわりと技術力は、浦ヶ丘製作所に不可欠なものである。

そんな中、山陽フィルムから呼び出しがあった。

《山陽フィルム》

佐藤「納期短縮の件、なんとか撤回していただけませんか?」
江藤「実は、加賀トランスからの試作品が提供されたんです。」

佐藤「えっ!?」
江藤「加賀トランスのイメージセンサーは、そちらに遜色なく、コストも2割ほど安い。これなら、加賀トランスの物を使うのが普通です」

佐藤「ちょっと…ちょっと待ってください。加賀トランスは、どうやってこんな短期間で作り上げたんです?」
江藤「それは言えません。守秘義務があります」

加賀トランスはいったいどんな手を使ったのか。

《翌日》

佐藤「……。」

佐藤は、テレビを見ていた。御園和夫がビジネス特集の番組に出ているのだ。

取締役「失礼します。」
佐藤「おう。」

取締役「あれ、御園社長ですね」
佐藤「……。」

取締役「?」
佐藤「どうした?秘書に見惚れたか?」

取締役「いやいやいや、この人、前に金沢駅で見かけたんですよ」
佐藤「そうか」

取締役「それで後をつけたら…」

《加賀トランス》

佐藤「どうも。」
影山「佐藤社長が、私に何のご用ですか?」

佐藤「影山さん、うちに来ませんか?」
影山「えっ?」

佐藤「先日、加賀トランスは山陽フィルムに新型イメージセンサーの試作品を提供しましたね」
影山「はい」

佐藤「そのイメージセンサー、本当にあなたの技術なんですか?」
影山「なっ…何を言うんですか!」

佐藤「どう考えてもあの短期間で作り上げるのは無理だ。あれは事前に仕込まれたものと考えるのが普通だ。」

佐藤「影山さん、実はあの技術は、うちの元技術開発部員で今は加賀トランスで技術開発副部長をやっている、高坂が持ってきたものですよね?」
影山「……。」

佐藤「そうそう、うちと加賀トランスが合併したら、技術開発部長は高坂のものになって、あなたはリストラされるみたいですよ」
影山「ど、どういうことですか!?」

佐藤は以前渡された、御園が秘密裏に提案した人員配置の冊子を見せた。

影山「ない…!! 俺の名前が…」
佐藤「かわいそうですね、20年も会社に勤めたのに、合併されたらお払い箱なんて。」

影山「そんな…」
佐藤「影山さん、うちに来てください。浦ヶ丘製作所には、独自のノウハウがあって、高い技術力を誇ります。あと、品質にものすごいうるさい部長もいます。あなたにとって、とてもやりがいのある環境だと言えます。」

影山「……わかりました。」
佐藤「ありがとうございます」

[水平線]
御園「珍しいですね、そちらから来るなんて」
佐藤「先日のテレビ、拝見しましたよ。御園社長のビジネスへのお考えや、社員を家族同然に扱う空気づくり、実に貴重なものでした」

御園「いやいやw 照れますなw ですが、今日はそんなお話をしに来たわけじゃないですよね。さっそく本題へ行きましょう」
佐藤「はい」

座り直し、佐藤が始める。

佐藤「山陽フィルムに提供したイメージセンサーの試作品についてお聞きしたい。」
御園「あぁ、あれですか」

佐藤「あれは、うちから引き抜いた元•社員、高坂が持ってきたものですね」
御園「何を言うと思ったらw まるでそれじゃあ、パクりだ」

佐藤「えぇパクりですよ。あなたが山陽フィルムに近づいたのは、合併を阻止したうちへの逆恨みだ!」
御園「な…何を言うんですか!」

佐藤「実は、高坂が持ってきたのだと、影山技術開発部長が証言してくれましたよ。」
御園「何だと…‼︎ そうだ、証拠はどこにあるんだ!」

佐藤「ございます、実物はありませんが。」

佐藤「そういえば、紙幣には偽造を防止するための様々な工夫が凝らされていて、例えば、数字の中にもうっすらと数字が隠されていたりとね」
御園「何が言いたいんです?」

佐藤「うちの技術開発部長は、社長の私も呆れるほどの頑固な男でしてね、特に製品の品質に関してはうるさいったらありゃしないくらいだ。そんな慎重な男が、こういうことに手が回っていないと思ったら大間違いです。」

佐藤「これは、うちで開発したカメラで撮った写真です。ここ、“浦ヶ丘製作所”という文字が見えますよね。これは間違いなくうちで作ったカメラだ。もちろん全機種にこの仕掛けが搭載されています。」

佐藤「これを見てもまだパクりじゃないと言えるんですか?」
御園「いや…それは…あっ、あれだ…‼︎」

御園「私は高坂がそんなことをしたなんて知らなかったんだ、だから責任は全部、高坂にある」
佐藤「そうですか。」

佐藤「最後に一つ、お伝えしておきます。そちらの影山は、今週からうちで働いてもらうことになりましたから」
御園「何っ!?」

佐藤「あなたもうちに同じことをしましたからね。うちの人間が金沢駅近くのカフェで見たんですよ。御園社長の秘書が、高坂を引き抜くために会っていたとね。それで影山をリストラする算段だと。」
追分「!」

佐藤「では、失礼いたします。」

佐藤が社長室を出ていった。二人は、焦点が合わないところを見つめて呆然としていた。

追分「申し訳ありません!私がもっとバレないようにしていれば!」
佐藤「……君が悪いことじゃない。」

佐藤「…切り札は、もう一枚ある。」

[水平線]
橋本「非正規雇用の社員を減らして3億もの費用を捻出した努力は認めます。ですが、まだ足りない。あと2億ほど捻出してもらいたい」
雨宮「正社員を切れ、と?」

橋本「そういうことです。約束では、生産の一部ロボット化ですよね?これでは話が違う」
佐藤「確かに、ロボット化はまだ25%です。ですが、簡単に社員を切ったら、切られた社員はどうなりますか?こちらでは、全ての社員に次の職場を提供する約束をしています。」

橋本「銀行の約束より、そちらの約束を優先するおつもりですか?」
佐藤「約束は約束。これだけは、譲れません。ただいま全力を挙げて各社に掛け合っています、もう少し、お待ちいただきたい。」

橋本「…わかりました。ですが、無理だということになれば、次の融資はないと思ってください」

そう言って立ち上がり、橋本は帰った。

[水平線]
1人の男が、部屋でパソコンを睨んでいる。

木嶋「すいません、今週中には返しますので…」

株だ。株で作った借金は400万円ほどで、どうすることもできずにいた。

木嶋「すいません、金はすぐに…」
???「私、加賀トランス社長秘書をしている、追分と申します。こちら、木嶋五郎様のお電話で間違いないでしょうか?」

木嶋「はい、そうですが。」

加賀トランス、聞いたことがある会社だ。その社長秘書が、いったいこんな人間に何の用なのか?

《翌日 社長室》

木嶋「驚きました、まさか加賀トランスの代表の方にお会いできるなんて」
御園「これは、我が社にも木嶋さんにも、大きなビジネスチャンスとなりますのでね」

御園「実は、加賀トランスは、浦ヶ丘製作所と合併するつもりで進んでいます。」
木嶋「合併…」

御園「そこで、浦ヶ丘製作所の株の15%をお持ちの木嶋さんに、株主総会で、合併に賛成している意向を示してもらいたい。」
木嶋「なるほど。」

御園「合併すれば大量のキャピタルゲインが転がり込み、木嶋さんも億単位の金が手に入ります」
木嶋「…!!」

億単位、という言葉に木嶋に目を見開いた。
これは、借金を返すチャンスだ。

木嶋「わかりました。私のほうで他の株主たちにも根回しします」
御園「ありがとうございます。いやぁ話が早くて助かりますよ」 

《2日後 浦ヶ丘製作所》

木嶋「なんでこんな良い話を断ったんです?」
佐藤「弊社にとっては良い話ではありません。」

木嶋「雨宮専務、あなたはこのことを知っていたんですか?」
雨宮「事後報告で、知りました。」

木嶋「事後報告?なんでこんな重大なことを伝えないんですか?あなたは、浦ヶ丘製作所のことをちっとも考えていないんじゃないのか?」

木嶋「私はここに、臨時株主総会の開催を要求いたします。」
佐藤「臨時株主総会…?」

木嶋「加賀トランスとの合併は反対か賛成か、この際株主たちに聞いて、はっきりさせようじゃありませんか」

木嶋にとって、株主総会で賛成を勝ち取ることは絶対である。

《1週間後》

御園「株主総会で、確か株主の51%以上の賛成を取れば、合併は可決される。」
追分「浦ヶ丘製作所の会長が、30%保有です」

木嶋「私は15%、あとは他の株主が25%です。鍵となるのが、ナナオ・ステートの笹原社長です。」

ナナオ・ステート。七尾市に本社を構え、ホテル業や不動産業など、あらゆる分野を収めるグループ会社の親会社であり、北陸地方ではJAPATAXと二大巨塔をなす。

浦ヶ丘製作所会長の遠縁であり、現社長である佐藤辰彦とも親しくしている。

木嶋「笹原社長は30%の株式を保有し、彼女をつければ51%は確実です。他の株主には、15%が賛成してくれました。」
御園「60%か。やはりあなたに声をかけて正解でしたよ木嶋さん。それから、雨宮専務」

雨宮「こんな美味しい話に乗らない経営者はいない。会長は、私が説得します。もし会長が賛成したら90%です」

《浦ヶ丘製作所》

取締役「まさか…株主に目をつけていたとは…。株主を巻き込むなんて厄介なことになりましたね…」
雨宮「ですが、正式な手続きを経た要求を却下することはできません。」

佐藤「臨時株主総会の開催は絶対だな。私も明日、ナナオ・ステートの笹原社長を説得しに行く」
雨宮「……。」

《技術開発部》

佐藤「お疲れ様」
礒谷「社長…」

佐藤「納期まで4週間を切った。間に合いそうか?」
礒谷「まぁ、なんとか。」

佐藤「これは…?」
礒谷「これは開発途中にできた副産物です。3分の1にまで小型化はできましたが、新型カメラに搭載するのにはまだ足りない」

佐藤「……スマホだ」
礒谷「あっ…‼︎」

佐藤「カメラに搭載するには今ひとつだが、スマホだったら十分に通用する!これはビジネスチャンスだ」
礒谷「これは、いけますね‼︎」

雨宮「……。」

2025/12/16 09:35

上諏訪
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