浦ヶ丘製作所逆転物語【第1章】
《石川県金沢市》
沖田「君のところはどうだい?調子は?」
佐藤「お恥ずかしいところ、この景気では売り上げは大変芳しくなく、今季は赤字を計上いたしました…」
沖田「そうですか…。こんな時にこういうことを申し上げるのは大変億劫なのですが…」
佐藤「はい」
沖田圭二郎。浦ヶ丘製作所の主要取引先であるJAPATAXの社長だ。普段は何を考えているのかわからなく、今日は珍しく沖田から佐藤のもとへやってきた。
沖田「7割の減産要求を求めます。」
佐藤「えっ…⁉︎」
沖田「いやぁこちらも迷ったんですよ…なんとかお願い、できますか?」
佐藤「…かしこまりました。」
《取締役会》
当然、JAPATAXによる7割の減産要求の話が主題であった。
雨宮「7割も減産となると、来期以降は確実に赤字を計上しますね」
取締役「銀行からの融資はどうされるおつもりで?」
佐藤「このままいく。」
全員が驚いた。
雨宮「粉飾するんですか?」
佐藤「粉飾も何も、これは予想外の出来事だし、もう稟議書を書き直すのは無理だ。」
こうして、粉飾が決まった。
[水平線]
《1週間後》
坂田「では、御社は今期は黒字予想であると間違いないですね?」
佐藤「もちろんです。」
坂田「…そうですか。」
坂田孝太郎。北陸シティ銀行金沢支店融資課長だ。こいつは粗を探しては融資先を攻撃する小物なので、他の会社からも嫌われ者である。
坂田「5億の融資ですよ、一応言っておきますが、この期に及んで隠し事などございませんよね。佐藤社長」
佐藤「滅相もございません。融資承認、よろしくお願いいたします」
坂田は何か言いたそうだがすぐ引き上げていった。
その後、融資は承認された。
《1週間後》
佐藤「特許侵害だと!?」
浦ヶ丘製作所のもとへ、加賀トランスからの警告書が送り付けられた。
佐藤「どういうことだ、融資は通ったんだぞ…」
製造部長「心配はいりません。特許侵害されたと言われるイメージセンサーは、すでに多くの会社で開発され、高い品質を誇っています。したがって、特許侵害など大げさです。」
取締役「なんだそうか…」
雨宮「御園社長の、勘違いということか。」
だが、ライバル社の加賀トランスがそんなおかしなことをするはずがない。果たしてこれは、ただの勘違いなのか。
だが翌日、金沢支店からの連絡が入った。
佐藤「ちょっと待ってください!今貸し剥がしされたら本当にうちは立ち行かなくなってしまいます!」
坂田「知りませんよそんなこと。特許侵害疑惑の出ている会社に5億の融資なんかして、金が返せないなんていうことが起きたら銀行の信用に関わることなんだよ」
坂田には取り付く島もなかった。
坂田「どうですか?橋本支店長」
橋本「…坂田くんの言う通りだ。」
橋本「来月、承認した融資は貸し剥がしさせてもらう。」
《緊急取締役会》
雨宮「しかし、おかしいと思いませんか?」
雨宮「JAPATAXから7割の減産要求、加賀トランスからの特許侵害警告。加えて今回の貸し剥がしは、どうも話が早すぎる。」
佐藤「たしかに。」
雨宮「裏で、誰かが手を回している可能性があります。」
佐藤「この件をリークした物がいる…。」
だが、一つだけ不可能なことがある。
加賀トランスからの特許侵害警告だ。これを金沢支店にリークするには、加賀トランスと事前に繋がっている人物がいることになる。
佐藤は、そのことが頭から離れなかった。
佐藤「?」
JAPATAXの沖田から電話がかかってきた。
[水平線]
《料亭》
沖田「いきなり呼びつけてしまってすまないね」
佐藤「いえ、おかまいなく。」
沖田「実はね、本当は御園社長が来るはずだったんだけど、急用が入って来られないそうなんだ」
佐藤「はぁ…」
沖田「せっかく予約したんだから、ぜひ佐藤社長を誘おうと思ってね。まぁ飲んでくれ」
佐藤「おぉ頂戴いたします」
この日は、特に会社の内部事情を探るような会話はなかった。どうやら沖田は本当に、ただ佐藤を食事に誘っただけだったのだ。
だが、佐藤は一つだけおかしなものを見つけた。
《翌日》
雨宮「社長、橋本さんと坂田さんが来てます」
佐藤「…わかった。」
いきなり来ることは珍しい。
坂田「JAPATAXから7割の減産要求を求められ、それに応じたそうですね」
いきなり例のことを言い放った。
佐藤「なぜ…それを…?」
坂田「やっぱり知ってて嘘をついたな。あなた方のことなんか見え見えなんだよ」
坂田「佐藤社長、あなたは以前我々に、今期は黒字を計上する予定だと言ったな。だけど7割も減産要求をされたら浦ヶ丘製作所は絶対に赤字だ、それも6億近い大赤字」
坂田「これは、紛れもない粉飾だ!」
橋本「どうなんですか?佐藤社長」
佐藤「確かに粉飾をして融資を受けようとしたことは事実です。この場を借りて謝罪いたします。」
坂田「ふっ…」
佐藤「話を変えさせていただきますが、坂田さん。あなたは昨日、JAPATAXの沖田社長のもとへ行きましたね?どうしてですか?」
坂田「そんなものは今関係ないだろう」
佐藤「実は私も昨日、沖田社長から食事に誘われました。そこで一つ、不思議なものを見ました。」
佐藤「実は私が来たとき、そこにもう一膳箸が二人分ではなかったんです。沖田社長から聞きましたよ」
坂田「それがなんだ、確かに私は昨日、沖田社長に会ったよ。だけどそれはな、融資の話をしただけだ」
佐藤「そうですか。」
《その後》
坂田が沖田と会ったのは、本当に融資の話だったのか?
???「佐藤社長?佐藤社長でいらっしゃいますね」
佐藤「あなたは…」
[水平線]
《山陽フィルム》
江藤「業務提携…⁉︎」
佐藤「はい。我が社のイメージセンサーは、中部エリアで1位2位を争う素晴らしい物なんです。ですが弊社は、先の特許侵害疑惑や融資打ち切りを受けまして、この技術力が、全て消えかかっているんです。どうか、お力を貸していただきたく存じます」
江藤「うちと業務提携する話は、北陸シティ銀行さんは知っているんですか?」
佐藤「いえ。この話は、弊社の限られた人間しか知りません。」
江藤「…浦ヶ丘製作所さんの技術力は、よくわかります。ですが…今ここで、簡単にYesというわけには…」
佐藤「そうですか…。」
《2日後》
坂田「で、どうなんですか?何か解決策はあるんですか?」
佐藤「ございます。ですが今日は、資金繰りとかの打開策を説明するわけではありません」
坂田「何?」
佐藤「このカメラは、我が社の最新鋭のカメラで、性能は段違いに向上しました。」
坂田「なんだそんなことか…。」
佐藤「この写真をご覧ください」
坂田「…‼︎」
佐藤「あなたですね、坂田さん」
橋本「話がまったくわからんぞ…?」
佐藤「この写真は、沖田社長とあなたが2人で写っている写真。これは、御園社長の秘書からいただきました。」
坂田「……。」
佐藤「坂田さん、あなたは沖田社長から金を受け取り、うちの情報をJAPATAXの沖田社長と共有し、うちを計ったな!」
坂田「知らない!知らないこんなことは!」
佐藤「東京中央銀行金沢支店」
坂田「!?」
佐藤「そこにあなたの口座があります。そしてその中には、沖田社長から受け取った300万円もの金が入金されてる。今すぐここで開けてください、何もなければそれでいいじゃないですか」
橋本「どうなんだ坂田、開けてみなさい」
坂田「いや、あの…」
ついに、坂田は口座を開けることはできなかった。
佐藤「坂田!お前はうちを潰すために沖田社長と裏工作をしたな!これはメインバンクとしてあってはならないことだ!」
橋本「お前の処分については、後ほど。」
《翌日》
橋本「この度は、申し訳ございませんでした…」
佐藤「もういいんです。ですが、5億の融資を進めていただきたい」
橋本「当然です。最優先で、進めさせていただきます…」
佐藤「ありがとうございます」
[水平線]
《JAPATAX》
佐藤「沖田社長、あなたが坂田にリークしましたね、減産要求のことを。」
沖田「意味不明だ。」
佐藤「え?」
沖田「私が浦ヶ丘製作所にそんなことをするわけないじゃないですか」
佐藤「ですが、金沢支店の坂田は…」
沖田「そういう根も葉もないことをずばずばと喋るから余計なことを招くんじゃないんですか?」
沖田「それと融資が通ってよかったじゃないですか」
沖田「で、どうなんですか?うちからの減産要求に応えていただけるんでか?まぁできないのなら加賀トランスにでも…」
佐藤「やらせていただきます。」
沖田「…本当によろしいのですか?」
佐藤「そちらが提示した条件じゃないですか。飲みましょう、7割の減産」
佐藤「今後とも、末永い取引をよろしくお願いいたします、沖田社長」
沖田「うん、よろしく。」
なんなんだ、何がしたいんだこの人は。
沖田「…さて、第2ラウンドを始めますか。」
御園「……。」
[水平線]
佐藤「合併ですか…。」
御園「はい。そちらの技術力を、ぜひ我が社の製品と共通させたい。そうすれば、JAPATAXさんへのより良い製品作りに協力ができる。」
佐藤「たしかにそうですが、うちにとってのメリットがあまりない気が。」
御園「合併すれば、毎年億単位もの融資をすると、JAPATAXの沖田社長が、申してます。」
佐藤「沖田社長が!?」
御園「はい。そちらは今期は融資は通ったものの、以降は融資が通るとは限りません。」
御園「私も沖田社長も、浦ヶ丘製作所の高い技術力を大変評価しています。ですから簡単には潰れてほしくない。うちと合併すれば、資金に困ることはないんですよ。悪い話じゃない。」
佐藤は黙ってしまった。
佐藤「一度、社内で検討させていただきます。」
御園「はい。良いお返事をお待ちしてますよ」
《浦ヶ丘製作所》
取締役「加賀トランスに吸収!?」
佐藤「はい。ただ、加賀トランスに吸収されれば、JAPATAXからの継続的な資金提供が約束されます。」
雨宮「私は賛成です。加賀トランスの資金提供は絶対に勝ち取るべきです。北陸シティ銀行は融資を承認したとはいえ、これから先はそうとは限りません。」
雨宮「また、加賀トランスからの特許侵害はまだ完全に解決したわけではありません。これは民事再生で会社を立て直すのも考えられます。」
佐藤「民事再生…」
取締役「民事再生となると、負債免除です。北陸シティ銀行が黙ってはいませんよ…」
佐藤「しかし、民事再生して社会的信用を失った浦ヶ丘製作所となるか、JAPATAXをバックにつけた合併にするかのどちらかです。」
《その夜》
佐藤「加賀トランスの、中井経理部長ですよね?」
中井「えっ、はい。」
《3日後》
沖田「それで、結論は出たんですか?」
佐藤「…その前に、沖田社長。この合併で、JAPATAXへのメリットはなんなんですか?まさかボランティアで合併を勧めているわけではないですよね?」
沖田「メリットね。まぁメリットというか、私の野望はありますね。実は、対等合併して誕生した新会社を、我がJAPATAXの傘下に収めたい。そして素晴らしい技術を世界で、世界で認知される製品作りをしたいんだ」
[水平線]
《JAPATAX 合併基本合意式》
沖田「とうとうこの日を迎えられて、嬉しい限りです」
御園「これも全て沖田社長のご尽力のおかげです」
ここで書類にサインをすれば、正式に合併が決まる。
御園「ではここに、サインをお願いします」
佐藤「……。」
佐藤「……サインは、いたしません。」
二人「!」
佐藤「御園社長、あなたは、我が社を合併していったい我が社をどうしたいんです?」
沖田「浦ヶ丘製作所の高い技術力と、加賀トランスの営業力を持ってすれば、世界を狙えるんだ!」
佐藤「沖田社長、それは本当ですか?」
沖田「何だと!?」
佐藤は1冊の冊子、新会社の役員リストを見せた。
佐藤「あなたが寄越したこのリストは、うちとそちらの半分ずつの役員で構成されるはずだった。だが、こっちはどうだ」
そして、もう1冊の同じものを出した。
佐藤「これは、加賀トランスのとある役員から入手したものです。」
佐藤「ここには、うちからの出身役員は、雨宮と製造部長だけだ。あなたは、経理畑で数字に強い雨宮と、高い技術を開発してきた製造部長だけが欲しかっただけだ。あなたが一番欲しいのは、うちの特許だ!」
沖田「おい、どういうことだ!?」
佐藤「あなたも知ってましたよね、この本当のリストを。」
沖田「知らんよ、そもそも浦ヶ丘製作所に特許があることも知らなかったよ!」
御園「ちょちょちょっと拝見しますよw」
御園「あぁこれかw いやいやいや、これは何かのミスでしょうw 私は、浦ヶ丘製作所の…」
佐藤「もう結構です。」
佐藤「JAPATAXの7割の減産要求から始まり、融資打ち切り、加賀トランスからの特許侵害、こうすれば浦ヶ丘はそちらに付くしかなくなる、あなた方はそれを狙って合併を画策した。対等合併ではなく、加賀トランスへの吸収合併という形で!」
沖田「私は潰れかけている浦ヶ丘に、救いの手を差し伸べているんだよ!そもそも加賀トランスと合併しなければ、御社の将来は暗いまま、それが現実だ!」
佐藤「ご心配をおかけし、申し訳ございません。」
佐藤「ですが、浦ヶ丘製作所はこの度、山陽フィルムとの業務提携にこぎつける運びとなりました」
沖田「何…⁉︎」
佐藤「江藤社長からは、さっそく10億円の融資を受けました」
沖田「よりによって江藤に付いたか佐藤…‼︎」
佐藤「本日は合併の話を断るために参りましたので。では、失礼いたします。」
沖田「…待てっ!」
沖田「もし合併にサインをすれば、うちは20億…いや、30億融資しよう。」
佐藤「どんな好条件でも、お断りします」
沖田「なぜだっ!」
佐藤「…私は、あなたのことが嫌いだからだ。」
佐藤は部屋を出た。
沖田「…さぁとぉお〜…‼︎」
沖田は椅子を蹴飛ばした。
沖田「君のところはどうだい?調子は?」
佐藤「お恥ずかしいところ、この景気では売り上げは大変芳しくなく、今季は赤字を計上いたしました…」
沖田「そうですか…。こんな時にこういうことを申し上げるのは大変億劫なのですが…」
佐藤「はい」
沖田圭二郎。浦ヶ丘製作所の主要取引先であるJAPATAXの社長だ。普段は何を考えているのかわからなく、今日は珍しく沖田から佐藤のもとへやってきた。
沖田「7割の減産要求を求めます。」
佐藤「えっ…⁉︎」
沖田「いやぁこちらも迷ったんですよ…なんとかお願い、できますか?」
佐藤「…かしこまりました。」
《取締役会》
当然、JAPATAXによる7割の減産要求の話が主題であった。
雨宮「7割も減産となると、来期以降は確実に赤字を計上しますね」
取締役「銀行からの融資はどうされるおつもりで?」
佐藤「このままいく。」
全員が驚いた。
雨宮「粉飾するんですか?」
佐藤「粉飾も何も、これは予想外の出来事だし、もう稟議書を書き直すのは無理だ。」
こうして、粉飾が決まった。
[水平線]
《1週間後》
坂田「では、御社は今期は黒字予想であると間違いないですね?」
佐藤「もちろんです。」
坂田「…そうですか。」
坂田孝太郎。北陸シティ銀行金沢支店融資課長だ。こいつは粗を探しては融資先を攻撃する小物なので、他の会社からも嫌われ者である。
坂田「5億の融資ですよ、一応言っておきますが、この期に及んで隠し事などございませんよね。佐藤社長」
佐藤「滅相もございません。融資承認、よろしくお願いいたします」
坂田は何か言いたそうだがすぐ引き上げていった。
その後、融資は承認された。
《1週間後》
佐藤「特許侵害だと!?」
浦ヶ丘製作所のもとへ、加賀トランスからの警告書が送り付けられた。
佐藤「どういうことだ、融資は通ったんだぞ…」
製造部長「心配はいりません。特許侵害されたと言われるイメージセンサーは、すでに多くの会社で開発され、高い品質を誇っています。したがって、特許侵害など大げさです。」
取締役「なんだそうか…」
雨宮「御園社長の、勘違いということか。」
だが、ライバル社の加賀トランスがそんなおかしなことをするはずがない。果たしてこれは、ただの勘違いなのか。
だが翌日、金沢支店からの連絡が入った。
佐藤「ちょっと待ってください!今貸し剥がしされたら本当にうちは立ち行かなくなってしまいます!」
坂田「知りませんよそんなこと。特許侵害疑惑の出ている会社に5億の融資なんかして、金が返せないなんていうことが起きたら銀行の信用に関わることなんだよ」
坂田には取り付く島もなかった。
坂田「どうですか?橋本支店長」
橋本「…坂田くんの言う通りだ。」
橋本「来月、承認した融資は貸し剥がしさせてもらう。」
《緊急取締役会》
雨宮「しかし、おかしいと思いませんか?」
雨宮「JAPATAXから7割の減産要求、加賀トランスからの特許侵害警告。加えて今回の貸し剥がしは、どうも話が早すぎる。」
佐藤「たしかに。」
雨宮「裏で、誰かが手を回している可能性があります。」
佐藤「この件をリークした物がいる…。」
だが、一つだけ不可能なことがある。
加賀トランスからの特許侵害警告だ。これを金沢支店にリークするには、加賀トランスと事前に繋がっている人物がいることになる。
佐藤は、そのことが頭から離れなかった。
佐藤「?」
JAPATAXの沖田から電話がかかってきた。
[水平線]
《料亭》
沖田「いきなり呼びつけてしまってすまないね」
佐藤「いえ、おかまいなく。」
沖田「実はね、本当は御園社長が来るはずだったんだけど、急用が入って来られないそうなんだ」
佐藤「はぁ…」
沖田「せっかく予約したんだから、ぜひ佐藤社長を誘おうと思ってね。まぁ飲んでくれ」
佐藤「おぉ頂戴いたします」
この日は、特に会社の内部事情を探るような会話はなかった。どうやら沖田は本当に、ただ佐藤を食事に誘っただけだったのだ。
だが、佐藤は一つだけおかしなものを見つけた。
《翌日》
雨宮「社長、橋本さんと坂田さんが来てます」
佐藤「…わかった。」
いきなり来ることは珍しい。
坂田「JAPATAXから7割の減産要求を求められ、それに応じたそうですね」
いきなり例のことを言い放った。
佐藤「なぜ…それを…?」
坂田「やっぱり知ってて嘘をついたな。あなた方のことなんか見え見えなんだよ」
坂田「佐藤社長、あなたは以前我々に、今期は黒字を計上する予定だと言ったな。だけど7割も減産要求をされたら浦ヶ丘製作所は絶対に赤字だ、それも6億近い大赤字」
坂田「これは、紛れもない粉飾だ!」
橋本「どうなんですか?佐藤社長」
佐藤「確かに粉飾をして融資を受けようとしたことは事実です。この場を借りて謝罪いたします。」
坂田「ふっ…」
佐藤「話を変えさせていただきますが、坂田さん。あなたは昨日、JAPATAXの沖田社長のもとへ行きましたね?どうしてですか?」
坂田「そんなものは今関係ないだろう」
佐藤「実は私も昨日、沖田社長から食事に誘われました。そこで一つ、不思議なものを見ました。」
佐藤「実は私が来たとき、そこにもう一膳箸が二人分ではなかったんです。沖田社長から聞きましたよ」
坂田「それがなんだ、確かに私は昨日、沖田社長に会ったよ。だけどそれはな、融資の話をしただけだ」
佐藤「そうですか。」
《その後》
坂田が沖田と会ったのは、本当に融資の話だったのか?
???「佐藤社長?佐藤社長でいらっしゃいますね」
佐藤「あなたは…」
[水平線]
《山陽フィルム》
江藤「業務提携…⁉︎」
佐藤「はい。我が社のイメージセンサーは、中部エリアで1位2位を争う素晴らしい物なんです。ですが弊社は、先の特許侵害疑惑や融資打ち切りを受けまして、この技術力が、全て消えかかっているんです。どうか、お力を貸していただきたく存じます」
江藤「うちと業務提携する話は、北陸シティ銀行さんは知っているんですか?」
佐藤「いえ。この話は、弊社の限られた人間しか知りません。」
江藤「…浦ヶ丘製作所さんの技術力は、よくわかります。ですが…今ここで、簡単にYesというわけには…」
佐藤「そうですか…。」
《2日後》
坂田「で、どうなんですか?何か解決策はあるんですか?」
佐藤「ございます。ですが今日は、資金繰りとかの打開策を説明するわけではありません」
坂田「何?」
佐藤「このカメラは、我が社の最新鋭のカメラで、性能は段違いに向上しました。」
坂田「なんだそんなことか…。」
佐藤「この写真をご覧ください」
坂田「…‼︎」
佐藤「あなたですね、坂田さん」
橋本「話がまったくわからんぞ…?」
佐藤「この写真は、沖田社長とあなたが2人で写っている写真。これは、御園社長の秘書からいただきました。」
坂田「……。」
佐藤「坂田さん、あなたは沖田社長から金を受け取り、うちの情報をJAPATAXの沖田社長と共有し、うちを計ったな!」
坂田「知らない!知らないこんなことは!」
佐藤「東京中央銀行金沢支店」
坂田「!?」
佐藤「そこにあなたの口座があります。そしてその中には、沖田社長から受け取った300万円もの金が入金されてる。今すぐここで開けてください、何もなければそれでいいじゃないですか」
橋本「どうなんだ坂田、開けてみなさい」
坂田「いや、あの…」
ついに、坂田は口座を開けることはできなかった。
佐藤「坂田!お前はうちを潰すために沖田社長と裏工作をしたな!これはメインバンクとしてあってはならないことだ!」
橋本「お前の処分については、後ほど。」
《翌日》
橋本「この度は、申し訳ございませんでした…」
佐藤「もういいんです。ですが、5億の融資を進めていただきたい」
橋本「当然です。最優先で、進めさせていただきます…」
佐藤「ありがとうございます」
[水平線]
《JAPATAX》
佐藤「沖田社長、あなたが坂田にリークしましたね、減産要求のことを。」
沖田「意味不明だ。」
佐藤「え?」
沖田「私が浦ヶ丘製作所にそんなことをするわけないじゃないですか」
佐藤「ですが、金沢支店の坂田は…」
沖田「そういう根も葉もないことをずばずばと喋るから余計なことを招くんじゃないんですか?」
沖田「それと融資が通ってよかったじゃないですか」
沖田「で、どうなんですか?うちからの減産要求に応えていただけるんでか?まぁできないのなら加賀トランスにでも…」
佐藤「やらせていただきます。」
沖田「…本当によろしいのですか?」
佐藤「そちらが提示した条件じゃないですか。飲みましょう、7割の減産」
佐藤「今後とも、末永い取引をよろしくお願いいたします、沖田社長」
沖田「うん、よろしく。」
なんなんだ、何がしたいんだこの人は。
沖田「…さて、第2ラウンドを始めますか。」
御園「……。」
[水平線]
佐藤「合併ですか…。」
御園「はい。そちらの技術力を、ぜひ我が社の製品と共通させたい。そうすれば、JAPATAXさんへのより良い製品作りに協力ができる。」
佐藤「たしかにそうですが、うちにとってのメリットがあまりない気が。」
御園「合併すれば、毎年億単位もの融資をすると、JAPATAXの沖田社長が、申してます。」
佐藤「沖田社長が!?」
御園「はい。そちらは今期は融資は通ったものの、以降は融資が通るとは限りません。」
御園「私も沖田社長も、浦ヶ丘製作所の高い技術力を大変評価しています。ですから簡単には潰れてほしくない。うちと合併すれば、資金に困ることはないんですよ。悪い話じゃない。」
佐藤は黙ってしまった。
佐藤「一度、社内で検討させていただきます。」
御園「はい。良いお返事をお待ちしてますよ」
《浦ヶ丘製作所》
取締役「加賀トランスに吸収!?」
佐藤「はい。ただ、加賀トランスに吸収されれば、JAPATAXからの継続的な資金提供が約束されます。」
雨宮「私は賛成です。加賀トランスの資金提供は絶対に勝ち取るべきです。北陸シティ銀行は融資を承認したとはいえ、これから先はそうとは限りません。」
雨宮「また、加賀トランスからの特許侵害はまだ完全に解決したわけではありません。これは民事再生で会社を立て直すのも考えられます。」
佐藤「民事再生…」
取締役「民事再生となると、負債免除です。北陸シティ銀行が黙ってはいませんよ…」
佐藤「しかし、民事再生して社会的信用を失った浦ヶ丘製作所となるか、JAPATAXをバックにつけた合併にするかのどちらかです。」
《その夜》
佐藤「加賀トランスの、中井経理部長ですよね?」
中井「えっ、はい。」
《3日後》
沖田「それで、結論は出たんですか?」
佐藤「…その前に、沖田社長。この合併で、JAPATAXへのメリットはなんなんですか?まさかボランティアで合併を勧めているわけではないですよね?」
沖田「メリットね。まぁメリットというか、私の野望はありますね。実は、対等合併して誕生した新会社を、我がJAPATAXの傘下に収めたい。そして素晴らしい技術を世界で、世界で認知される製品作りをしたいんだ」
[水平線]
《JAPATAX 合併基本合意式》
沖田「とうとうこの日を迎えられて、嬉しい限りです」
御園「これも全て沖田社長のご尽力のおかげです」
ここで書類にサインをすれば、正式に合併が決まる。
御園「ではここに、サインをお願いします」
佐藤「……。」
佐藤「……サインは、いたしません。」
二人「!」
佐藤「御園社長、あなたは、我が社を合併していったい我が社をどうしたいんです?」
沖田「浦ヶ丘製作所の高い技術力と、加賀トランスの営業力を持ってすれば、世界を狙えるんだ!」
佐藤「沖田社長、それは本当ですか?」
沖田「何だと!?」
佐藤は1冊の冊子、新会社の役員リストを見せた。
佐藤「あなたが寄越したこのリストは、うちとそちらの半分ずつの役員で構成されるはずだった。だが、こっちはどうだ」
そして、もう1冊の同じものを出した。
佐藤「これは、加賀トランスのとある役員から入手したものです。」
佐藤「ここには、うちからの出身役員は、雨宮と製造部長だけだ。あなたは、経理畑で数字に強い雨宮と、高い技術を開発してきた製造部長だけが欲しかっただけだ。あなたが一番欲しいのは、うちの特許だ!」
沖田「おい、どういうことだ!?」
佐藤「あなたも知ってましたよね、この本当のリストを。」
沖田「知らんよ、そもそも浦ヶ丘製作所に特許があることも知らなかったよ!」
御園「ちょちょちょっと拝見しますよw」
御園「あぁこれかw いやいやいや、これは何かのミスでしょうw 私は、浦ヶ丘製作所の…」
佐藤「もう結構です。」
佐藤「JAPATAXの7割の減産要求から始まり、融資打ち切り、加賀トランスからの特許侵害、こうすれば浦ヶ丘はそちらに付くしかなくなる、あなた方はそれを狙って合併を画策した。対等合併ではなく、加賀トランスへの吸収合併という形で!」
沖田「私は潰れかけている浦ヶ丘に、救いの手を差し伸べているんだよ!そもそも加賀トランスと合併しなければ、御社の将来は暗いまま、それが現実だ!」
佐藤「ご心配をおかけし、申し訳ございません。」
佐藤「ですが、浦ヶ丘製作所はこの度、山陽フィルムとの業務提携にこぎつける運びとなりました」
沖田「何…⁉︎」
佐藤「江藤社長からは、さっそく10億円の融資を受けました」
沖田「よりによって江藤に付いたか佐藤…‼︎」
佐藤「本日は合併の話を断るために参りましたので。では、失礼いたします。」
沖田「…待てっ!」
沖田「もし合併にサインをすれば、うちは20億…いや、30億融資しよう。」
佐藤「どんな好条件でも、お断りします」
沖田「なぜだっ!」
佐藤「…私は、あなたのことが嫌いだからだ。」
佐藤は部屋を出た。
沖田「…さぁとぉお〜…‼︎」
沖田は椅子を蹴飛ばした。
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