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半沢直樹風小説 -飯田線の存廃-

まな「東山ほのか、飯田支店代表として、飯田支店への出向を命じる。」
ほのか「・・・はい。」

これが組織だ。2人は姉妹である。
まなは19歳、ほのかは17歳、世間ではいいお年頃だが、JR東海では上下関係があり、あくまで組織の一部だ。そのため、2人が馴れ合うことはなく、まなはJR東海の代表として、妹であり静岡支社代表のほのかを飛ばす辞令を渡すのだ。代表は、社長職や支社長と同じ地位だ。だが変わったところがある。若さだ。そのため現場業務をするのだ。これはJR東日本でもJR西日本、または私鉄でも同じだ。


あれから、半年が経った。


11月は上旬。少し前まで暑かったのに、寒さは急にやってきた。

大曽根「課長、今朝のニュース!」
諸星「あぁ、飯田線、移管するんだってな」

諸星が出勤してくると、部下の大曽根が飛んできた。

大曽根「ついに、テコ入れですか…?」
諸星「そんなところかな。ほのかお嬢様のことはよくわかんない。姉も姉だからな。」

大曽根「いや、まぁ。在来線立て直しを掲げるあの人たちですけど、まさか飯田線をターゲットにするとは思いませんでした」
諸星「俺も。赤字垂れ流しの“重症路線”だけど、廃止にでもされたらマズイよな。てか、なんで移管するんだ?」

大曽根「そこなんですよ…僕もわからなくて…」
諸星「…とりあえず、後で様子見でも行くか。」

《飯田駅》

高崎「この列車は21時37分発、ワンマン列車の岡谷行きです。」

飯田駅にて出発を待っていた高崎恵梨香は、飯田線唯一の女性運転士だ。学生時代にバスケットボールで鍛えた体力が自慢で、飯田線のアイドル的存在として働く、26歳だ。

諸星「あの…」
高崎「はいどうされました?」

諸星「本部運輸課長の諸星です。ちょっと、お話よろしいでしょうか?」
高崎「…はい。」

本部の人間がいきなり尋ねてきたので、高崎は少々困惑している。

諸星「担当直入に聞きます。飯田線が、静岡支社へ移管される話は、ご存知ですかね?」
高崎「いえ。あの、移管って…?」

大曽根「まだ知らないのか…」
諸星「実は…」

事情を話した。

高崎「そうですか…」
諸星「まだ確定はしてないし、静岡支社の問題なので、あまり気にしないでください」

高崎「わかりました。こちらからも、何か情報があればご連絡いたしますね」
諸星「ありがとうございます」


ほのか「そうですかぁ、それは嬉しい限りです」
大西「私としても、今回は、東山くんのおかげだと思ってるよ」

ほのか「いえいえ。私も、大西常務には、お世話になっておりますから」
大西「これからも、よろしく頼むよ。東山くん」

大西丈治はこの度、帝都銀行の常務取締役に昇進した。史上最年少での昇進だった。大西は、名古屋支店長時代の功績を評価され、本部へ舞い戻ったことがある。

ほのか「実は一つ、面倒なことが起きました。」
大西「面倒なこと?なんだねいったい」

ほのか「本部のほうに、諸星という人がいまして、彼が今回のことを嗅ぎ回っているようなんです。」
大西「…それは面倒だな。まぁでも、いったん泳がせましょう。それでこちらに付きそうならこちらに持ってきて、ダメならどこかへ飛ばせばいい話です。組織というものは、そういうものでしょう?」

大西は言いながら酒を注いだ。


大曽根「あの、これって…」
諸星「なんだそれは?」

大曽根が持ってきたのは、財務状況書だ。ここには、JR東海における今期の金の流れ全てが書かれている。

諸星「駅の清掃費用…車両の製造費…ん、なんだこれ…?」
大曽根「静岡支社に、帝都銀行から30億も出社されています。これ、何かわかりますか?」

諸星「わからん。具体的な内容は…あった。静岡エリアにおける運輸改革を目的とし…」
大曽根「つまり、静岡エリアをパワーアップするための資金、ということですね」

諸星「まぁそういうところだろう。大曽根、後でまた飯田支店に行くぞ」
大曽根「はい」


松浦「本部が何の用ですか?」
諸星「これに書かれている30億、詳しく説明していただきたく参りました。」

松浦「そんなもの、そちらには関係ないでしょう。聞いて何になるっていうんだ…」
諸星「飯田線には目をつけてましてね。飯田線は、静岡支社に移管されるようですね。」

松浦「なんでそれを知ってる?」

松浦は、それまで門前払いの姿勢だったが、急に態度を変えた。

松浦「あぁそうだよ。移管するんだよ。」
諸星「なぜ?」

松浦「お嬢様の考えだから詳しいことは知らないよ。移管して、立て直して、本部に舞い戻るつもりだよきっと。」
諸星「なるほど。30億は、このことと関係はあるわけですね。」

松浦「多分な。だが主要は東海道本線だろう。」
諸星「……。」

松浦は上着を羽織って支店長室を出た。


大西「君は、お姉さんとずいぶん仲が悪いようだね」
ほのか「えぇ。ですが気になりませんよ。」

大西「君はたった1つのミスで飯田線に飛ばされ、静岡支社でも力を弱める結果となった。だからこそ飯田線は移管する。」
ほのか「静岡支社へ移管すれば、もうこっちのものです。そして常務は裏から支えて、また行内で力をつける。こんないい話はないですねぇ。」

ほのかは、大西のおちょこに酒を注ぐ。

大西「いやぁ、やっぱり酒は御湖鶴に限る。」


諸星「松浦支店長、やはり30億の件、納得がいきません」
松浦「まだそれを言うのか君は。だからぁ、静岡支社の立て直し資金だ。」

諸星「だとしたら、なぜ飯田線を静岡支社に移管させれ必要があるのですか?」
松浦「知らないと言ってるだろ…!!」

松浦は少し大きな声を出した。


ほのか「なるほど。それは少々面倒なことになりましたね。」
松浦「申し訳ありません…」

大西「それで君、どうすんの?」
松浦「えっと…その…」

ほのか「こんなことがバレれば、あなたは二度と本部には戻れませんよ。」
大西「…娘さん、高校行くはずだね?聞いたよ。けっこういいとこ行くようだね。こんな時にまた出向でもされたら、ご家族はさぞ悲しむでしょうね。娘さんの進路にだって、影響が出るかもしれない。ひょっとしたら、家族揃って悪者扱いだよ。」

松浦「どうか……どうか家族には…家族は関係ない…」
ほのか「…困りましたね、常務。」

大西「私に言われても…ねぇ…。私は銀行の人間だ。」
松浦「ほのかお嬢様…お願いします…‼︎ 」

松浦は、いつもの料亭の個室で頭を下げていた。

こんなことには、なりたくなかった。もともと松浦は、エリート街道を走ってきた人間だった。プライドは高く、仕事は厳しく、自分がミスを犯すはずはなかった。そう、1つのミスなのだ。松浦は静岡支社の運輸課長として、東山まなからの期待も背負っていた。だが、ある列車事故の責任を取り、出向が決まった。三重支店への。
全てに絶望していた時、松浦はある人物に救いを求めた。

ほのか「まぁこれは、無理でしょうね。」
松浦「そんなぁ…」


大曽根「高崎さんから電話がありました!」
諸星「おぉ!どうだった!?」

大曽根「やはり、飯田線移管は、全て東山ほのかが黒幕です。あの人、静岡支社代表に返り咲いて、本部で東山まなを追い詰めるつもりらしいです。」
諸星「それでそれで…?」

大曽根「飯田線を静岡支社管轄にして、すぐに廃止するつもりですよ。赤字路線を無くせば、結果としてJR東海の利益に貢献しますからね。」
諸星「…そうすると、静岡支社に東山ほのかを促した人物がいるはずだ。いくら総合代表の妹とはいえ、ほのか1人で静岡支社に圧力をかけられるとは思えない。」

大曽根「それともう一つ、高崎さん曰く、松浦支店長、かつて静岡支社の運輸課長として在籍した過去があるそうです。」
諸星「それはほんとか!?そうとわかったら、松浦のことを徹底的に調べるぞ!」


松浦「またあなたですか。いったい、何がしたいんですか?30億なら…」
諸星「30億の件ではありません。松浦支店長の、静岡時代のお話の件で、参りました。」

松浦「静岡…?」
諸星「松浦支店長、あなたは少し前にある列車事故の責任を取って、三重支店に出向させられそうになりましたね。でも、なぜ飯田支店長のポストなんですか?」

松浦「それは…」

松浦は、いつもの余裕さを失っていた。諸星は問い詰める。

諸星「誰かがあなたに飯田支店へ出向させるよう取り計らった人物がいるはずだ!どうなんだ松浦支店長!」
松浦「ほ、ほのかお嬢様です…」

諸星「ほのかお嬢様が!?」
松浦「あぁ…。家族のためだったんだ…。私のせいで、家族には迷惑はかけたくなかった。三重支店へ移動になる時、ほのかお嬢様は上層部に掛け合い、私を三重支店から、本部と距離の近い飯田支店へと出向させた。飯田支店長として、おとなしくやっていればいい。以来、私はほのかお嬢様に頭が上がらなくなった。それをいいことに、今回の件を、全て私に責任を追わせるつもりなんだ…」

諸星「人の闇につけ込みその人を思い通りに動かす…とんでもない奴だ。」
松浦「いくら嘆いても無駄だよ…。もう俺は、あの人にも、本部にも相手にされないんだ。」

諸星「松浦支店長、本当にそれでいいんですか?」
松浦「えっ…?」

諸星「あんな奴に逆らえなくて、最後までいいように使われるんですよ?あの自身に溢れた松浦慎司はどこに行ったんですか?思い出してください、あなたはこの会社のため、お客様のため、家族のために一貫したプライドを持ったあなたは、どこに行ったんですか!」
松浦「私は…私は…上に立つべき人間なんだ…‼︎」(涙目)

諸星「それですよ松浦支店長‼︎ 東山ほのかを、倒しましょう。」
松浦「あぁ…‼︎」

松浦は泣き崩れた。


まな「最後に何かある方は?」

本部での役員会だ。JR東海総合代表の東山まなは、いつ見ても迫力がある。15歳から駅員、車掌を経験し、高校時代は在来線運転士としても活躍した。彼女もまた「闇」を抱えながら生きてきた。冷酷な人間で、逆らう者には客だろうが誰だろうが容赦はせず、2000年代のJR東海ような雰囲気を作り上げ、さらには他社にまで口を出し、非常に恐れられた人間だ。
現在は、そんなイメージを一新したものの、厳しいところはある。

諸星「私からあります。」
まな「いいでしょう。」

諸星「飯田線に関する重要なことがあります。」
ほのか「……。」

ほのかはこちらを睨んでいる。ほのかの対面には、松浦が座っている。

諸星「先日、帝都銀行から、静岡支社の立て直しを目的に30億円が融資されました。東山飯田支店代表、あなたがこの金を指示しましたね?」
ほのか「ちょっと待ちなさい。先日もご説明した通りですよ。今さらこれを追及して何になるというのでしょう?」

諸星「えぇ、東山飯田支店代表が説明したのは、あくまでも建前だからです。」
ほのか「!?」

全員がざわめき出す。

まな「落ち着いてください。…諸星運輸課長、続けてください。」
諸星「はい。東山飯田支店代表は、飯田線を静岡支社に移管させ、廃止させるつもりです」

ほのか「何を言っているのかわかっているんですかあなたは!」
諸星「まだ話しています。東山飯田支店代表は、飯田線を移管させ、自分が静岡支社に返り咲くため、帝都銀行から30億円を流すよう指示し、圧力をかけた。建前を静岡支社の立て直しとして。」

諸星「飯田線を移管すればあなたのものですからね。そして赤字路線を切り捨てたあなたは将来の出世コースを約束される。全ては、お姉様を見返すために!」
ほのか「さっきからゴタゴタと諸星!そんな証拠も何もないものを、ここにいる誰が信じるというんですか!私が帝都銀行から30億を用意できるなんて、そんなのありえない!」

まな「確かに、諸星運輸課長の告発には、確固たる根拠がない。」
諸星「…証拠ならあります。総合代表、ここからは、別の人間に証言させてもよろしいでしょうか?」

まな「いいでしょう。」
諸星「ありがとうございます。」

すると、控えていた松浦が起立した。ほのかが表情を変える。

松浦「只今、諸星運輸課長が申し上げたことは…」
ほのか「松浦支店長、そんな声じゃ聞こえませんよ。総合代表がはっきり聞こえるよう喋ってください。」

松浦「申し上げたことは……事実です…‼︎」
ほのか「松浦ぁ!」

松浦「すみませんほのかお嬢様…」

松浦「このことは全て事実で、ほのかお嬢様は…帝都銀行と非常に深い繋がりがあります。帝都銀行で大西取締役が常務へ昇進したニュースをご存知かと思います。あれは、ほのかお嬢様への30億円の融資を成功させたからです。あの金は、言ってみれば帝都銀行からの賄賂で、ほのかお嬢様を静岡支社代表へ立たせるためなんです!」
ほのか「それはお前が勝手にやったことだろう!」

松浦「いいえっ!全部ほのかお嬢様の指示です!」
ほのか「なんだと…‼︎ お前、あの時の恩を仇で返すつもりか!」

松浦「うるさいっ!あなたはそれに漬け込んで私をいいように使った!いつもそうだった!だがな、もうそうはいかない!私はあんたの言いなりにはなりたくないんだっ!」
ほのか「くぅぅ…お前ぇ…」

諸星「散々いいように使った部下に裏切られたお気持ちはいかがですか?さぞ屈辱でしょうね。あなたが一番憎かった相手であるお姉様の前でこんな格好を晒されるのは。」
ほのか「……。」

ほのかは涙目で睨みながら全員を一瞥する。


ほのか「お呼びでしょうか。左遷先は、日本車輌ですか?それともJR東海ツアーズですか?」
まな「……。」

まな「東山ほのか。JR東海飯田支店代表の任を解き、在来線運転士兼JR名古屋駅長の任を与えます。」
ほのか「えっ…?私は懲戒解雇になってもおかしくない人間ですよ?名古屋駅長…?」

まな「組織は人事が全てよ。だけど、勘違いしないで。組織とは、その人が最も輝く仕事を与えるものでもあるわ。」

作者メッセージ

初作品です。いかがでしたでしょうか?だいぶ『半沢直樹』のセリフが使われていますw

2025/06/30 23:24

上諏訪
ID:≫ 6.BBA13mnEY26
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