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本作は全年齢対象の創作BLです。
攻めから受けへの一方的な(?)溺愛を含みますが、ヤンデレ、監禁、執着、共依存などの暗い要素は一切ありません。
終始ハッピーで平和な、光の属性の物語です。
時計の針が、約束の時間を少しだけ過ぎている。
冷え切った冬の夜、律がバイトから帰ってくるのを、僕はマンションの玄関マットに座り込んで待っていた。
「……遅いなぁ。律くん、何かあったのかな」
広いリビングのソファで待てばいいのに、僕はどうしてもここを動けない。
一秒でも早く律くんの顔が見たい。一秒でも早く、その冷えた手を僕の体温で温めてあげたい。
暗い廊下を見つめていると、遠くでエレベーターが止まる音がした。
カツン、カツン。
規則正しい、少し疲れの混じった足音。間違いない、僕の、大好きな人の音だ。
カチャリ、と鍵が回る。
ドアが開いた瞬間、外の冷たい空気と一緒に、僕の「世界」が帰ってきた。
「……ただいま。って、うわっ!? 千尋、お前またこんなところで……」
驚いて丸眼鏡を少しずらした律くんが、呆れたように僕を見下ろす。
俺、と言いかけて「不潔」と毒を吐こうとした彼の唇が、寒さで少し震えていた。
「律くん! おかえりなさい! ずっと、ずっと待ってたんだよ!」
僕は立ち上がるのももどかしくて、座ったまま彼の腰にしがみついた。
大型犬が飼い主に飛びつくみたいに、ぶんぶんと、僕の心の中にある「しっぽ」が激しく揺れる。
「……、……重い。……どけよ、バカ。……、……、……風邪ひくだろ」
律くんは乱暴な言葉を投げつけるけど、その手は優しく僕の茶髪を撫でてくれた。
外気で冷え切った彼の指先が、僕の熱に触れて、少しずつ赤くなっていく。
「律くんがいないと、家の中が広すぎて寂しいんだもん。……ねえ、律くん。今日のご飯、律くんの好きなシチュー作ったよ」
見上げると、律くんの顔がみるみるうちに赤くなっていくのがわかった。
丸眼鏡の奥の瞳が泳いで、彼は必死に「ツン」を維持しようとしている。
「……、……、……勝手にしろ。……、……温め直してくるから。……、……お前は、さっさと風呂入れ」
そう言って僕の横を通り抜けようとする律くんの裾を、僕はギュッと掴んで離さない。
「律くん」と名前を呼ぶだけで、僕の全部が満たされていく。
「……、……ったく。……、……千尋は本当に、……俺がいないとダメなんだな」
律くんは溜息をつきながら、今度は逃げないように、僕の手をしっかりと握り返してくれた。
不器用で、口が悪くて、でも誰よりも温かい僕の律くん。
玄関の狭い空間に、二人の体温が混ざり合う。
外はどれだけ寒くても、ここには僕たちだけの、とびきり甘い時間が流れていた。
冷え切った冬の夜、律がバイトから帰ってくるのを、僕はマンションの玄関マットに座り込んで待っていた。
「……遅いなぁ。律くん、何かあったのかな」
広いリビングのソファで待てばいいのに、僕はどうしてもここを動けない。
一秒でも早く律くんの顔が見たい。一秒でも早く、その冷えた手を僕の体温で温めてあげたい。
暗い廊下を見つめていると、遠くでエレベーターが止まる音がした。
カツン、カツン。
規則正しい、少し疲れの混じった足音。間違いない、僕の、大好きな人の音だ。
カチャリ、と鍵が回る。
ドアが開いた瞬間、外の冷たい空気と一緒に、僕の「世界」が帰ってきた。
「……ただいま。って、うわっ!? 千尋、お前またこんなところで……」
驚いて丸眼鏡を少しずらした律くんが、呆れたように僕を見下ろす。
俺、と言いかけて「不潔」と毒を吐こうとした彼の唇が、寒さで少し震えていた。
「律くん! おかえりなさい! ずっと、ずっと待ってたんだよ!」
僕は立ち上がるのももどかしくて、座ったまま彼の腰にしがみついた。
大型犬が飼い主に飛びつくみたいに、ぶんぶんと、僕の心の中にある「しっぽ」が激しく揺れる。
「……、……重い。……どけよ、バカ。……、……、……風邪ひくだろ」
律くんは乱暴な言葉を投げつけるけど、その手は優しく僕の茶髪を撫でてくれた。
外気で冷え切った彼の指先が、僕の熱に触れて、少しずつ赤くなっていく。
「律くんがいないと、家の中が広すぎて寂しいんだもん。……ねえ、律くん。今日のご飯、律くんの好きなシチュー作ったよ」
見上げると、律くんの顔がみるみるうちに赤くなっていくのがわかった。
丸眼鏡の奥の瞳が泳いで、彼は必死に「ツン」を維持しようとしている。
「……、……、……勝手にしろ。……、……温め直してくるから。……、……お前は、さっさと風呂入れ」
そう言って僕の横を通り抜けようとする律くんの裾を、僕はギュッと掴んで離さない。
「律くん」と名前を呼ぶだけで、僕の全部が満たされていく。
「……、……ったく。……、……千尋は本当に、……俺がいないとダメなんだな」
律くんは溜息をつきながら、今度は逃げないように、僕の手をしっかりと握り返してくれた。
不器用で、口が悪くて、でも誰よりも温かい僕の律くん。
玄関の狭い空間に、二人の体温が混ざり合う。
外はどれだけ寒くても、ここには僕たちだけの、とびきり甘い時間が流れていた。
- 1.第1話:雨上がりに、君を見つけた
- 2.第2話:昨日のお礼は、ぶっきらぼうに。
- 3.第3話:没収された「大好き」の行方
- 4.第4話:メロンパンと、大型犬の忠誠心。
- 5.第5話:赤点回避の、スパルタ教育。
- 6.第6話:合格点と、ご褒美の甘い罠。
- 7.第7話:封印された二文字
- 8.第8話:嵐を呼ぶ、ひまわりのようなあいつ
- 9.第9話:バカにしないで、ちゃんと聞いて。
- 10.第10話:一週間、……お試しだぞ。
- 11.第11話:お試し1日目、心臓がもたない。
- 12.第12話:失くしてなかった、宝物。
- 13.第13話:眼鏡の奥の、本当の熱。
- 14.第14話:雨の音と、重なる鼓動。
- 15.第15話:朝の光と、お花の抱っこ。
- 16.第16話:朝食後の、0センチメートル。
- 17.第17話:泣き出しそうな君を、包み込む。
- 18.第18話:最強の姉、現る。
- 19.第19話:五本の指、重なる温度。
- 20.第20話:一週間なんて、待てない。
- 21.第21話:本当の恋人、1日目。
- 22.第22話:瞳に映る、一番好きな人。
- 23.第23話:0.5秒の、誓い。
- 24.第24話:姉の勘は、世界一。
- 25.第25話:不器用な、お返し。
- 26.第26話:フードの中の、秘密。
- 27.第27話:レンズ越しより、近い距離。
- 28.第28話:最強の刺客、現る。
- 29.第29話:ちいさな情報屋。
- 30.第30話:無防備な、もぐもぐタイム。
- 31.第31話:不器用な逆襲。
- 32.第32話:敗者の特権。
- 33.第33話:二度目の宣戦布告。
- 34.第34話:攻守交代の、お手本。
- 35.第35話:隠せない、本音の場所。
- 36.第36話:ぼやける視界と、熱い耳
- 37.第37話:不意打ちの「よしよし」
- 38.第38話:熱が引かない放課後
- 39.第39話:マフラー越しの温度
- 40.第40話:マフラー越しの本音
- 41.第41話:返したくない、温度
- 42.第42話:不確かな未来と、確かな体温
- 43.第43話:誰にも渡さない
- 44.第44話:指先のシミュレーション
- 45.第45話:左手の約束
- 46.第46話:銀色の重み、僕らの印
- 47.第47話:卒業の足音、消えない光
- 48.第48話:サヨナラは、はじまりの合図
- 49.第49話:左手の証明、朝の温度
- 50.第50話(最終回):しっぽを振るのは、君の前だけ
- 51.番外編:玄関先の大型犬