閲覧前に必ずご確認ください

※この物語は、少し心が「チクッ」とするような、重め・病み系の描写が含まれます。
※キャラクターが精神的に落ち込んでいくシーンがありますが、最終的にはハッピーエンドに向かいますので、最後まで見守っていただけると嬉しいです。
※「愛」を求める過程で、少し大人びた表現や、ピュアなだけではない描写が入る可能性があります。苦手な方はご注意ください。

「最後には、必ず幸せな光を見せます。」

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壊れたドールは、愛の温度を知りたい

#26

第26話:体温の証明

夜の街の喧騒から少し離れた、ビルの影にあるベンチ。
私はそこで、自分の膝を抱えて丸まっていた。
送った現在地。でも、本当にかっこ悪い。
メイクは落ち、服はボロボロ、目元は赤く腫れ上がった、最低な私。
……やっぱり、来るわけない。こんな面倒くさいドールなんて。

「……はぁ、……はぁ、……ルナ、さん」

湿った夜の空気を切り裂くように、聞き慣れた声が響いた。
顔を上げると、そこには息を切らして、肩で呼吸をしている颯太くんが立っていた。
いつも穏やかな彼の髪は乱れ、額には汗が滲んでいる。

「……、……、……バカ。……本当に、来たの」

私は膝に顔を埋めたまま、掠れた声で言った。
彼は何も言わず、ゆっくりと歩み寄ると、私の隣に座った。
抱きしめるわけでも、理由を問い詰めるわけでもない。ただ、彼が座ったことでベンチが微かに揺れ、隣から微かな熱が伝わってくる。

「……ごめんね。怖かったよね」

「……、……怖くない。……、……慣れてる。……私なんて、ただの人形なんだから。……壊れたら、捨てられるだけ。……お母さんも、みんな、そう思ってる」

自分を傷つける言葉が止まらない。
でも、彼は私の言葉を否定せず、ただじっと聞いていた。そして、カバンの中から何かを取り出し、私の手にそっと握らせた。

それは、昨日私が彼にあげたあのチェリー味のキャンディの、新しいやつだった。

「ルナさんは、人形なんかじゃないよ。……俺の前で泣いて、怒って、毒を吐いて。……そんな、生身の君のことが、俺は……」

彼は言葉を飲み込んで、ただ私の冷え切った手に、自分の手を重ねた。
ごつごつした、少し熱い、人間の手。
お母さんの冷たい指先とは違う。
その温かさが、私の壊れた心にゆっくりと「命」を吹き込んでいく。

「……、……、……甘い。……、……バカみたいに、甘いよ」

私はキャンディを口に放り込み、彼の肩にそっと頭を預けた。
東の空が、ほんの少しだけ白み始めていた。
夜はもうすぐ終わる。でも、私の物語は、ここからまた動き出そうとしていた。

作者メッセージ

皆様、こんにちは。酸素ちゃんです🫧

第26話、絶望の淵にいたルナちゃんを見つけ出したのは、やはり颯太くんでした。
多くを語らず、ただ隣にいる。その静かな「肯定」が、ルナちゃんの凍った心を溶かしていきます。
「甘い」と言った彼女の言葉は、キャンディの味だけではなく、彼と一緒にいる時間の味だったのかもしれません。

完結まであと4話。ルナちゃんは、自分の足でどこへ向かうのでしょうか。

2026/06/08 21:28

蜜薬 @低浮上ちゃん
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