閲覧前に必ずご確認ください

※この物語は、少し心が「チクッ」とするような、重め・病み系の描写が含まれます。
※キャラクターが精神的に落ち込んでいくシーンがありますが、最終的にはハッピーエンドに向かいますので、最後まで見守っていただけると嬉しいです。
※「愛」を求める過程で、少し大人びた表現や、ピュアなだけではない描写が入る可能性があります。苦手な方はご注意ください。

「最後には、必ず幸せな光を見せます。」

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壊れたドールは、愛の温度を知りたい

#19

第19話:不器用な「ありがとう」の代わり

放課後、陽菜ちゃんが先に塾へ向かった後、私と颯太くんは並んで校門を出た。
夕陽が長く伸びて、私たちの影がアスファルトに重なり合う。

「……、……ねえ」

数歩先を歩く彼の背中に、私はポツリと声をかけた。
言わなきゃいけない。でも、「ありがとう」なんて言葉、私のキャラじゃないし、喉に詰まって出てこない。

「……、……さっきの。……、……あんなこと言ったら、あんたまで変な目で見られるのに。……、……バカじゃないの」

結局、出てきたのは可愛げのない毒舌。
でも、颯太くんは足を止めて振り返ると、困ったように笑った。

「またバカって言う。……俺、本当のことしか言ってないよ。ルナさんがルナさんでいること、俺は否定したくないんだ」

……その「本当のこと」が、今の私には一番眩しくて、一番痛い。
お母さんですら否定する私を、どうしてこの人は、そんなに簡単に受け入れてしまうんだろう。

私は俯いたまま、バッグから一粒のキャンディを取り出した。
陽菜ちゃんが今日「これ、ルナさんに似合うと思って!」って押し付けてきた、真っ黒な包み紙のチェリー味。

「……、……これ。……あげる。……、……溶ける前に、食べなよ」

ひったくるように彼の手に押し付ける。
それが、今の私にできる精一杯の「守ってくれてありがとう」だった。

「……、……それだけ。……じゃあね」

返事を聞く前に、私は足早に歩き出した。
心臓がうるさい。
後ろから「あ、ありがとう。大事に食べるよ」っていう彼の声が聞こえて、私はもっと顔を赤くして、絆創膏だらけの腕をギュッと抱きしめた。

暗い部屋に帰る前の、ほんの一瞬。
夕焼けに染まったキャンディの包み紙みたいに、私の心もほんのり、熱を持っていた。

作者メッセージ

皆様、こんにちは。酸素ちゃんです🫧

第19話は、ルナちゃんなりの感謝の形を描きました。
素直になれない彼女が渡した一粒のキャンディ。
それは言葉以上の意味を持って、颯太くんの心に届いたはずです。

誰かを信じるのが怖かったドールが、少しずつ、自分の意志で手を伸ばし始めています。
二人の絶妙な距離感、これからも大切に描いていきます。

2026/05/16 17:56

蜜薬 @文字化け気味
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