閲覧前に必ずご確認ください

※この物語は、少し心が「チクッ」とするような、重め・病み系の描写が含まれます。
※キャラクターが精神的に落ち込んでいくシーンがありますが、最終的にはハッピーエンドに向かいますので、最後まで見守っていただけると嬉しいです。
※「愛」を求める過程で、少し大人びた表現や、ピュアなだけではない描写が入る可能性があります。苦手な方はご注意ください。

「最後には、必ず幸せな光を見せます。」

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壊れたドールは、愛の温度を知りたい

#14

第14話:空っぽの「ありがとう」

玄関のドアを開けると、家の空気はさっきまでの荒々しさが嘘のように静まり返っていた。
お母さんはソファに座って、ぼんやりとテレビを眺めている。

私はバッグの奥から、丁寧にラッピングされた小さな箱を取り出した。指先が少しだけ震える。

「……、……これ。……さっきのお金で、買ったから」

差し出された箱を、お母さんは不思議そうに受け取った。
包装紙を解くカサカサという音が、やけに大きく響く。中から出てきたのは、落ち着いた淡い色のハンカチ。

「……あら。私のために選んでくれたの?」
「……、……お母さん、……好きかなって、思って」

お母さんはハンカチを広げると、少しだけ口角を上げた。

「そう。……ありがとう。大切にするわね」

その言葉に、いつもの棘はなかった。
「派手だ」とも「まともじゃない」とも言われない。
ずっと欲しかったはずの、穏やかな感謝の言葉。

なのに、どうしてだろう。
私の胸の奥は、温かくなるどころか、逆にどんどん冷え切っていく。

「……、……、……、……うん。……おやすみなさい」

私はそれ以上何も言えず、逃げるように自分の部屋へ戻った。
怒鳴られるわけでも、否定されるわけでもない。
でも、お母さんのあの「ありがとう」には、私の絶望も、流した涙も、一つも混ざっていなかった。
ただ、目の前の面倒な事態を収めるための、形だけの報酬。

机の上に置いたスマホが、一瞬だけ光った。
陽菜ちゃんからのスタンプと、颯太くんからの「また明日」という文字。

「……、……、……、……分かんないよ」

私は腕の絆創膏をなぞる。
お母さんに嫌われていないはずの今が、否定されていた時よりもずっと孤独に思えて、私は暗闇の中で一人、声を殺して泣いた。

作者メッセージ

皆様、こんにちは。酸素ちゃんです。

第14話は、ルナちゃんにとっての「期待外れの救い」を描きました。
お母さんからの「ありがとう」という言葉。それは本来、幸せなはずの結末です。
でも、ルナちゃんが本当に欲しかったのは、自分の苦しみを見て、理解してもらうことだったのかもしれません。

悪口すら言われない、無関心に近い優しさ。
それが、ルナちゃんの心をさらに迷子にさせてしまいます。

不器用な彼女の夜が、いつか本当の光に照らされるまで、どうぞ見守ってください。

2026/05/03 12:07

蜜薬 @文字化け気味
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