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本作は全年齢対象の創作BLです。
攻めから受けへの一方的な(?)溺愛を含みますが、ヤンデレ、監禁、執着、共依存などの暗い要素は一切ありません。
終始ハッピーで平和な、光の属性の物語です。
ああ、今日はなんて最高の日なんだろう。
バケツをひっくり返したような土砂降りの中、僕はびしょ濡れで走っていた。お気に入りのスニーカーはもうぐちょぐちょで、一歩踏み出すたびに変な音がする。でも、そんなのどうでもいい。
だって、校舎の軒下で雨宿りをしていた「彼」を見つけてしまったから。
「……はぁ。最悪」
低くて、少し不機嫌そうな声。
彼は銀色の雨のカーテンを睨みつけるようにして、一人で立っていた。濡れたくないのか、それとも帰るのが面倒なのか。少しだけ尖らせた唇と、切れ味の鋭い瞳。
その瞬間、僕の心臓がトクンと跳ねた。
なんだろう、この感じ。まるで、雨の中に一匹だけ取り残された綺麗な黒猫を見つけた時のような、放っておけない気持ち。
「あの、君!」
僕は迷わず、彼の前に飛び出した。
バシャリ、と派手な音を立てて水飛沫を上げた僕を、彼は心底うっとうしそうに一瞥した。
「……なんだよ、お前。濡れてるぞ」
「僕は大丈夫! それより、君。傘忘れたんでしょ? これ、使いなよ!」
僕は手に持っていた折りたたみ傘を、半ば強引に彼の胸元に押し付けた。
彼は驚いたように目を見開いた。その瞳は雨空の色を反射して、世界で一番綺麗に見えたんだ。
「は? ……おい、待てよ。お前はどうすんだよ」
「僕は走るのが得意だから平気! 律君、また明日ね!」
「……律? なんで俺の名前を……」
あ、名札見ちゃったのは内緒。
僕はそれ以上言葉を交わさず、彼が何かを言い返す前に、再び雨の中へと駆け出した。
後ろから「おい! 待てって!」という声が聞こえた気がしたけど、振り返らない。
雨に打たれながら走る僕の顔は、きっとだらしなく緩みっぱなしだったと思う。
律君。
俺、って言った彼の声。
ぶっきらぼうで、冷たくて、でも傘を押し付けられた時にほんの少しだけ戸惑ったような、あの顔。
(明日、傘を返しに来てくれるかな。……また、話せるかな)
冷たいはずの雨が、今の僕にはちっとも冷たく感じられなかった。
むしろ、胸の奥がぽかぽかと温かい。
これが、僕と律君の、最初の一歩。
最高に「最悪な天気」がくれた、僕だけの宝物だ。
バケツをひっくり返したような土砂降りの中、僕はびしょ濡れで走っていた。お気に入りのスニーカーはもうぐちょぐちょで、一歩踏み出すたびに変な音がする。でも、そんなのどうでもいい。
だって、校舎の軒下で雨宿りをしていた「彼」を見つけてしまったから。
「……はぁ。最悪」
低くて、少し不機嫌そうな声。
彼は銀色の雨のカーテンを睨みつけるようにして、一人で立っていた。濡れたくないのか、それとも帰るのが面倒なのか。少しだけ尖らせた唇と、切れ味の鋭い瞳。
その瞬間、僕の心臓がトクンと跳ねた。
なんだろう、この感じ。まるで、雨の中に一匹だけ取り残された綺麗な黒猫を見つけた時のような、放っておけない気持ち。
「あの、君!」
僕は迷わず、彼の前に飛び出した。
バシャリ、と派手な音を立てて水飛沫を上げた僕を、彼は心底うっとうしそうに一瞥した。
「……なんだよ、お前。濡れてるぞ」
「僕は大丈夫! それより、君。傘忘れたんでしょ? これ、使いなよ!」
僕は手に持っていた折りたたみ傘を、半ば強引に彼の胸元に押し付けた。
彼は驚いたように目を見開いた。その瞳は雨空の色を反射して、世界で一番綺麗に見えたんだ。
「は? ……おい、待てよ。お前はどうすんだよ」
「僕は走るのが得意だから平気! 律君、また明日ね!」
「……律? なんで俺の名前を……」
あ、名札見ちゃったのは内緒。
僕はそれ以上言葉を交わさず、彼が何かを言い返す前に、再び雨の中へと駆け出した。
後ろから「おい! 待てって!」という声が聞こえた気がしたけど、振り返らない。
雨に打たれながら走る僕の顔は、きっとだらしなく緩みっぱなしだったと思う。
律君。
俺、って言った彼の声。
ぶっきらぼうで、冷たくて、でも傘を押し付けられた時にほんの少しだけ戸惑ったような、あの顔。
(明日、傘を返しに来てくれるかな。……また、話せるかな)
冷たいはずの雨が、今の僕にはちっとも冷たく感じられなかった。
むしろ、胸の奥がぽかぽかと温かい。
これが、僕と律君の、最初の一歩。
最高に「最悪な天気」がくれた、僕だけの宝物だ。
- 1.第1話:雨上がりに、君を見つけた
- 2.第2話:昨日のお礼は、ぶっきらぼうに。
- 3.第3話:没収された「大好き」の行方
- 4.第4話:メロンパンと、大型犬の忠誠心。
- 5.第5話:赤点回避の、スパルタ教育。
- 6.第6話:合格点と、ご褒美の甘い罠。
- 7.第7話:封印された二文字
- 8.第8話:嵐を呼ぶ、ひまわりのようなあいつ
- 9.第9話:バカにしないで、ちゃんと聞いて。
- 10.第10話:一週間、……お試しだぞ。
- 11.第11話:お試し1日目、心臓がもたない。
- 12.第12話:失くしてなかった、宝物。
- 13.第13話:眼鏡の奥の、本当の熱。
- 14.第14話:雨の音と、重なる鼓動。
- 15.第15話:朝の光と、お花の抱っこ。
- 16.第16話:朝食後の、0センチメートル。
- 17.第17話:泣き出しそうな君を、包み込む。
- 18.第18話:最強の姉、現る。
- 19.第19話:五本の指、重なる温度。
- 20.第20話:一週間なんて、待てない。
- 21.第21話:本当の恋人、1日目。
- 22.第22話:瞳に映る、一番好きな人。
- 23.第23話:0.5秒の、誓い。
- 24.第24話:姉の勘は、世界一。
- 25.第25話:不器用な、お返し。
- 26.第26話:フードの中の、秘密。
- 27.第27話:レンズ越しより、近い距離。
- 28.第28話:最強の刺客、現る。
- 29.第29話:ちいさな情報屋。
- 30.第30話:無防備な、もぐもぐタイム。
- 31.第31話:不器用な逆襲。
- 32.第32話:敗者の特権。