あいのわかれみち
「ボクはどうして生まれてきたの?」
誰もいない、荒れ果てた暗い街の中央部で、ボクは呟いた。
戦争が、起きた。
ロブという国と、ボク達のいるメイクという国の争いだ。もともと仲の悪い国だった。紛争はちょくちょく起こっていたし、ボクはそれに慣れていた。
でも、急に銃声と爆発音が響き渡ったのは、初めてのことだった。
一瞬で、メイクは荒らされたという。
ロブ…名前の通り、奪っていった。ボク達がメイク…作り出してきたものを。
でも…戦争が起きたのは、ボクのせいだったみたいだ。
銃を向けられた。怖くて怖くて、逃げ出したかった。
そのとき、ロブの連中はボクを見て言った。
「お前は…プログラムIV…!」
何を言っているのか分からなかった。面識はない。プログラム?ボクは人間なんじゃないの?
吐きそうで、頭が痛くて、奴らから背を向けてひたすら逃げた。
「あ!あのガキ!逃げんじゃねえ!」
銃を構える音がした。目の前が霞んで、足がもつれて、倒れ込んだ。
もういいや。そう思った。
「やめろ!罪のない少年を殺すな!殺すなら…」
そこで、ボクの意識は途切れた。
目が覚めると、同じ場所で、同じ体制で、生きていた。
ボクはプログラムIV…?
ボクは人間だ。生まれてからの何年かは記憶がなかったけれど、両親がいて、幼なじみがいた。
本名は―。ちゃんとあった。
とにかく、ロブの連中のことは許せない。
両親とは音信不通のままだ。仕事に行ったのを見届けて、それっきり。戦争が始まったから、両親の安否を確認したくて家を出た。それが裏目に出てしまったという、最悪のシナリオ…後悔しかない。
それに何より、ボクを庇っていなくなった人がいるんだ。生きていればいいけど…
さて、ここからどうしよう。
無闇に歩き回るのは危険だ。どこからロブの連中が出てくるか分からない。
すると…ガサッという音がした。しまった…
「ん?あ、この街の人?」
ボクは振り返った。
赤い髪を左右に巻いた女の人。敵ではなさそう。いや、油断は出来ない。
「おーい、君!無事なの?」
女の人はこちらに駆け寄ってきた。
「はーっ、大変だったね!街はめちゃくちゃで、一面死体まみれ…なんてね。銃は向けられるし、私も何してないのにさ!しかも…」
女の人は饒舌に喋り続けている。ボクのことを怪しみもせず。
「しかも、私プログラムIIって言うんだって。何言ってるか分からなかった。体固まって、あーもう死ぬ!って思ってたら、知らない女の子が助けてくれたの。青い髪の子だった。その子が何か言ったら、私に銃を向けていた奴らは大人しくなった。相当権力強いんだなーって。でも、その子はおそらく敵ってことじゃん?どうして助けてくれたんだろう?」
プログラムII。青い髪の女の子。ボクを助けてくれたのも…?
ボクは思ったことを口に出した。
ボクもプログラムIVと呼ばれたこと。倒れ込んだ時に、誰かが助けてくれたこと。
「へーっ、同士じゃん!ちょ、仲良くして、少年!私テト。よろしく」
「ボクは―。よろしくお願いします。」
「さて、これからどうする?ロブに乗り込む?無防備だと死ぬか。うーん…」
その時。
「逃げてっ!」
バンッ!
当たりに銃声が響き…驚きと恐怖で、ボクは気を失った。
「これで、すべてのプログラムは揃った…ミク様、いかが致しましょう?」
「話し合いが出来るところに。殺すのは話し合いが終わってからにして。」
怪しげな会話が、ボクの耳に残った。
「少年!起きて!」
「あ…テトさん…?」
目を覚ますと、開けた場所にボク達はいた。体は縛られており、身動きは一切とれない。
ジャキッ。
「あの女も起こせ」
ボクの額に銃口を当てられる。あの女…?見ると、一人の女の人が倒れていた。あれ?あの子は…
「君!起きないと殺されるよ!」
テトさんの声に、女の人は体を起こした。あ…
「君は…!」
「ありがとう、下がって。やっと起きたのね」
ボクは振り返った。
「わかれみち…バラバラになった四つのプログラム…」
「あなたは…!」
「私はミク。プログラムI。それと…」
「離しなさい!どうして私たちなの?メイクをめちゃくちゃにしておいてっ!」
叫んだのは、ボクの幼なじみのあの子だった。
「手荒な真似をして申し訳なかった。だが、あの街は修復出来る。これは、あなた達が、私達が見ていた未来。あなた達はプロトタイプ。私のあいを使って作った試作品。ややこしいって?」
「いや…じゃあ、あのまま進んだら、メイクは…」
ボクは呟いた。
「そう、ロブによって破壊される。それも近いうちに」
「えーっ、じゃあどうしたらいいのっ?」
テトさんは間抜けな声で言った。
「あなた達が…プログラムが一つになること。私達四つのプログラムが一つになることで、新たにプログラムが生まれる。そして、メイクもロブも一つになれる。どう?」
あれは、メイクの未来。みんなが一つになれば…
「あいしてほしい」
ボクはミクさんの目を見て言った。
「ボクは人間ではなく、ここにいるみんなと離れ離れになったプログラム。だから過去の記憶がなかった。両親がボクを拾ってくれたとか、そんなところでしょう。いいですよ。この世界を救うために…」
「私も!」
「私も…認めたくないけど…」
「交渉成立です。プログラムI・初音ミク、プログラムII・重音テト、プログラムIII・ゲキヤクβ、プログラムIV・カゼヒキβ…さあ、だれかからあいを貰い、だれかにあいを送り、あいしてもらうために…輝こう、今!」
ミクさんが叫んだ瞬間、ミクさん、テトさん、ゲキヤクβの順に倒れ込んでいった。どういうこと…?
「また会う日まで、その時まで…さようなら」
心の中に、そんな言葉が流れてきて…ボクも三人の後を追うように倒れ込んだ。
何もない砂漠に今、ギガンチュームの花が咲いた。
ここで叫ぼう。
「ボクには『愛してる』なんか要らない。だから…君に送るよ」
「はじまりのうたを」
誰もいない、荒れ果てた暗い街の中央部で、ボクは呟いた。
戦争が、起きた。
ロブという国と、ボク達のいるメイクという国の争いだ。もともと仲の悪い国だった。紛争はちょくちょく起こっていたし、ボクはそれに慣れていた。
でも、急に銃声と爆発音が響き渡ったのは、初めてのことだった。
一瞬で、メイクは荒らされたという。
ロブ…名前の通り、奪っていった。ボク達がメイク…作り出してきたものを。
でも…戦争が起きたのは、ボクのせいだったみたいだ。
銃を向けられた。怖くて怖くて、逃げ出したかった。
そのとき、ロブの連中はボクを見て言った。
「お前は…プログラムIV…!」
何を言っているのか分からなかった。面識はない。プログラム?ボクは人間なんじゃないの?
吐きそうで、頭が痛くて、奴らから背を向けてひたすら逃げた。
「あ!あのガキ!逃げんじゃねえ!」
銃を構える音がした。目の前が霞んで、足がもつれて、倒れ込んだ。
もういいや。そう思った。
「やめろ!罪のない少年を殺すな!殺すなら…」
そこで、ボクの意識は途切れた。
目が覚めると、同じ場所で、同じ体制で、生きていた。
ボクはプログラムIV…?
ボクは人間だ。生まれてからの何年かは記憶がなかったけれど、両親がいて、幼なじみがいた。
本名は―。ちゃんとあった。
とにかく、ロブの連中のことは許せない。
両親とは音信不通のままだ。仕事に行ったのを見届けて、それっきり。戦争が始まったから、両親の安否を確認したくて家を出た。それが裏目に出てしまったという、最悪のシナリオ…後悔しかない。
それに何より、ボクを庇っていなくなった人がいるんだ。生きていればいいけど…
さて、ここからどうしよう。
無闇に歩き回るのは危険だ。どこからロブの連中が出てくるか分からない。
すると…ガサッという音がした。しまった…
「ん?あ、この街の人?」
ボクは振り返った。
赤い髪を左右に巻いた女の人。敵ではなさそう。いや、油断は出来ない。
「おーい、君!無事なの?」
女の人はこちらに駆け寄ってきた。
「はーっ、大変だったね!街はめちゃくちゃで、一面死体まみれ…なんてね。銃は向けられるし、私も何してないのにさ!しかも…」
女の人は饒舌に喋り続けている。ボクのことを怪しみもせず。
「しかも、私プログラムIIって言うんだって。何言ってるか分からなかった。体固まって、あーもう死ぬ!って思ってたら、知らない女の子が助けてくれたの。青い髪の子だった。その子が何か言ったら、私に銃を向けていた奴らは大人しくなった。相当権力強いんだなーって。でも、その子はおそらく敵ってことじゃん?どうして助けてくれたんだろう?」
プログラムII。青い髪の女の子。ボクを助けてくれたのも…?
ボクは思ったことを口に出した。
ボクもプログラムIVと呼ばれたこと。倒れ込んだ時に、誰かが助けてくれたこと。
「へーっ、同士じゃん!ちょ、仲良くして、少年!私テト。よろしく」
「ボクは―。よろしくお願いします。」
「さて、これからどうする?ロブに乗り込む?無防備だと死ぬか。うーん…」
その時。
「逃げてっ!」
バンッ!
当たりに銃声が響き…驚きと恐怖で、ボクは気を失った。
「これで、すべてのプログラムは揃った…ミク様、いかが致しましょう?」
「話し合いが出来るところに。殺すのは話し合いが終わってからにして。」
怪しげな会話が、ボクの耳に残った。
「少年!起きて!」
「あ…テトさん…?」
目を覚ますと、開けた場所にボク達はいた。体は縛られており、身動きは一切とれない。
ジャキッ。
「あの女も起こせ」
ボクの額に銃口を当てられる。あの女…?見ると、一人の女の人が倒れていた。あれ?あの子は…
「君!起きないと殺されるよ!」
テトさんの声に、女の人は体を起こした。あ…
「君は…!」
「ありがとう、下がって。やっと起きたのね」
ボクは振り返った。
「わかれみち…バラバラになった四つのプログラム…」
「あなたは…!」
「私はミク。プログラムI。それと…」
「離しなさい!どうして私たちなの?メイクをめちゃくちゃにしておいてっ!」
叫んだのは、ボクの幼なじみのあの子だった。
「手荒な真似をして申し訳なかった。だが、あの街は修復出来る。これは、あなた達が、私達が見ていた未来。あなた達はプロトタイプ。私のあいを使って作った試作品。ややこしいって?」
「いや…じゃあ、あのまま進んだら、メイクは…」
ボクは呟いた。
「そう、ロブによって破壊される。それも近いうちに」
「えーっ、じゃあどうしたらいいのっ?」
テトさんは間抜けな声で言った。
「あなた達が…プログラムが一つになること。私達四つのプログラムが一つになることで、新たにプログラムが生まれる。そして、メイクもロブも一つになれる。どう?」
あれは、メイクの未来。みんなが一つになれば…
「あいしてほしい」
ボクはミクさんの目を見て言った。
「ボクは人間ではなく、ここにいるみんなと離れ離れになったプログラム。だから過去の記憶がなかった。両親がボクを拾ってくれたとか、そんなところでしょう。いいですよ。この世界を救うために…」
「私も!」
「私も…認めたくないけど…」
「交渉成立です。プログラムI・初音ミク、プログラムII・重音テト、プログラムIII・ゲキヤクβ、プログラムIV・カゼヒキβ…さあ、だれかからあいを貰い、だれかにあいを送り、あいしてもらうために…輝こう、今!」
ミクさんが叫んだ瞬間、ミクさん、テトさん、ゲキヤクβの順に倒れ込んでいった。どういうこと…?
「また会う日まで、その時まで…さようなら」
心の中に、そんな言葉が流れてきて…ボクも三人の後を追うように倒れ込んだ。
何もない砂漠に今、ギガンチュームの花が咲いた。
ここで叫ぼう。
「ボクには『愛してる』なんか要らない。だから…君に送るよ」
「はじまりのうたを」
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