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#きっとまた逢える

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泥酔

___日が昇って、もう直ぐ夜も明ける頃。ふと窓を覗くと、_恐らく出勤で朝早くから忙しく歩く大人達が見えた。
そんな朝から少し騒々しい朝に[漢字]双人[/漢字][ふりがな]ふたり[/ふりがな]、小さく暗いバーに集まっていた。
独りは客で、黒髪のロングヘアに机に突っ伏していて、酔い潰れていた。そして何故か少し啜り泣きも聞こえる。独りは、バーの店主だろうか、大人しくグラスを拭きながら客の泣き言に耳を傾けている。


客は…[下線][漢字]滴跡 流緋[/漢字][ふりがな]しずくあと るひ[/ふりがな][/下線]はこの店の常連で、いつも夜遅くから来て、軽く飲んで家に変えるという人だった。だから、こんな朝まで飲み続けるというのは珍しいことなのだ。
バーの店主、[下線][漢字]音戯 青藍[/漢字][ふりがな]おとぎ せいらん[/ふりがな][/下線]はその理由が分かっていた。
この店は、そろそろ長期休業を迎える。開店の時期はまだ不透明だ。それを話すのを躊躇っていると、いち早く気付いたのが流緋だった。だから最後に、と朝まで飲み通し続けた結果が今に至るという訳だ。
流緋は、目の下が少し紅く腫れている顔を上げ、力強く目を擦ると少し拗ねた様子で問い始めた。

[下線]滴跡 流緋[/下線]
「…[小文字]ぐすっ…[/小文字]…せいらんは…、…後悔してないの?」

[漢字]彼女[/漢字][ふりがな]青藍[/ふりがな]も知っていた。この場所が大切だった自分にとって、この決断はきっと〝自ら居場所を失くす〟という意味になるのだ、と。もう今後一切この店のドアの鐘はならないのだ、と。
それを流緋は言っているのだ。この決断を後悔していないのか、本当に畳む気なのか、そう聞いているのだろう。
脱線するが、私達は〝特別な関係〟にある。〝特別な関係〟の明確な意味はご想像にお任せするが。流緋は、大切な私と大切なこの場所を失くすのが怖いんだろう。
話を戻そう。勿論後悔していない、という訳ではない。私も何度も考えた、この決断は本当に正しいのか、何度だって悩んだ。
でも…、…青藍は[漢字]彼女[/漢字][ふりがな]流緋[/ふりがな]の為だと思っていた。[漢字]こんな奴[/漢字][ふりがな]嫌われ者[/ふりがな]じゃなく、何時でも何処でも構ってくれる人が良い。彼女に、幸せになって欲しいからの決断だと思っている。
…勿論そんな事言えない、絶対に「そんな事無い」と流緋に否定されるからだ。彼女は良くも悪くも優しいから、思ってなくても言うのだろう。だから強制的に離れる、その行動を選択したんだ。
流緋も、青藍が窓に向ける瞳からそれが分かったのだろう。自分の涙ぐんだ顔を斜め下に向けた。
双人の間に暫しの沈黙が流れる。その静寂を奪うように流緋がまた話し始めた。愚痴、趣味、そして未来。


気がつくと朝日は天高く昇っていて、もう昼の時間になっていた。
遂に酔い潰れた流緋をソファーに寝かせ、空いているスペースに彼女も座った。
彼女の頬をそっと撫でた。すやすやと寝息をたてるその顔は、美しかった。流緋は可愛い顔というより綺麗な顔をしている。ゆっくりとした言葉にはとても言い表せない不思議な性格とその中性的な声質で、女性は勿論、男性からも支持を集めている。だから流緋は私が居なくてもモテモテなんだろうなぁ、と苦笑しつつ、寂しくもあった。
私にも別れの時が近づいてきた。店を出ようとした頃、彼女の耳元でそっと囁いた。

[下線]音戯 青藍[/下線]
「 …きっとまた逢える。だから、待ってて。 」

そう言い残して、頬に軽い接吻を落とし、少しの魔法をかけた。


そこから何時間も経った頃、太陽が沈み空が橙色の時間帯にやっと流緋が目を覚ました。
腫れて少し痛い目を擦り、寝ぼけた脳を少し目覚めさせると、自分の記憶がぽっかり抜けていることに気がついた。
口癖の様に、無意識に言葉が出る。その意味は目覚めて直ぐの流緋には意味はよく分かっていなかったが。

[下線]滴跡 流緋[/下線]
「 …〝きっとまた逢える〟…。 」

[中央寄せ][明朝体]またのご来店を、心より望んでおります。[/明朝体][/中央寄せ]

作者メッセージ

戻ったら続編書くのもありですね。



貴方と、また逢える日を楽しみにしています。
またのご来店、心より望んでおります。

2026/03/21 20:58

酩酊
ID:≫ 3.tvP/0jFve3c
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