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酩酊

辛い過去、忘れたい記憶、消えない傷


自分の過去が、見通せない未来が夜に、少女はふらふらと昼のように煌めく繁華街を彷徨い歩いていた。


いつのまにか自分の名前すら思い出せない少女は、幸せを放つこの街を憎く思っていた。だが、誰も彼女には見向きもせず、自分の手の中にある幸せだけを見つめている。或いは、手の中にある幸せに目を向けず、同情物語を繰り広げている。世界とは、何と無様だろう。彼女は小さいながらに感じていた。


少女は、自分だけに聞こえるように、痛々しい自虐のように掠れた声で呟く。


「 …私、何やってんだろ…… 」


その行動に意味はあったか?否、ただただ自分から逃げたいだけであった。ふらふらと歩く少女の足は既に力はなかったが、彼女の衝動を誰も止められはしなかった。


…正直に言うと、少女の人生は惨めだった。何事からも逃げたくなるのも仕方がないと、誰もが同情する程に。


そして、ついに少女の足が止まった。路地裏のゴミ箱の裏に体を隠すようにしゃがんだ。ゴミ箱は大きく、少女がしゃがみ込むと彼女の体が隠れる程だった。


体が、寒い。もう手足は悴んで動かなくなる。もういっそ、このまま動かなくなるまで眠ろう。永遠の眠りへと。そう思い目を瞑った。





目を開ける。まだまだ少女の命の期限はあるらしく、永遠の眠りは遠いようだ。
そう思い、立ち上がった時、眠りにつく前の喧騒が聞こえないと気付いた。喧騒が弱まったのではなく、全くもって聞こえないのだ。その上に暗いのだ。少女は眠った、深く眠りについて1日なんてとうに越しているはずだ。それなのに真夜中のように暗い。


路地裏から顔を出すと、不思議な雰囲気を放つ1軒の本屋が目に入った。眠る前はなかったはずだ。本屋を見ていると、何だが心が内側から叫んでいるような気がしてくる。助けを求めているのではなく、ただ気づいて欲しい、そう言っているように。気づけば入店していた。彼女の財布は、本一冊買う程の金はない。だが、何故かここに居たかった。店主も歓迎してくれているように見えた。


そして、少女は一冊の本を手に取る。何故か、少女の目には映っていた。その本が自らの心と共鳴しているように。題名は…


「 酩酊…? 」


かなり珍しい題名に思わずそう呟くと、店主は意地悪く笑い、


「 そいつに気に入られるとは珍しい。その本は嬢ちゃんに読んでほしいってさ。 」


そう言われ、戸惑いながらもペラペラとページを捲る。次々と現れる物語は、少女にどんな感情を持たせてくれるのだろうか。


[明朝体][中央寄せ]少女と〝酩酊〟の物語は、まだ始まったばかりだ。[/中央寄せ][/明朝体]

2026/02/01 11:42

酩酊
ID:≫ 3.tvP/0jFve3c
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