円卓を囲む神々の気配は、先ほどまでの緊張とは違い、少しずつ落ち着きを取り戻していた。
ゼウスが腕を組む。
「では結論は同じだ」
低く、しかし確かな声。
「人の戦に神は干渉しない」
ガイアがゆっくり頷く。
「大地はまだ崩れていない。恐れはあるけれど、希望もある」
シヴァは椅子の背にもたれながら、軽く笑った。
「珍しく意見が揃った...草なんだが!!(?)」
円卓の空気が少し緩む。
長い議論の末、神々はひとつの答えにたどり着いていた。
——人間に任せる。
その時だった。
カチ。
屋根裏の古い時計が、妙に大きく鳴った。
カチ、カチ……。
ゼウスの眉がわずかに動く。
「……?」
ガイアが床に触れたまま、顔を上げる。
「待って」
空気が変わった。大地を通して伝わる振動が、突然強くなる。
「これは……」
シヴァがゆっくり体を起こした。
「いやいやいやいやいやぁぁぁ」
次の瞬間。
バキッ。
屋根裏の空間が、まるでガラスのように裂けた。
赤黒い亀裂。そこから、重い足音が響く。
ドン。
ドン。
現れたのは、巨大な鎧の神。
血の色を思わせるマントがゆっくり揺れている。戦の匂いが空間に広がった。
ゼウスが低く言う。
「……アレス」
戦争の神は、ゆっくりと円卓を見渡した。
「随分静かな会議だな」
声は落ち着いている。
だが、その背後には無数の戦場の幻影が揺れていた。
燃える街、折れた槍、倒れる兵。
ガイアが冷たく言う。
「ここはあなたの来る場所じゃない」
アレスはわずかに笑う。
「そうか?」
円卓に一歩近づく。
その一歩だけで、床が震えた。
「戦の匂いがした」
シヴァが腕を組む。
「まだ始まってない」
「始まる」
アレスの答えは迷いがない。
ゼウスの声が鋭くなる。
「我らは干渉しないと決めた」
「知っている」
アレスは軽く肩をすくめた。
「だから来た」
神々の間に、短い沈黙が落ちる。アレスは円卓の中央を指でなぞる。
すると、そこに幻影が浮かんだ。
都市、軍隊、怒りに満ちた人の群れ。
「見ろ」
声が低く響く。
「火はもう灯っている」
ガイアが目を細める。
「まだ消せる」
「そうか?」
アレスの視線が鋭くなる。
「人が自分で消すならな」
シヴァが小さく笑う。
「戦を始める...脳筋すぎるだろ」
アレスは少しだけ考えるように黙り、そして言った。
「ならば」
背後の戦場の幻影が膨れ上がる。
「合図だけはしておく」
ゼウスが睨む。
「何をするつもりだ」
アレスは振り返らない。ただ、言葉だけを落とした。
「戦は突然始まらない」
亀裂の中へ戻りながら、最後の声が響く。
「必ず“前触れ”がある」
バキン。
空間が閉じる。時計の音だけが戻る。
カチ。カチ。
ガイアが静かに呟く。
「……始まる」
ゼウスは窓のない空間を見つめる。
「いや」
短く言った。
「まだ始まっていない」
シヴァが肩をすくめる。
「戦争なんてやめようぜ」
遠く地上では、まだ誰もその音に気づいていない。
だが確かに、
戦の前触れは世界に落とされたのだった。
ゼウスが腕を組む。
「では結論は同じだ」
低く、しかし確かな声。
「人の戦に神は干渉しない」
ガイアがゆっくり頷く。
「大地はまだ崩れていない。恐れはあるけれど、希望もある」
シヴァは椅子の背にもたれながら、軽く笑った。
「珍しく意見が揃った...草なんだが!!(?)」
円卓の空気が少し緩む。
長い議論の末、神々はひとつの答えにたどり着いていた。
——人間に任せる。
その時だった。
カチ。
屋根裏の古い時計が、妙に大きく鳴った。
カチ、カチ……。
ゼウスの眉がわずかに動く。
「……?」
ガイアが床に触れたまま、顔を上げる。
「待って」
空気が変わった。大地を通して伝わる振動が、突然強くなる。
「これは……」
シヴァがゆっくり体を起こした。
「いやいやいやいやいやぁぁぁ」
次の瞬間。
バキッ。
屋根裏の空間が、まるでガラスのように裂けた。
赤黒い亀裂。そこから、重い足音が響く。
ドン。
ドン。
現れたのは、巨大な鎧の神。
血の色を思わせるマントがゆっくり揺れている。戦の匂いが空間に広がった。
ゼウスが低く言う。
「……アレス」
戦争の神は、ゆっくりと円卓を見渡した。
「随分静かな会議だな」
声は落ち着いている。
だが、その背後には無数の戦場の幻影が揺れていた。
燃える街、折れた槍、倒れる兵。
ガイアが冷たく言う。
「ここはあなたの来る場所じゃない」
アレスはわずかに笑う。
「そうか?」
円卓に一歩近づく。
その一歩だけで、床が震えた。
「戦の匂いがした」
シヴァが腕を組む。
「まだ始まってない」
「始まる」
アレスの答えは迷いがない。
ゼウスの声が鋭くなる。
「我らは干渉しないと決めた」
「知っている」
アレスは軽く肩をすくめた。
「だから来た」
神々の間に、短い沈黙が落ちる。アレスは円卓の中央を指でなぞる。
すると、そこに幻影が浮かんだ。
都市、軍隊、怒りに満ちた人の群れ。
「見ろ」
声が低く響く。
「火はもう灯っている」
ガイアが目を細める。
「まだ消せる」
「そうか?」
アレスの視線が鋭くなる。
「人が自分で消すならな」
シヴァが小さく笑う。
「戦を始める...脳筋すぎるだろ」
アレスは少しだけ考えるように黙り、そして言った。
「ならば」
背後の戦場の幻影が膨れ上がる。
「合図だけはしておく」
ゼウスが睨む。
「何をするつもりだ」
アレスは振り返らない。ただ、言葉だけを落とした。
「戦は突然始まらない」
亀裂の中へ戻りながら、最後の声が響く。
「必ず“前触れ”がある」
バキン。
空間が閉じる。時計の音だけが戻る。
カチ。カチ。
ガイアが静かに呟く。
「……始まる」
ゼウスは窓のない空間を見つめる。
「いや」
短く言った。
「まだ始まっていない」
シヴァが肩をすくめる。
「戦争なんてやめようぜ」
遠く地上では、まだ誰もその音に気づいていない。
だが確かに、
戦の前触れは世界に落とされたのだった。
- 1.「人生」
- 2.「奇跡の星」
- 3.「夏紀」
- 4.「とある隣人は」
- 5.「立場」
- 6.徒花の行方
- 7.「幼女は」
- 8.「笑顔」
- 9.「軸柊奏」
- 10.徒花の行方
- 11.「居場所」
- 12.「弦の音」
- 13.「答え」
- 14.「日常編」
- 15.「悩むものか」
- 16.「歪み」
- 17.「信頼」
- 18.「余命」
- 19.「時歌」
- 20.「日常編」
- 21.「神として」
- 22.「忘却列車」
- 23.「微熱」
- 24.「クリスマス」
- 25.「プレゼント」
- 26.「鳴っている」
- 27.「バレンタイン」
- 28.「日常」
- 29.「誰」
- 30.「戦場」
- 31.「アレス」
- 32.「日常編」
- 33.「破会議壊」
- 34.「徒花の行方」
- 35.「戦の予兆」
- 36.「日常編」