蒼の残響が、まだ天井に淡く漂っている。
メロディア・フォルトゥーナは舞台袖で静かに佇んでいた。
フルートを下ろし、結果表示を見つめる。
スクリーンに確定表示が灯る。
【85.2】
場内に小さなどよめき。高得点。現在暫定2位。
メロディアはわずかに目を細める。
「……[小文字]ッチ[/小文字]」
満足でも、歓喜でもない。ただ事実を受け入れる声音。翡翠の視線――トラステが静かに分析する。
ベータは何も言わない。
そして次のアナウンスが響く。
「出場番号、二番。アメスティ・ウィストン」
「え、もう!? ちょ、心の準備が――」
慌てながらも、彼女はピアノへ向かう。今日は独奏。オーボエは置いたまま。椅子にどさっと座り、深呼吸。
「……よし」
鍵盤に指を置く。最初の和音は明るい。
だが軽薄ではない。赤い火花のようなアルペジオが跳ねる。テンポは速い。けれど、乱れてはいない。意外なほど精密なリズム感。
得意のアップテンポのリズムが会場全体を掻き回す。中盤、突然の転調。
長調から短調へ。笑顔の裏に隠していた影が、ふっと滲む。和音の厚みが増す。
左手の低音が力強く鳴った。
衝動型と思われがちな彼女の演奏は、実は大胆な構築を持っていた。テーマは単純。しかし変奏が自由で、予測不能。クライマックスに入り高音域の連打。
「[斜体]これはもう音楽なのか[/斜体]....?」
ベータは頭にはてなを浮かべながらも、アメスティを見つめる。
火花が散るようなトリル。だが最後は、意外にも静かだった。ぽつり、と単音。
まるで夕焼けが夜へ溶ける瞬間。
また激しく動く「静」が「動」に変化した。そして
音が消える。
一拍の沈黙、そして拍手。
表示が点灯する。
【87.2】
「えっ.....」
アメスティの目が丸くなる。
高い。
トラステに僅差で迫る得点。
「……やるじゃない」
舞台袖でベータが小さく呟く。メロディアは無言で見つめる。蒼の瞳に、わずかな興味。
トラステは口角を上げる。
「予測不能。評価軸に揺らぎを与えるタイプか」
アメスティは客席へ向かってにやりと笑う。
「ね? 私だって出来るでしょ」
メロディア・フォルトゥーナは舞台袖で静かに佇んでいた。
フルートを下ろし、結果表示を見つめる。
スクリーンに確定表示が灯る。
【85.2】
場内に小さなどよめき。高得点。現在暫定2位。
メロディアはわずかに目を細める。
「……[小文字]ッチ[/小文字]」
満足でも、歓喜でもない。ただ事実を受け入れる声音。翡翠の視線――トラステが静かに分析する。
ベータは何も言わない。
そして次のアナウンスが響く。
「出場番号、二番。アメスティ・ウィストン」
「え、もう!? ちょ、心の準備が――」
慌てながらも、彼女はピアノへ向かう。今日は独奏。オーボエは置いたまま。椅子にどさっと座り、深呼吸。
「……よし」
鍵盤に指を置く。最初の和音は明るい。
だが軽薄ではない。赤い火花のようなアルペジオが跳ねる。テンポは速い。けれど、乱れてはいない。意外なほど精密なリズム感。
得意のアップテンポのリズムが会場全体を掻き回す。中盤、突然の転調。
長調から短調へ。笑顔の裏に隠していた影が、ふっと滲む。和音の厚みが増す。
左手の低音が力強く鳴った。
衝動型と思われがちな彼女の演奏は、実は大胆な構築を持っていた。テーマは単純。しかし変奏が自由で、予測不能。クライマックスに入り高音域の連打。
「[斜体]これはもう音楽なのか[/斜体]....?」
ベータは頭にはてなを浮かべながらも、アメスティを見つめる。
火花が散るようなトリル。だが最後は、意外にも静かだった。ぽつり、と単音。
まるで夕焼けが夜へ溶ける瞬間。
また激しく動く「静」が「動」に変化した。そして
音が消える。
一拍の沈黙、そして拍手。
表示が点灯する。
【87.2】
「えっ.....」
アメスティの目が丸くなる。
高い。
トラステに僅差で迫る得点。
「……やるじゃない」
舞台袖でベータが小さく呟く。メロディアは無言で見つめる。蒼の瞳に、わずかな興味。
トラステは口角を上げる。
「予測不能。評価軸に揺らぎを与えるタイプか」
アメスティは客席へ向かってにやりと笑う。
「ね? 私だって出来るでしょ」