コンコルディア行き特急列車の車内は、朝だというのにすでに騒がしかった――正確には、一人のせいで騒がしかった。
「ねえねえねえベータ見て!? パンフレットの審査員、全員顔怖くない!? この人絶対減点好きだよ! 減点フェチだよ!」
アメスティ・ウィストンは座席の上に膝立ちになり、資料をばさばさ振り回している。赤いフリルが上下に揺れ、朱色の髪が跳ねる。
「座りなさい」
「はーい……いやでもさ、三か月だよ三か月!? 春から初夏までだよ。そんなに音楽漬けとか、私の集中力もつかな... ねえ!?」
向かいに座るベータ=アッディーオは、窓の外を静かに眺めたまま一言。
「あなたは五分もたないでしょうね」
「ひどっ!!」
がたん、と列車が揺れる。
アメスティは勝手に立ち上がり、通路に出てくるりと一回転。
「でもさでもさ、《コンコルディア国際音律祭》だよ... 世界規模だよ...なんかもう名前からして“ドーン!”って感じ!」
ベータは小さくため息をつく。
「声量を半分に」
「無理!」
開催地――芸術都市コンコルディア。その中心にそびえるコンコルディア大音楽堂。
「うわぁぁぁぁ……ここでやるの!? こんなキラキラなとこで?私転びそう! 絶対階段で転ぶ自信ある」
「転ばないで」
「フリじゃないよね、フリじゃないよね!?」
独奏、即興、そして歌を含む自作曲。
「歌...ちょっと待って私作曲はノリでやるタイプなんだけど!? “えいっ”て感じで出来たのが名曲になるやつ!」
「名曲は偶然では生まれない」
「出たー! 真面目名言」
ベータは静かにチェロケースを撫でる。
「私は、試されに行く」
アメスティは数秒じっと見つめ――
「……かっこいいのやめてくれる?」
「何故」
「私が軽く見えるじゃん!」
列車がトンネルに入る。車内が一瞬暗くなる。
その隣の車両。
白髪の少年――トラステ=バッドイードは静かに座っていた。目を閉じ、演算の海に沈む。
過去データ。
審査傾向・点数分布・最適化
88.9。
高得点。しかし、満点ではない。
“更新”。
彼の内部で静かに回路が再構築される。
その瞬間――
「うわぁっトンネル長っ!? え、これ異世界転移しない!? 大丈夫!?」
隣から聞こえる大声。
トラステのまぶたが、ぴくりと揺れた。
騒音・予測不能・不規則
……ノイズ?いや。未知変数。
トンネルを抜け、光が差す。
アメスティは窓に張りつく。
「見て見て見て! あれじゃない。ドーム! 青いやつ!」
遠くに蒼い屋根が見える。
ベータの水色の瞳が、静かに細められる。
アメスティの栗色の瞳は、きらきらと輝く。
「ねえベータ」
「なに」
「負けたらどうする?」
「負けない」
「いや仮定の話!」
「考えない」
「メンタル強っ!」
そんな他愛のない話をしながら、アメスティは突然両手を広げた。
「よーし決めた! 私、全部かき回す! 即興も! 審査員も、 世界も!」
「迷惑」
「褒め言葉でしょ?」
列車が減速する。
三人の旋律はまだ交わらない。
だが確実に、同じ舞台へ向かっている。
「ねえベータ。会場着いたらさ、まず何する!?」
「練習」
「えー!? 観光! スイーツ! お土産!」
「練習」
「鬼???」
コンコルディアが、目前に迫る。
静かな覚悟。騒がしい決意。
そして、完成を自負する演算。
対立から調和へ?
「いやまずは爆発でしょ!」
アメスティの声が、晴れ始めた空に突き抜けた。
「ねえねえねえベータ見て!? パンフレットの審査員、全員顔怖くない!? この人絶対減点好きだよ! 減点フェチだよ!」
アメスティ・ウィストンは座席の上に膝立ちになり、資料をばさばさ振り回している。赤いフリルが上下に揺れ、朱色の髪が跳ねる。
「座りなさい」
「はーい……いやでもさ、三か月だよ三か月!? 春から初夏までだよ。そんなに音楽漬けとか、私の集中力もつかな... ねえ!?」
向かいに座るベータ=アッディーオは、窓の外を静かに眺めたまま一言。
「あなたは五分もたないでしょうね」
「ひどっ!!」
がたん、と列車が揺れる。
アメスティは勝手に立ち上がり、通路に出てくるりと一回転。
「でもさでもさ、《コンコルディア国際音律祭》だよ... 世界規模だよ...なんかもう名前からして“ドーン!”って感じ!」
ベータは小さくため息をつく。
「声量を半分に」
「無理!」
開催地――芸術都市コンコルディア。その中心にそびえるコンコルディア大音楽堂。
「うわぁぁぁぁ……ここでやるの!? こんなキラキラなとこで?私転びそう! 絶対階段で転ぶ自信ある」
「転ばないで」
「フリじゃないよね、フリじゃないよね!?」
独奏、即興、そして歌を含む自作曲。
「歌...ちょっと待って私作曲はノリでやるタイプなんだけど!? “えいっ”て感じで出来たのが名曲になるやつ!」
「名曲は偶然では生まれない」
「出たー! 真面目名言」
ベータは静かにチェロケースを撫でる。
「私は、試されに行く」
アメスティは数秒じっと見つめ――
「……かっこいいのやめてくれる?」
「何故」
「私が軽く見えるじゃん!」
列車がトンネルに入る。車内が一瞬暗くなる。
その隣の車両。
白髪の少年――トラステ=バッドイードは静かに座っていた。目を閉じ、演算の海に沈む。
過去データ。
審査傾向・点数分布・最適化
88.9。
高得点。しかし、満点ではない。
“更新”。
彼の内部で静かに回路が再構築される。
その瞬間――
「うわぁっトンネル長っ!? え、これ異世界転移しない!? 大丈夫!?」
隣から聞こえる大声。
トラステのまぶたが、ぴくりと揺れた。
騒音・予測不能・不規則
……ノイズ?いや。未知変数。
トンネルを抜け、光が差す。
アメスティは窓に張りつく。
「見て見て見て! あれじゃない。ドーム! 青いやつ!」
遠くに蒼い屋根が見える。
ベータの水色の瞳が、静かに細められる。
アメスティの栗色の瞳は、きらきらと輝く。
「ねえベータ」
「なに」
「負けたらどうする?」
「負けない」
「いや仮定の話!」
「考えない」
「メンタル強っ!」
そんな他愛のない話をしながら、アメスティは突然両手を広げた。
「よーし決めた! 私、全部かき回す! 即興も! 審査員も、 世界も!」
「迷惑」
「褒め言葉でしょ?」
列車が減速する。
三人の旋律はまだ交わらない。
だが確実に、同じ舞台へ向かっている。
「ねえベータ。会場着いたらさ、まず何する!?」
「練習」
「えー!? 観光! スイーツ! お土産!」
「練習」
「鬼???」
コンコルディアが、目前に迫る。
静かな覚悟。騒がしい決意。
そして、完成を自負する演算。
対立から調和へ?
「いやまずは爆発でしょ!」
アメスティの声が、晴れ始めた空に突き抜けた。