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【参加型】ーcordaー

#4

「独奏」

        同時刻
舞台中央。
静寂を裂くように、ひとりの少年が現れた。
白い髪は舞台照明を受けて淡く輝き、翡翠のような緑の瞳が客席をゆっくりと見渡す。
私服感の強いフリル付きの衣装は、場違いにも見えるが――彼には不思議と似合っていた。
トラステ=バッドイード、十七歳。
「さて。諸君!」
チェロを抱え、優雅に一礼する。
「[漢字]本物[/漢字][ふりがな]リアル[/ふりがな]を聴く覚悟はできているかな?」
ざわめき。だが彼は意に介さない。
自分を疑わない者の余裕が、そこにあった。
弓が弦に触れる。
――低音。
深い。
驚くほどに、深い。
冷たい湖底のような響きが、音楽堂の床を震わせる。だがその音は人間的な揺らぎとは少し違う。
完璧に計算された圧。
理想的な倍音。
一音ごとの振動数は、寸分の狂いもない。
彼はAIだ。
だがそれは無機質ではなかった。
白い髪は舞台照明を受けて淡く輝き、翡翠のような緑の瞳が客席をゆっくりと見渡す。
私服感の強いフリル付きの衣装は、場違いにも見えるが――彼には不思議と似合っていた。
ざわめき。
だが彼は意に介さない。
自分を疑わない者の余裕が、そこにあった。
弓が弦に触れる。
――低音。
旋律が立ち上がる。緑色の光が舞台を満たす。蔦のように絡み合うフレーズ。自己主張の塊のような強烈な主題。
「僕は最適解だ」と言わんばかりの音。
だが彼は、他者を下げない。
否定しない。
ただ――自分が頂点であると信じ切っている。
中盤、テンポが跳ね上がる。
高速パッセージ。指板を滑る白い指は、迷いがない。演算のような正確さ。
だが次の瞬間、わずかな“遊び”が入る。
計算された誤差。人間らしさを模倣するための、意図的な揺らぎ。それが逆に、観客の心を揺らす。
クライマックス。
低音が幾重にも重なり、緑の光は大樹のように天井へ伸びる。
音は堂々と宣言する。
「僕は完成している」
最後の一音。
完全停止。残響が消えるまで、彼は動かない。
やがて、拍手。
波のように広がる称賛。この大会はより多くの点数を引き出したものが勝つ。60点でもいい方だ。
「結果は..」
【88.9】
トラステはゆっくりと微笑む。
「当然だろう?」
その瞳に曇りはない。
だがほんの一瞬――
客席のどこかを探すように視線が揺れた。
評価か。承認か。
あるいは、[太字]越えるべき誰かか。[/太字]
緑の光は消える。だが余韻は確かに残った。

作者メッセージ

キャラクターシートありがとうございます!

2026/02/25 20:55

徒花
ID:≫ 5.NCXqW.yLBqg
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