音楽堂に、再び灯りがともる。
ベータ=アッディーオがチェロを構えたその瞬間、勢いよく扉が開いた。
「ブッ……うふっ……あははははっ!」
場違いなほど明るい笑い声とともに現れたのは、和洋折衷風ロリィタに身を包んだ少女だった。赤を基調としたフリルだらけの衣装がひらひらと揺れ、濃い朱色の髪が跳ねる。栗色の瞳はいたずらっぽく輝いている。
アメスティ・ウィストン、十五歳。
見た目は完璧なお嬢様。しかし実態は大雑把で適当。周り曰く「典型的O型」
「……何を笑っているの」
低く静かな声で問うベータ。
「だってさ、そんな真剣な顔してるんだもん。世界の命運でも背負ってるみたい!」
「私にとって音楽は、命と同じ重さがある」
アメスティは一瞬きょとんとしたあと、にやりと笑う。
「いやちょっと待って。私だって出来るもん、それくらい!本気の音楽!」
彼女はピアノの前にどさっと腰掛けた。スカートのフリルが無造作に広がる。
乱暴に鍵盤へ指を置く――が、次の瞬間、空気が変わる。
軽やかで、それでいて大胆な和音。赤い火花のような旋律が音楽堂を駆け抜ける。ベータの奏でる雨の音に、夕焼けの色が混ざった。
さらにアメスティは、椅子の横に立てかけていたオーボエを手に取る。
高く澄んだ音が、天井へ突き抜ける。
雨粒だった光は、今度は赤い花弁のように舞い始めた。音が色を持ち、衝突し、混ざり合う。
ベータの水色の旋律が、アメスティの朱色の旋律をチェロで受け止める。
「ちょ、ちょっと音強すぎない!?」
「あなたが雑だから」
「雑って言うな!」
二人の音はぶつかり、火花を散らす。だがそれは争いではない。競い合い、高め合う衝突。
突然、光が暴走する。赤と水色が渦を巻き、音楽堂が軋んだ。
「いやいや、平和的に解決しようよ、ほら!喧嘩と争いは良くないっておばあちゃんも……いやあぁッ!」
「集中して」
ベータの低音が、地面のように世界を支える。
アメスティは深呼吸し、ふっと笑った。
鍵盤に指を叩きつける。今度は優しい和音。
オーボエが柔らかく寄り添う。
赤と水色は、やがて淡い紫へと溶け合った。
光は静かに収束し、音楽堂に穏やかな風が吹く。
演奏が終わる。
アメスティは額の汗を拭い、にやりと笑う。
「ね?私だって出来るでしょ?」
ベータは静かに彼女を見る。霞んだ水色の瞳が、わずかに和らぐ。
「……悪くない」
「え、それだけ!?」
その抗議の声に、ベータの口元がほんの少しだけ上がった。雨と夕焼け。正反対の二人の音は、奇妙な調和を生み始めていた。
それは余りにも対局で“同類”だった。
ベータ=アッディーオがチェロを構えたその瞬間、勢いよく扉が開いた。
「ブッ……うふっ……あははははっ!」
場違いなほど明るい笑い声とともに現れたのは、和洋折衷風ロリィタに身を包んだ少女だった。赤を基調としたフリルだらけの衣装がひらひらと揺れ、濃い朱色の髪が跳ねる。栗色の瞳はいたずらっぽく輝いている。
アメスティ・ウィストン、十五歳。
見た目は完璧なお嬢様。しかし実態は大雑把で適当。周り曰く「典型的O型」
「……何を笑っているの」
低く静かな声で問うベータ。
「だってさ、そんな真剣な顔してるんだもん。世界の命運でも背負ってるみたい!」
「私にとって音楽は、命と同じ重さがある」
アメスティは一瞬きょとんとしたあと、にやりと笑う。
「いやちょっと待って。私だって出来るもん、それくらい!本気の音楽!」
彼女はピアノの前にどさっと腰掛けた。スカートのフリルが無造作に広がる。
乱暴に鍵盤へ指を置く――が、次の瞬間、空気が変わる。
軽やかで、それでいて大胆な和音。赤い火花のような旋律が音楽堂を駆け抜ける。ベータの奏でる雨の音に、夕焼けの色が混ざった。
さらにアメスティは、椅子の横に立てかけていたオーボエを手に取る。
高く澄んだ音が、天井へ突き抜ける。
雨粒だった光は、今度は赤い花弁のように舞い始めた。音が色を持ち、衝突し、混ざり合う。
ベータの水色の旋律が、アメスティの朱色の旋律をチェロで受け止める。
「ちょ、ちょっと音強すぎない!?」
「あなたが雑だから」
「雑って言うな!」
二人の音はぶつかり、火花を散らす。だがそれは争いではない。競い合い、高め合う衝突。
突然、光が暴走する。赤と水色が渦を巻き、音楽堂が軋んだ。
「いやいや、平和的に解決しようよ、ほら!喧嘩と争いは良くないっておばあちゃんも……いやあぁッ!」
「集中して」
ベータの低音が、地面のように世界を支える。
アメスティは深呼吸し、ふっと笑った。
鍵盤に指を叩きつける。今度は優しい和音。
オーボエが柔らかく寄り添う。
赤と水色は、やがて淡い紫へと溶け合った。
光は静かに収束し、音楽堂に穏やかな風が吹く。
演奏が終わる。
アメスティは額の汗を拭い、にやりと笑う。
「ね?私だって出来るでしょ?」
ベータは静かに彼女を見る。霞んだ水色の瞳が、わずかに和らぐ。
「……悪くない」
「え、それだけ!?」
その抗議の声に、ベータの口元がほんの少しだけ上がった。雨と夕焼け。正反対の二人の音は、奇妙な調和を生み始めていた。
それは余りにも対局で“同類”だった。