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ー人生ー

#28

「日常」

雲の上のお茶会が終わり、スペルは地上へと戻った。空気が違う。
重い。湿っている。生きている。
軸柊奏の玄関を開けると、すぐに匂いがした。
鼻に残る匂いだ。
「……嫌な予感(三回目)」
台所から煙。
そして——
「スペルおかえりー!」
元気な声。弦音だ。
鍋の前で、晴馿が腕を組み、夏紀が慌てて布巾を振り、佳世が真剣な顔で何かを混ぜている。
「なにしてる」
「実験!」
「料理だよ!」
「検証だ」
『おいしくなるはずです』
四者四様の答え。
スペルは静かに天を仰いだ。
「…人生が愚かなものに思えてきた
鍋の中を覗く。謎の色。
「これ何味」
「愛情味」
「理論上はカレー」
「理論って言葉が死ぬぞ」
佳世が不安そうに見上げる。
『だめ、ですか?』
スペルは一瞬だけ、雲の上の円卓を思い出した。
“共有される時間”。
「……食べる」
「勇者だ」
「神だろ」
一口。
全員が固まる。
「……」
「……」
「……」
「……案外いける」
「嘘つけ!」
「ほんとだって。辛いけど」
佳世の顔がぱあっと明るくなる。
『ほんとうですか』
「うん。ちょっと辛いけど」
「それ失敗では」
「でも、みんなで作った味」
その言葉で、場の空気が少し変わった。
夜。
屋根裏。
弦音が弦を弾く。
——ン。
「最近、静かだね」
「うん」
「未確定、来ないね」
「ゼウスとガイアが本気出したから」
弦音はくすっと笑う。
「違うよ」
「……?」
「あなたが、“抱えた”から」
スペルは少し黙る。
「抱えるってさ」
「重いよ?」
「うん」
「でもね」
弦音は月を見上げる。
「空っぽよりは、音がする方がいい」
スペルは、そっと屋根裏の床に座る。
「弦音」
「なに」
「あなたはさ」
「うん」
「止まった時計?」
弦音は少し考えたあと、首を振った。
「違うよ」
「私は、“鳴らなかった音の記録”」
「鳴らなかった?」
「うん。でも、あなたが聞いた瞬間、鳴った」
スペルは目を細める。
「人生ってさ」
弦音が続ける。
「完成形じゃないよ」
「未完成のまま、誰かの中で残るもの」
静かな夜。
遠くで、誰かが笑っている声。
それが家族なのか、通りすがりなのか分からない

作者メッセージ

360いったら参加型しようかな٩( ᐛ )و

2026/02/18 20:39

徒花
ID:≫ 5.NCXqW.yLBqg
コメント

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創作長期ファンタジー天文

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