文字サイズ変更

ーαστέριー

#24

「あの時も」

地下室に、まだ微かな熱が残っている。
装置は沈黙していたが、完全停止ではない。
不規則な、しかし確かな揺らぎ。
七。
六。
八。
ミュトスは懐中時計を握る。
規則正しい鼓動。
——あの日も、同じ音だった。

幼い頃、彼女は父の書斎に忍び込んだ。
分厚い星図。難解な数式。
そして机の上に置かれた、この時計。
「世界は整っている」
父は言った。
「だから理解できる」
けれど、ミュトスは窓の外を見ていた。
雲は崩れ、風は曲がり、星は瞬く。整いきっていない。だから、美しい。
父は笑った。
「歪みは誤差だ」
その言葉が、ずっと引っかかっていた。
でもそれは時にとても面白くない言葉で、時に誰よりも安定を祈る言葉だった。幼いミュトスは家柄完璧な人間として育ってきた。圧倒的な経験と冷静な知性を兼ね備えている。だから意味も知らずにこうかえす。
「誤差は悪い事ではないのでしょう?」

地下室に戻る。
「未来側、安定持続してます」
リトスの声が少し震える。
ジニアスは壁にもたれたまま言う。
「なあ……俺たち、歴史変えたのか?」
アトミスは静かに首を振る。
「変えたのではない。揺らがせた」
メイが小さく笑う。
「完成を壊したんじゃなくて、完成を止めたのよ」
ミュトスは目を閉じる。
未来の自分の表情がよみがえる。
安堵と、少しの寂しさ。
——並びましょう。
あの言葉の意味が、今ならわかる。今だからわかる。

作者メッセージ

( ͡° ͜ʖ ͡°)

2026/02/17 18:53

徒花
ID:≫ 5.NCXqW.yLBqg
コメント

この小説につけられたタグ

天文貴族価値観

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権は徒花さんに帰属します

TOP