地下室に、まだ微かな熱が残っている。
装置は沈黙していたが、完全停止ではない。
不規則な、しかし確かな揺らぎ。
七。
六。
八。
ミュトスは懐中時計を握る。
規則正しい鼓動。
——あの日も、同じ音だった。
幼い頃、彼女は父の書斎に忍び込んだ。
分厚い星図。難解な数式。
そして机の上に置かれた、この時計。
「世界は整っている」
父は言った。
「だから理解できる」
けれど、ミュトスは窓の外を見ていた。
雲は崩れ、風は曲がり、星は瞬く。整いきっていない。だから、美しい。
父は笑った。
「歪みは誤差だ」
その言葉が、ずっと引っかかっていた。
でもそれは時にとても面白くない言葉で、時に誰よりも安定を祈る言葉だった。幼いミュトスは家柄完璧な人間として育ってきた。圧倒的な経験と冷静な知性を兼ね備えている。だから意味も知らずにこうかえす。
「誤差は悪い事ではないのでしょう?」
地下室に戻る。
「未来側、安定持続してます」
リトスの声が少し震える。
ジニアスは壁にもたれたまま言う。
「なあ……俺たち、歴史変えたのか?」
アトミスは静かに首を振る。
「変えたのではない。揺らがせた」
メイが小さく笑う。
「完成を壊したんじゃなくて、完成を止めたのよ」
ミュトスは目を閉じる。
未来の自分の表情がよみがえる。
安堵と、少しの寂しさ。
——並びましょう。
あの言葉の意味が、今ならわかる。今だからわかる。
装置は沈黙していたが、完全停止ではない。
不規則な、しかし確かな揺らぎ。
七。
六。
八。
ミュトスは懐中時計を握る。
規則正しい鼓動。
——あの日も、同じ音だった。
幼い頃、彼女は父の書斎に忍び込んだ。
分厚い星図。難解な数式。
そして机の上に置かれた、この時計。
「世界は整っている」
父は言った。
「だから理解できる」
けれど、ミュトスは窓の外を見ていた。
雲は崩れ、風は曲がり、星は瞬く。整いきっていない。だから、美しい。
父は笑った。
「歪みは誤差だ」
その言葉が、ずっと引っかかっていた。
でもそれは時にとても面白くない言葉で、時に誰よりも安定を祈る言葉だった。幼いミュトスは家柄完璧な人間として育ってきた。圧倒的な経験と冷静な知性を兼ね備えている。だから意味も知らずにこうかえす。
「誤差は悪い事ではないのでしょう?」
地下室に戻る。
「未来側、安定持続してます」
リトスの声が少し震える。
ジニアスは壁にもたれたまま言う。
「なあ……俺たち、歴史変えたのか?」
アトミスは静かに首を振る。
「変えたのではない。揺らがせた」
メイが小さく笑う。
「完成を壊したんじゃなくて、完成を止めたのよ」
ミュトスは目を閉じる。
未来の自分の表情がよみがえる。
安堵と、少しの寂しさ。
——並びましょう。
あの言葉の意味が、今ならわかる。今だからわかる。