地下室の装置は、低く規則的な唸りを保っていた。
一・二秒。こちらの周期。
一秒。向こうの周期。
半拍の差は、もう揺らがない。崩壊も融合も起こらず、ただ二つの時間が並走している。
「安定しています……」
リトスが計器を見つめながら呟く。石壁の亀裂は止まり、懐中時計も正しい鼓動に戻っていた。
未来から七回の信号が届く。以前より速いが、もう追いつこうとはしない。重なれば壊れると、向こうも理解したのだ。
ミュトスは静かに言う。
「未来を救うのではありません」
アトミスが視線を向ける。
「では、何をする」
「固定させない」
未来の塔は、恐れて立ち止まり、不完全な接続を続けた。その歪みが崩壊を招いた。完成を求め、止まったことが原因だった。
「私たちは止まりません。完成もしません」
メイが小さく笑う。
「未完成を選ぶわけだ」
「はい。流れ続けることが、安定です」
装置は脈打つ。向こうも応答する。触れない。だが断たれもしない。距離ではなく、関係としての時間差。
ジニアスが空を仰ぐ。
「未来より先に進めばいいんですね」
「ええ。でも追い越しません。並び続けます」
星は沈黙している。けれど今、その沈黙は空白ではない。半拍の差を抱えた二つの世界が、同時に息をしている。
ミュトスは懐中時計を握りしめ、静かに微笑んだ。
「――まだ途中です」
━────── •●• ──────━
拝啓、ミュトスへ
元気にやっていると研究所の方々から聞きました。私は貴方の両親であることを光栄に思い、今日もまた過ごしていきます。アトミスさんは、何やらこの研究の説明をしてくれたのだけど、難しい事ということだけ理解できたわ。いつでもお気軽に帰ってきてください。貴方が幸せである事を願っています。
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一・二秒。こちらの周期。
一秒。向こうの周期。
半拍の差は、もう揺らがない。崩壊も融合も起こらず、ただ二つの時間が並走している。
「安定しています……」
リトスが計器を見つめながら呟く。石壁の亀裂は止まり、懐中時計も正しい鼓動に戻っていた。
未来から七回の信号が届く。以前より速いが、もう追いつこうとはしない。重なれば壊れると、向こうも理解したのだ。
ミュトスは静かに言う。
「未来を救うのではありません」
アトミスが視線を向ける。
「では、何をする」
「固定させない」
未来の塔は、恐れて立ち止まり、不完全な接続を続けた。その歪みが崩壊を招いた。完成を求め、止まったことが原因だった。
「私たちは止まりません。完成もしません」
メイが小さく笑う。
「未完成を選ぶわけだ」
「はい。流れ続けることが、安定です」
装置は脈打つ。向こうも応答する。触れない。だが断たれもしない。距離ではなく、関係としての時間差。
ジニアスが空を仰ぐ。
「未来より先に進めばいいんですね」
「ええ。でも追い越しません。並び続けます」
星は沈黙している。けれど今、その沈黙は空白ではない。半拍の差を抱えた二つの世界が、同時に息をしている。
ミュトスは懐中時計を握りしめ、静かに微笑んだ。
「――まだ途中です」
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拝啓、ミュトスへ
元気にやっていると研究所の方々から聞きました。私は貴方の両親であることを光栄に思い、今日もまた過ごしていきます。アトミスさんは、何やらこの研究の説明をしてくれたのだけど、難しい事ということだけ理解できたわ。いつでもお気軽に帰ってきてください。貴方が幸せである事を願っています。
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