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ーαστέριー

#5

「答えを知りうるまで」

ミュトスはもう一度、望遠鏡を覗き込んでいた。深い闇が星々の間に広がり、その中に何かが隠れていることを感じながら。しかし、心のどこかで、もう一歩先へ進む勇気が持てなかった。代わりに、静かな決断が彼女の心に芽生えていた。
「もう、帰らなきゃ」
彼女は小さく呟き、望遠鏡から顔を離した。アトミスがその言葉を聞いて、ゆっくりと顔を上げる。
「帰るのか?」
彼は少し驚いたように言ったが、その表情にはどこか理解を示す優しさがあった。
ミュトスは頷いた。
「家に帰って、少し考えないと。今日はたくさん学びました。でも、ここで全てを決めることはできない」
ジニアスも少し寂しそうに眉をひそめたが、すぐににっこりと笑う。
「そうだね、焦る必要はないさ。君には考える時間が必要だ」彼は軽く肩をすくめた。
リトスがその言葉に続けて、やや心配そうに言った。
「気をつけて帰ってくださいね。外は冷え込んでいますから」
「ありがとうございます」
ミュトスは微笑んで、頭を下げた。
アトミスが静かに一歩踏み出すと、ミュトスに向かって言った。
「君の決断を尊重する。しかし、あの沈黙を忘れないでほしい。あれは、ただの闇ではない。君にはその意味を知る力がある」
「わかっています」
ミュトスは深く頷き、息をひとつついた。
「[太字]私はそれでも知りたい[/太字]」
その言葉を残し、ミュトスは研究室の扉を開けて外に出た。冷たい夜の空気が彼女を迎え、ひんやりとした風が髪を揺らす。振り返ることなく、馬車が待つ場所へと足を進めた。
馬車に乗り込み、扉が閉まると、静かな夜の中で街の灯りがゆっくりと通り過ぎていった。遠くには星々が輝き、今もその沈黙の中で何かを語りかけているように感じる。しかし、ミュトスはその言葉を今は聞かないことに決めた。
家へ帰る道のりの中で、彼女の心は揺れ動いていた。まだわからないことが多すぎる。あの沈黙の先に何があるのか、なぜそれが語られないのか。彼女はその答えを見つけるために、もう少しだけ時間が必要だった。
家に着くと、両親が温かく迎えてくれた。
「おかえり、ミュトス」
父が微笑んで言った。
「どうだった?」
母は心配そうに尋ねた。
ミュトスは少しだけ間をおいて、ゆっくりと答える。
「…面白いことを学びました」
彼女は微笑んだが、その目は少し遠くを見つめていた。母はほっとした表情を浮かべて、優しく言った。
「それならよかったわね」
「でも、今日はちょっと疲れたかもしれない」
ミュトスは言いながら、部屋に向かって歩き出した。部屋に入ると、机の上に広げられた星の本が目に入った。彼女はその本を手に取り、ページをめくりながら、今夜の出来事を反芻していた。研究室で見た星図、そしてあの「沈黙」の場所。あれが何を意味するのか、まだ分からない。でも、確かにその先には何かがある。
彼女は本を閉じ、窓を開けて夜空を見上げた。星々が静かに輝き、あの沈黙の先に待っているものを、心の中で確かめるように感じていた。
「私は、行きたい」
静かに呟きながら、ミュトスは眠りについた。

作者メッセージ

20回視聴ありがとうございます。

2026/02/11 10:52

徒花
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