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ー人生ー

#24

「クリスマス」

軸柊奏に、季節外れの冷気が入り込んだのは、朝だった。窓の外に広がる白い息と、曇った空。カレンダーの端に、赤い文字で書かれた日付がある。
「……クリスマス、か」
スペルは呟く。神にとっては意味の薄い記号。だが、この家では違う。
「今日はね、ケーキを作る日なんだよ」
夏紀が、まだ完全ではない声で言った。熱は下がったが、無理はできない。それでも目だけは、妙に楽しそうだった。
「……作る、の?」
佳世が恐る恐る聞く。弦音はソファの背から顔を出し、
「そう! 生きてる人間の重要イベントその①だよ!」
「適当言うな」
晴馿が即座に遮る。台所は、いつもより少し賑やかだった。泡立て器、ボウル、粉糖。甘い匂いが、家の中に広がる。佳世は、卵を割る係だった。
小さな手で、慎重に。
「……できました」
殻は入っていない。それだけで、全員が少し驚く。
「上手じゃん」
スペルが言うと、佳世は耳まで赤くなった。
「……ありがとう、ございます」
混ぜる、焼く、冷ます。
完成したケーキは、少し歪だった。
だが、誰も笑わない。
「……ろうそく、立てよう」
夏紀が言い、火を灯す。
揺れる光。白いクリームに映る、小さな炎。
「願い事、していい?」
佳世が聞く。
「いいよ」
「……じゃあ」
佳世は目を閉じる。
火を吹き消す音。
その瞬間、スペルの胸の奥で、何かが小さく鳴った。止まらない時計の中で、
確かに、今が刻まれた気がした。

作者メッセージ

インフルで数日間登校が遅れるかもしれません
m(_ _)m

2026/02/09 20:48

徒花
ID:≫ 5.NCXqW.yLBqg
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創作長期ファンタジー天文

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