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ー人生ー

#19

「時歌」

告知室を出た後、三人は屋上にいた。
夕焼けが病院の白を、柔らかく染めている。
「ねえ」
竭綺歌が言う。
「私、怖くないって言ったら、嘘になる」
「……うん」
夏紀は頷く。
「でもね」
竭綺歌は胸に手を当てる。
「終わりが見えたら、急に“今”が大きくなった」
スペルは黙って聞いていた。
神の視点では、三ヶ月は瞬きほどだ。
だが、人間にとっては、人生そのものになり得る。
「私、歌が好きなの」
竭綺歌は空を見る。
「上手じゃないけど、歌うとね……生きてるって分かる」
「じゃあ、歌えばいい」
スペルは静かに言った。
「三ヶ月、全部」
夏紀が驚いたように振り返る。
「……そんな簡単に言う?」
「簡単じゃない」
スペルは否定する。
「でも、残された時間は“選べる”」
竭綺歌は目を見開き、それから笑った。
「神様みたいな言い方」
「違う」
「私はただ、見届ける側」
風が吹く。
夕焼けが夜へと沈み始める。
「ねえスペル」
竭綺歌が聞く。
「私の人生、ちゃんと鳴りますか?」
スペルは一瞬、言葉を失い——
それでも答えた。
「もう鳴ってる」
「私と夏紀が、聞いてる」
誰に届かなくてもいい声。
それでも確かに、時間の中に残る音。
「あぁ思い出した、私って歌手になりたかったんだ」
それがどのような意味を持っているのかなんて分からないけど、確かにその言葉には熱がこもっていた。
「なら歌わせて、余命がわかってからずっと作詞してたんだ」
「もっと綺麗なことがあるよ」素敵な言葉で
君は励ましてたなんて 知らないから
そっと否定できない“為”を
僕の為だけに包んであげたいから
そうだ その為の呼吸なんだ」
そっと掠れた声でトキは歌った。声が出なくなっても歌い続けた。
「良い歌じゃない(笑)」
夏紀はそう言って笑った。
繋がれている心拍数が極限まで下がっていく。
「また、いつか」
トキはそう言う。
『さようなら』「じゃあね」
2人の声が重なると同時に聞きたくなかった音が鳴り始める。
      ピー ピーッ
忘れないように教えてくれた歌を夏紀は口ずさむ。
人はいつしか死ぬ。それは短くとも長くとも、その時は明確にやってくる。
「だから“今”の時間を見なきゃいけないんだね」
そう呟いた言葉は病室の窓から外へ、秋の風がふわりと運んでいった

作者メッセージ

この物語でも人は死にます_:(´ཀ`」 ∠):
歌は私が考えたものです。
フルversion
「為」
誰かの不幸を酸素に 水の中で息をする
君がくれた安堵で 人の中を泳いでいく
誰かの不安を暖炉に 水の中に暖かさを
君がくれた炭素で 今日もまた沈んでく
不確定な収率で日々を成して
笑えない調律で響き無しで
上部だけの詩を誰かのために歌うのだろうか
「もっと綺麗なことがあるよ」素敵な言葉で
君は励ましてたなんて 知らないから
そっと否定できない“為”を
僕の為だけに包んであげたいから
そうだ その為の呼吸なんだ
誰かの愚行を酸素に 水の中で息をする
君がくれた感情で 人の中を泳いでいく
誰かの巡航をに藍情に 水の中に暖かさを
君がくれた愛想で 今日もまた沈んでく
不確定な収率で日々を成して
笑えない調律で響き無しで
上部だけの詩を誰かのために歌うのだろうか
「きっと良いことがあるよ」優しいな言葉で
君は励ましてたなんて 知らないから
さっと隠した“為”
僕の為だけに包んであげたいから 嗚呼
「もっと綺麗なことがあるよ」素敵な言葉で
君は励ましてたなんて 知らないから
そっと否定できない“為”を
僕の為だけに包んであげたいから
そうだ その為の僕なんだ
誰かの不幸を酸素に 水の中で息をする
君がくれた安堵で 人の中を泳いでいく
貴方の逆流を糧に僕は生きてたんだ

2026/02/06 18:54

徒花
ID:≫ 5.NCXqW.yLBqg
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創作長期ファンタジー天文

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