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ー人生ー

#17

「信頼」

屋根裏に残った歪みは、完全には消えていなかった。
弦音が弦から手を離しても、空間の“裏側”がざらついている。
「……まだいる」
スペルも感じていた。それは敵意ではない。
判断を保留された何かが、こちらを測っている感覚。
『観測対象、再照合』
空間が裂ける。だが、今回は違った。
    ——ズン。
重力が一段、深くなる。
「下がれ、スペル」
低く、揺るがない声。
裂け目の前に立ったのはゼウスだった。
雷霆の気配は抑えられているが、存在そのものが“楔”になっている。
「ここは管理区域だ」
「未確定の可能性が触れていい場所じゃない」
『主神による介入を確認』
次の瞬間、床が“脈打った”。
「……遅れてごめんなさい」
壁から、天井から、床から。柔らかく、しかし確実に世界が編まれ直される。ガイアだった。
「この家、この星、この時間」
「全部、私の管轄よ」
裂け目が、悲鳴のような振動を返す。
『——管理者、複数』
「当然でしょ」
ガイアは穏やかに笑う。
「この子は、一人で背負わせる存在じゃない」
ゼウスが一歩前に出る。
「スペル」
「お前も俺らと同じ最も強い神だ」
「その力は守るべきところで使え」
雷が、鳴らない雷として落ちる。破壊ではなく、封印。ガイアが手を重ねる。
「未確定の可能性は、私が抱く」
「回収はさせない」
裂け目は、ゆっくりと縫い閉じられた。
最初から存在しなかったかのように。静寂。
弦音が小さく息を吐く。
「……強いね、親世代」
ゼウスは肩をすくめた。
「守るのは仕事だ」
「だが、答えを出すのはお前だ、スペル」
ガイアは優しく言う。
「迷っていい」
「でも、ここまでしたんだから親孝行ぐらいはあっても良いんじゃない?」
茶化すようにそう聞く。
「いや、私お前よりも早く生まれてきたから」
二柱の神が去った後、
屋根裏には、何事もなかった夜が戻る。
それでも——
一本の弦は、確かに“守られた音”で震えていた。

作者メッセージ

ちーず

2026/02/06 06:55

徒花
ID:≫ 5.NCXqW.yLBqg
コメント

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創作長期ファンタジー天文

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