人には誰しも悩みがある、それは人間も神も同じだ。それは合理的人間も同じだ。
「誰か一緒に夏祭りいこうぜ」
普段の晴馿からは考えられない言葉が出た。
『せいろさん...急にどうしたのですか?』
つかさず佳世が聞き返す。
「ちょっと悩みを解消に」
「でも、今日私と佳世、弦音はやることがあるわ」
最近は嫌な予感だらけだな。
スタタタッー
「おいスペル、俺を置いて逃げるな」
ソーシャルディスタンスの十倍の距離に逃げる。
「まあせっかくだし言ってあげようよ〜!」
自分は行かないからと弦音は後押しする。
「じゃあ明日決定な」
・・・・・━━━━━━夏祭り当日━━━━━・・・・・❦
軸柊奏の玄関は、いつもより少し騒がしかった。外から流れてくる太鼓の音と、甘ったるい屋台の匂いが、家の中まで入り込んでくる。
スペルは鏡の前で浴衣の帯を直しながら、わかりやすく眉をひそめていた。
何度結び直しても、どこか落ち着かない。
「……なんで私まで行く流れになるの」
ぽつりと零した言葉に、背後から即答が返る。
「厄払いだ」
晴馿は淡々と草履を履きながら言った。
「悩みを抱えた存在が非日常空間に身を置くことで、精神的負荷が軽減される可能性が高い」
「可能性で人生を動かすな」
「人生は選択と統計の集合体だ」
言い返そうとした、その時。
「ねえねえ」
天井から顔を出した弦音が、にやにやしながら言った。
「神ってさ、祭り行くとテンション上がるタイプ?」
「上がらない」
「嘘だね」
弦音は満足そうに頷き、ひらひらと手を振る。
「いってらっしゃーい。迷子にならないでね」
その言葉を最後に、弦音は姿を消した。
こうして半ば強制的に、スペルと晴馿は祭りへ向かうことになった。
提灯の光が連なり、人の波がゆっくりと流れている。
その賑やかさに、スペルは思わず目を細めた。
「……うるさい」
「それが祭りだ」
「知ってる」
金魚すくいの前で足が止まる。
覗き込むように水槽を見るスペルに、晴馿が即座に釘を刺す。
「神の力は禁止だ」
「使わないってば」
——結果、紙は開始三秒で破れた。
金魚は優雅に泳ぎ去る。まるで見下すかのように
「こんな奴一発ボカンなのに……納得いかない」
「水圧と紙質の問題だ」
「言い方が理系すぎる」
焼きそばを買い、人混みから少し外れた場所で並んで食べる。
風に乗って花火の火薬の匂いがした。
「あっそういえば悩み消えたか」
晴馿は悩む、何か悩んでいると言う感覚が心を埋め尽くしている。言葉にできるものではないなら、説明できやしない。
「悩みって、そんな簡単に消えるもんじゃないか」
唐突な問いに、晴馿は少し考える。
その瞬間、花火が夜空を割った。
ドン、という音に、スペルは思わず肩を跳ねさせる。
「うぉ!」
「ビビリがw」
「お前もボカンと一発かましてやろうか」
晴馿は何も言わず、一歩前に立った。
音は変わらないが、不思議と落ち着く。
夜空に広がる光を見上げながら、スペルは小さく息を吐いた。
悩みは消えない。
答えも、まだない。
「また来ような、今度は夏紀も佳世も弦音もつれて」
「誰か一緒に夏祭りいこうぜ」
普段の晴馿からは考えられない言葉が出た。
『せいろさん...急にどうしたのですか?』
つかさず佳世が聞き返す。
「ちょっと悩みを解消に」
「でも、今日私と佳世、弦音はやることがあるわ」
最近は嫌な予感だらけだな。
スタタタッー
「おいスペル、俺を置いて逃げるな」
ソーシャルディスタンスの十倍の距離に逃げる。
「まあせっかくだし言ってあげようよ〜!」
自分は行かないからと弦音は後押しする。
「じゃあ明日決定な」
・・・・・━━━━━━夏祭り当日━━━━━・・・・・❦
軸柊奏の玄関は、いつもより少し騒がしかった。外から流れてくる太鼓の音と、甘ったるい屋台の匂いが、家の中まで入り込んでくる。
スペルは鏡の前で浴衣の帯を直しながら、わかりやすく眉をひそめていた。
何度結び直しても、どこか落ち着かない。
「……なんで私まで行く流れになるの」
ぽつりと零した言葉に、背後から即答が返る。
「厄払いだ」
晴馿は淡々と草履を履きながら言った。
「悩みを抱えた存在が非日常空間に身を置くことで、精神的負荷が軽減される可能性が高い」
「可能性で人生を動かすな」
「人生は選択と統計の集合体だ」
言い返そうとした、その時。
「ねえねえ」
天井から顔を出した弦音が、にやにやしながら言った。
「神ってさ、祭り行くとテンション上がるタイプ?」
「上がらない」
「嘘だね」
弦音は満足そうに頷き、ひらひらと手を振る。
「いってらっしゃーい。迷子にならないでね」
その言葉を最後に、弦音は姿を消した。
こうして半ば強制的に、スペルと晴馿は祭りへ向かうことになった。
提灯の光が連なり、人の波がゆっくりと流れている。
その賑やかさに、スペルは思わず目を細めた。
「……うるさい」
「それが祭りだ」
「知ってる」
金魚すくいの前で足が止まる。
覗き込むように水槽を見るスペルに、晴馿が即座に釘を刺す。
「神の力は禁止だ」
「使わないってば」
——結果、紙は開始三秒で破れた。
金魚は優雅に泳ぎ去る。まるで見下すかのように
「こんな奴一発ボカンなのに……納得いかない」
「水圧と紙質の問題だ」
「言い方が理系すぎる」
焼きそばを買い、人混みから少し外れた場所で並んで食べる。
風に乗って花火の火薬の匂いがした。
「あっそういえば悩み消えたか」
晴馿は悩む、何か悩んでいると言う感覚が心を埋め尽くしている。言葉にできるものではないなら、説明できやしない。
「悩みって、そんな簡単に消えるもんじゃないか」
唐突な問いに、晴馿は少し考える。
その瞬間、花火が夜空を割った。
ドン、という音に、スペルは思わず肩を跳ねさせる。
「うぉ!」
「ビビリがw」
「お前もボカンと一発かましてやろうか」
晴馿は何も言わず、一歩前に立った。
音は変わらないが、不思議と落ち着く。
夜空に広がる光を見上げながら、スペルは小さく息を吐いた。
悩みは消えない。
答えも、まだない。
「また来ような、今度は夏紀も佳世も弦音もつれて」
- 1.「人生」
- 2.「奇跡の星」
- 3.「夏紀」
- 4.「とある隣人は」
- 5.「立場」
- 6.徒花の行方
- 7.「幼女は」
- 8.「笑顔」
- 9.「軸柊奏」
- 10.徒花の行方
- 11.「居場所」
- 12.「弦の音」
- 13.「答え」
- 14.「日常編」
- 15.「悩むものか」
- 16.「歪み」
- 17.「信頼」
- 18.「余命」
- 19.「時歌」
- 20.「日常編」
- 21.「神として」
- 22.「忘却列車」
- 23.「微熱」
- 24.「クリスマス」
- 25.「プレゼント」
- 26.「鳴っている」
- 27.「バレンタイン」
- 28.「日常」
- 29.「誰」
- 30.「戦場」
- 31.「アレス」
- 32.「日常編」
- 33.「破会議壊」
- 34.「徒花の行方」
- 35.「戦の予兆」
- 36.「日常編」