閲覧前に必ずご確認ください
オリキャラ注意!
『もしも相棒が死んだら最強悪魔はどうなるのか⁉︎』
それは、珍しくブラックのいない下校中だった。
「こっちこっち」
いつもの通学路の脇道から、聞き慣れた声がして、少し気になってその脇道に入ってみたんだ。
「あ、きたきた」
薄暗い脇道にいたのは黒髪の少女こと、しずくちゃんだった。
「え⁉︎しずくちゃん⁉︎」
「そそ、しずくちゃんですヨ」
そう言ってしずくちゃんはニコニコと笑った。
人当たりのいいその笑みは、どこか俺の相棒を彷彿とさせる。
「今日はどうしたの?いつもはいろんな世界を渡り歩いてるって……」
俺がそう聞くと、しずくちゃんはニタリと口角を歪めて語り出した。
「ぼく、少しやりたいことがあってですねぇ」
「その、やりたいこととは…?」
俺が恐る恐る聞くと、しずくちゃんは待ってましたと言わんばかりに言った。
「ズバリ、ブラックさんにドッキリを仕掛けることです‼︎」
「うえぇぇぇぇぇッッ⁉︎⁉︎」
思わず叫んでしまった。
俺の大声に、しずくちゃんは耳を塞いでる。
美少女って何をやってもサマになるなぁ…
仕切り直して……
「ブラックにドッキリって正気⁉︎」
ブラックはいつも飄々としていて、そこが見えない食えないやつだし、何考えてるかわかんないし、ていうかそもそもブラックを騙そうとしたら逆にこっちが揶揄われるのがオチだ!
俺が矢継ぎ早にそう語ると、しずくちゃんは落ち着いてというふうにジェスチャーをした。
「んなことわかってますよ。というか、それは普通の人間…きみがやるからでしょう?」
うぐっ…確かに俺は普通の人間で、ブラックは悪魔で、しずくちゃんは最恐だけど……
「だ か ら 〜」
「不思議ぱわーの使えちゃうぼくが、ブラックさんにドッキリを仕掛けるんです!」
な、なんかこの子が言うと出来そうに聞こえるんだよなぁ……コワイけど……
でも___
「何それ超気になる!!」
やっぱり好奇心には逆らえないっ!
ブラックの焦り顔とか、普段見せない顔とか、動揺とかが見られるかもしれないと思うと、ワクワクしてしまう。
「ですよね!」
「じゃあ協力してくれますか⁉︎」
「もちろん」
「よし、ではこの契約書にサインを……」
そう言ってしずくちゃんはどこからかスケッチブックを取り出し、さらさらと紙に契約書の束を描いて生み出した。
サインサイン〜っと___って
「何ブラックの真似してるの⁉︎」
「あはは!バレました?」
そう言ってしずくちゃんはニタリと笑った。
「バレるわ‼︎」
ん“ん“っ…またまた仕切り直して……
「で、ドッキリって何やるの?」
俺がそう聞くと、しずくちゃんは待ってました!と言わんばかりの笑顔になった。
「えへへ、実はもう決めてるんです」
「ドッキリの内容、名付けて__」
人差し指をピシッと立ててしずくちゃんは言った。
「『もしも相棒が死んだら最強悪魔はどうなるのか!』です!」
「あいぼっ…え、死ッ⁉︎俺死ぬの⁉︎」
俺が戸惑っていると、しずくちゃんはイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「死にませんよぉ〜多分」
「多分⁉︎」
とても不安だ………
「て、てか、具体的にどうするの⁉︎」
「そ れ は 〜」
立てたままの人差し指を揺らして、しずくちゃんはにこりと不気味に笑って言った。
「アレの大切な相棒であるきみが死んだ『夢』を魅せて、ブラックさんがどういった反応をするのか見て楽しむ、ってカンジです!」
それは…なんていうか…
「悪趣味、だね」
「悪趣味、ですね」
俺たちの声が綺麗にハモった。
と言うか気づいてなかったんかい!
「で、でもさとしさんも気になりますよね⁉︎ブラックさんがどういった反応するのか‼︎」
いきなり不安になったのか、うるうるとした瞳でしずくちゃんが見つめてきた。
身長自体は彼女の方が高いのだが、何せ美少女だ。上目遣い 美少女補正でこっちが身長が高いように思えてくる。
すごいな美少女。
その風貌(というより可愛さと小動物味)にやられ、俺は頷く。
「う、うん!俺も気になる‼︎」
俺がそう叫ぶと、しずくちゃんはさっきの雰囲気から一転、顔をぱぁっと輝かせた。
「やった!ありがとうございます!」
と、いうことで俺はこの少女のドッキリに付き合うこととなったのだった。
「えと…さっきの話をまとめると?」
「えーっと……」
①魔界から帰ってきたブラックを眠らせる。
「これどうするの?ブラックがそう簡単に眠るとは思えないけど…」
「ぼくの力でどうにかしますよ〜多分なんとかなります」
②ぼくの能力でさとしさんが死んだ『夢』を魅せる。
「これは俺にはどうにもできないしなぁ…」
「眠らせればどうとでもなりますよ」
③ブラックに魅せた『夢』にぼくたちも入り込む。
「これで以上です!」
「質問いい?」
一つ疑問に思うことがあるんだ、と告げるとしずくちゃんはいつもの優しい笑みを浮かべた。
「いいですよ」
「えと、③の…」
「夢に入るってどういうこと⁉︎説明して⁉︎」
「えーと、それはですネ……」
しずくちゃんは少し悩む素振りを見せたあと、手をひらひらさせながら答えた。
「ぼくの能力で、ブラックさんに魅せた『夢』の世界に、ぼくたちも入り込むんです」
「全っぜんわかんなかったけどもうなんかいいや」
「分かってもわえて嬉しいです!」
いやわかってないから!!
って、こういうとこブラックと同じだな……
「ていうかそれ大丈夫なの?ブラックに見えちゃうんじゃ…」
俺が不安を漏らすと、しずくちゃんは笑って言った。
「そこんとこは大丈夫ですよ〜あの世界じゃぼくたちは幽霊みたいなものなので!」
「そ、そうなの?」
「そうなんですよ」
俺が未だ納得できていないといった顔をすると、それを無理やり納得させるかのような強引な笑顔を浮かべた。
「じゃ、作戦決行です!」
「おっ、おーー‼︎」
こうして、ブラックドッキリ大作戦(という名のアクシュミなイタズラ)が始まった。
「そういえば今日はブラックいないんだったね」
「そう!そうなんですヨ!つまり絶好のチャンス‼︎」
そう2人で話しながら、俺ん家に向かう。
しずくちゃんは飛べるのだが…俺に合わせてくれてるのだろうか。
どうでもいいことを考えながらくだらないことを話していると、いつの間にか家に着いていた。
「ただいまーっと……!」
俺は誰もいない家にそう告げる。
「お、お邪魔しま〜す…」
少し遠慮がちにそう言うしずくちゃんの手を引っ張って、自分の部屋への階段を駆け上がる。
たったったっと小気味いい音がふたつ鳴り響く。
「ブラックーいrぶほっ⁉︎」
俺が叫びながら扉を勢いよく開けようとすると、しずくちゃんの手によって防がれた。
俺の口を手で塞いだまま、しずくちゃんは小声で告げる。
「しー、もしかしたらもう寝てるかもですし、静かに!」
「そ、そうだね!」
いやそんな都合よく行くか?
そう思いながら、俺はそーっと扉を開ける。
するとそこには見慣れた黒い塊が。
「ぶらっ、ぶほっ⁉︎」
またまた叫びそうになったところを、手で塞がれる。
手はそのままに、しずくちゃんは小声で興奮気味に捲し立てる。
「絶好のチャンスですよ!叫んでぱぁにしないでくださいね‼︎」
「もごっ…もごごっ、もごごごご‼︎」
「んー何言ってるかわかりませんね!」
いやお前が塞いでるからだろ!
というツッコミも届かないんだけどね…
俺たちがそんな茶番をしていると、その黒い塊が声を漏らした。
「んぅ……」
『⁉︎』
え?なんだ『んぅ……』って!
お前ほんとにあの悪魔か⁉︎
多分俺たちの心は一つになったと思う。
「てゆーか…」
「もしかしてですけど……」
「ブラック寝てる⁉︎」
「ブラックさん寝てる⁉︎」
俺たちの声がまた綺麗にハモった。もちろん小声で。
「これはチャンスッ!」
まぁなんて輝かしい笑顔。やろうとしてることがイタズラじゃなければ100点満点だったのに。
「きっと疲れてたんですねーうし、さっさとやっちゃいますよー」
そう言いながら、しずくちゃんは寝ているブラックの額に口付けを落とした。
そっと離された唇が、ひどく艶めかしく見える。
「⁉︎」
な、何してるの⁉︎
と俺が小声で言っても、しずくちゃんは人差し指を当ててイタズラっぽく笑うだけだ。
「これでブラックさんは夢の中です。さ、ぼくたちも夢の世界に行きましょ!」
そう言ってしずくちゃんは立ったままの俺の手を引っ張ってしゃがませる。
はいはい寝てくださいねーと言われるがまま、ブラックを挟んで2人で寝っ転がる。
「じゃ、目を閉じて」
すっと目を閉じると、暗闇の視界が一気に白くなって______
ブラックside
少し用事があって、魔界に数日行ってただけだった。
「さとしくーん、帰ってきましたよー」
俺ちゃんはそう言いながらいつも通り空けっぱの窓から部屋に入る。
「さとしくん?」
が、その部屋の主人はそこにいなかった。
「おかしいですねぇ…いつもならこの時間いるはずなんですが」
「何か知ってますか?カメラちゃん」
「じーじじじ?」
聞いてみるが、カメラちゃんも知らないらしい。
一緒に魔界に行ったんだから当たり前か。
「また何かに巻き込まれてたりして、そしたらほんっとさとしくんは鬼ヤバですねぇ!」
カカカ、と高笑いしてみるが、胸にこびりついている焦燥感と不安は消えない。
「…少し、探してみますか」
どこかで道草を食ってるんだろう。そう、きっとそうだ。
お母様に怒られますよ、とでも言って揶揄おう。そしてまた動画の話をするんだ。
大丈夫、この予感はきっと当たらない。また、いつも通りの日常が___
「カメラちゃん、いきますよ」
「じーじじ!」
相棒に声をかけ、入ってきた窓をまた潜る。まずはどこから探そうか。
「ひめちゃん、だいちくん」
彼の友達の後ろ姿を見つけ、手がかりを探すためにも声をかける。
振り返った2人の顔は、涙で濡れて、目元は真っ赤に染まっていた。
「どうしたんです?酷いカオして」
不思議になって聞いてみる。
するとひめちゃんの大きな瞳がより一層涙が溢れ出した。
「う、うぇっ…う、わぁ、ん‼︎」
どうしたものか…喋ってくれなきゃ解決のしようもない。
カメラちゃんも心底困ったようにじーじーと言っている。
俺ちゃんたちが困惑していると、涙を必死に拭いながらだいちくんが口を開いた。
「ブラック、おまえっ、しらねぇのかよ…?」
「知らないって…何をです?」
俺ちゃんが聞くと、だいちくんは瞳を涙で滲ませて言った。
「とりあえず、ついてこい」
言われるがまま、2人の後を追う。
道中、啜り泣く声と鼻を啜る音しかならなくて、ひどく不安を掻き立てる。
俺ちゃんも、冗談を言ったり、ワケを深く聞く気になれなかった。
「…なっ……‼︎」
そこは、さとしくんの家。
同じく泣き腫らしたお母様に挨拶をして、三人でいそいそと部屋の奥に行く。
目の前には、探し人の写真が飾られた仏壇が。
「う、そ、ですよね?」
俺ちゃんの問いかけに2人は答えない。
その無言が、答えを表していて。
でも、それを受け入れるなんて到底無理なことで。
「ドッキリですよね?アクシュミな。俺ちゃんを騙そうだなんて___」
「もう、やめて」
俺ちゃんの自己暗示にも似た何かを、静止する声。
「ひめ、ちゃん」
「もうやめて、ブラックッ‼︎辛いのは私たちも同じだけど…そんな貴方、見てられないわ‼︎」
ぼろぼろと大粒の涙をこぼして、ひめちゃんはそう言った。
その間もだいちくんは何も言わない。
「……そう、ですか。わかりました。すみません、取り乱しましたね」
少し落ち着いて、お参りを済ませてから2人は語り出した。
「さとしくんは、えっと、5日前かな、に、こ、交通事故でっ…!」
「大丈夫ですよ、なんとなくわかりました」
涙を堪えてその続きを言おうとする少女をの声を優しく遮る。
彼女のため、というよりきっと自分のためだろう。
言葉にされて、より彼の死を現実として捉えないように。
「さとし、ドジったんだ。アイツ、たいして足速くないくせに轢かれそうな猫庇ったりして…‼︎ほんと、バカだよなぁっ‼︎」
今度はだいちが話す。
なんとも彼らしい最期だ。
よわっちいくせに、お人好しで、自己犠牲を顧みない。
そして2人は語った。
告別式も終わった今日は、個人的にお参りに来たのだという。
話してる時も、話終わる時も、ずっと2人は泣いていた。
「きょ、今日はもう帰るね。五日経ってるのに、全然整理できてなくて」
「ブラック、またな」
涙を乱暴に拭いながら、2人は立ち上がる。
「ええ、また」
手をひらひらと振って、2人の子供を見送る。
見送る、なんてまるでここが自分の家のようじゃないか。
もう、彼はいないのに。
「つまらなくなりますねぇ…」
「じーじ……」
仏壇の写真の笑顔は、生きていた彼の笑顔よりひどく劣って見えた。
さとしくんがいなくなっても、世界は何も変わらず廻ってる。
一つ変わったのは俺ちゃんと彼の周囲だ。
二ヶ月経ったというのに、未だ周りが立ち直っていないのは、なんだかんだ言って彼の人望だろう。
「愛されてたんですねぇ」
そう呟きながら、編集の手を進める。
俺ちゃんのチャンネルもあまりかわらない。
強いて言えば、動画の伸びが悪くなったことと、コメントでよく『さとしくんは?』と聞かれるようになったことくらいだろうか。
最初のうちは今まで通りの伸びだったが、さとしくんが出ないとわかってくると彼のリアクションが楽しみだった視聴者は減っていき、古参の者ですら『つまらない』と感じ始めてるようだった。
今の活動拠点は魔界だが、たまに人間界に行ってさとしくんの周りを観察することがある。
彼の消えたあそこは色を失ったみたいで、ついこの前まで見ていた場所とまるで違うようだった。
それは、俺ちゃんの日々も。
さとしくんがいなくなって初めて気づいた。
彼のいない動画は、彼のいない俺ちゃんの世界は、
『ひどくつまらないもの』だということに。
「ねぇカメラちゃん」
「じっ、じー…じ?」
相棒のレンズは、大粒の涙で濡れている。
「人ってなんて脆くて、弱くて、愚かで」
「儚く美しいんでしょうかっ…‼︎」
いつの間にか、俺ちゃんの頬にも涙が伝っていた。
「永く一緒にいられるなんて、思ってなかったはずなのに…!」
この俺ちゃんが、1人の人間のために涙を流すなんて、ましてや固執するなんてらしくもない。
そう考えていても、涙は止まらず、感情も抑えきれない。
「あぁ……もっと…!」
“何か、できたはず“
後悔しても、もう遅い。
そこで視界がホワイトアウトした。
「あ、起きました?」
瞳を開けると、一面に映るのは少女の顔。
その顔は、申し訳なさそうな表情になっている。
「泣かせるつもりじゃなかったんです。ただ、ドッキリをしてみようかな、って思って……」
“泣かせるつもりじゃなかった“
その言葉で、いま自分が泣いているのだということに気づいた。
「すみません、本当に……」
そう言いながら、少女_しずくは真っ赤な舌を俺ちゃんの頬に這わせて涙を舐めた。
「きみに涙は似合いませんよ」
「ちょっと悪趣味でしたね、まさか泣くとは思わなくて__」
珍しく本心で謝っている彼女に、夢でも会いたかった人のことを聞く。
「さとしくんは…?」
俺ちゃんが聞くと、その顔がひどく不安そうに見えたのか、優しげな笑みを浮かべてしずくさんは告げた。
「ブラックさんが泣いてるの見て、焦りながら駄菓子屋行きましたよ。お菓子買うんでしょうね」
あぁ、なんと馬鹿なんだろう。
悪魔がそんなもので泣き止む位と思っているのだろうか。小さな子供じゃあるまいし。
でも、そんな彼の優しさが温かくて。
「事故らないといいですねぇ」
「あはは、事故りそうになったらきみが助けに行くでしょう?」
けらけらと笑う少女。
いつもより優しい笑みを浮かべているだろう俺ちゃん。
そんな2人を、いつの間にか沈みかけていた太陽が優しく照らしていた。
Fin.
後日談とエンド差分と仕掛け人たちのツッコミ版も書くつもりです。
「こっちこっち」
いつもの通学路の脇道から、聞き慣れた声がして、少し気になってその脇道に入ってみたんだ。
「あ、きたきた」
薄暗い脇道にいたのは黒髪の少女こと、しずくちゃんだった。
「え⁉︎しずくちゃん⁉︎」
「そそ、しずくちゃんですヨ」
そう言ってしずくちゃんはニコニコと笑った。
人当たりのいいその笑みは、どこか俺の相棒を彷彿とさせる。
「今日はどうしたの?いつもはいろんな世界を渡り歩いてるって……」
俺がそう聞くと、しずくちゃんはニタリと口角を歪めて語り出した。
「ぼく、少しやりたいことがあってですねぇ」
「その、やりたいこととは…?」
俺が恐る恐る聞くと、しずくちゃんは待ってましたと言わんばかりに言った。
「ズバリ、ブラックさんにドッキリを仕掛けることです‼︎」
「うえぇぇぇぇぇッッ⁉︎⁉︎」
思わず叫んでしまった。
俺の大声に、しずくちゃんは耳を塞いでる。
美少女って何をやってもサマになるなぁ…
仕切り直して……
「ブラックにドッキリって正気⁉︎」
ブラックはいつも飄々としていて、そこが見えない食えないやつだし、何考えてるかわかんないし、ていうかそもそもブラックを騙そうとしたら逆にこっちが揶揄われるのがオチだ!
俺が矢継ぎ早にそう語ると、しずくちゃんは落ち着いてというふうにジェスチャーをした。
「んなことわかってますよ。というか、それは普通の人間…きみがやるからでしょう?」
うぐっ…確かに俺は普通の人間で、ブラックは悪魔で、しずくちゃんは最恐だけど……
「だ か ら 〜」
「不思議ぱわーの使えちゃうぼくが、ブラックさんにドッキリを仕掛けるんです!」
な、なんかこの子が言うと出来そうに聞こえるんだよなぁ……コワイけど……
でも___
「何それ超気になる!!」
やっぱり好奇心には逆らえないっ!
ブラックの焦り顔とか、普段見せない顔とか、動揺とかが見られるかもしれないと思うと、ワクワクしてしまう。
「ですよね!」
「じゃあ協力してくれますか⁉︎」
「もちろん」
「よし、ではこの契約書にサインを……」
そう言ってしずくちゃんはどこからかスケッチブックを取り出し、さらさらと紙に契約書の束を描いて生み出した。
サインサイン〜っと___って
「何ブラックの真似してるの⁉︎」
「あはは!バレました?」
そう言ってしずくちゃんはニタリと笑った。
「バレるわ‼︎」
ん“ん“っ…またまた仕切り直して……
「で、ドッキリって何やるの?」
俺がそう聞くと、しずくちゃんは待ってました!と言わんばかりの笑顔になった。
「えへへ、実はもう決めてるんです」
「ドッキリの内容、名付けて__」
人差し指をピシッと立ててしずくちゃんは言った。
「『もしも相棒が死んだら最強悪魔はどうなるのか!』です!」
「あいぼっ…え、死ッ⁉︎俺死ぬの⁉︎」
俺が戸惑っていると、しずくちゃんはイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「死にませんよぉ〜多分」
「多分⁉︎」
とても不安だ………
「て、てか、具体的にどうするの⁉︎」
「そ れ は 〜」
立てたままの人差し指を揺らして、しずくちゃんはにこりと不気味に笑って言った。
「アレの大切な相棒であるきみが死んだ『夢』を魅せて、ブラックさんがどういった反応をするのか見て楽しむ、ってカンジです!」
それは…なんていうか…
「悪趣味、だね」
「悪趣味、ですね」
俺たちの声が綺麗にハモった。
と言うか気づいてなかったんかい!
「で、でもさとしさんも気になりますよね⁉︎ブラックさんがどういった反応するのか‼︎」
いきなり不安になったのか、うるうるとした瞳でしずくちゃんが見つめてきた。
身長自体は彼女の方が高いのだが、何せ美少女だ。上目遣い 美少女補正でこっちが身長が高いように思えてくる。
すごいな美少女。
その風貌(というより可愛さと小動物味)にやられ、俺は頷く。
「う、うん!俺も気になる‼︎」
俺がそう叫ぶと、しずくちゃんはさっきの雰囲気から一転、顔をぱぁっと輝かせた。
「やった!ありがとうございます!」
と、いうことで俺はこの少女のドッキリに付き合うこととなったのだった。
「えと…さっきの話をまとめると?」
「えーっと……」
①魔界から帰ってきたブラックを眠らせる。
「これどうするの?ブラックがそう簡単に眠るとは思えないけど…」
「ぼくの力でどうにかしますよ〜多分なんとかなります」
②ぼくの能力でさとしさんが死んだ『夢』を魅せる。
「これは俺にはどうにもできないしなぁ…」
「眠らせればどうとでもなりますよ」
③ブラックに魅せた『夢』にぼくたちも入り込む。
「これで以上です!」
「質問いい?」
一つ疑問に思うことがあるんだ、と告げるとしずくちゃんはいつもの優しい笑みを浮かべた。
「いいですよ」
「えと、③の…」
「夢に入るってどういうこと⁉︎説明して⁉︎」
「えーと、それはですネ……」
しずくちゃんは少し悩む素振りを見せたあと、手をひらひらさせながら答えた。
「ぼくの能力で、ブラックさんに魅せた『夢』の世界に、ぼくたちも入り込むんです」
「全っぜんわかんなかったけどもうなんかいいや」
「分かってもわえて嬉しいです!」
いやわかってないから!!
って、こういうとこブラックと同じだな……
「ていうかそれ大丈夫なの?ブラックに見えちゃうんじゃ…」
俺が不安を漏らすと、しずくちゃんは笑って言った。
「そこんとこは大丈夫ですよ〜あの世界じゃぼくたちは幽霊みたいなものなので!」
「そ、そうなの?」
「そうなんですよ」
俺が未だ納得できていないといった顔をすると、それを無理やり納得させるかのような強引な笑顔を浮かべた。
「じゃ、作戦決行です!」
「おっ、おーー‼︎」
こうして、ブラックドッキリ大作戦(という名のアクシュミなイタズラ)が始まった。
「そういえば今日はブラックいないんだったね」
「そう!そうなんですヨ!つまり絶好のチャンス‼︎」
そう2人で話しながら、俺ん家に向かう。
しずくちゃんは飛べるのだが…俺に合わせてくれてるのだろうか。
どうでもいいことを考えながらくだらないことを話していると、いつの間にか家に着いていた。
「ただいまーっと……!」
俺は誰もいない家にそう告げる。
「お、お邪魔しま〜す…」
少し遠慮がちにそう言うしずくちゃんの手を引っ張って、自分の部屋への階段を駆け上がる。
たったったっと小気味いい音がふたつ鳴り響く。
「ブラックーいrぶほっ⁉︎」
俺が叫びながら扉を勢いよく開けようとすると、しずくちゃんの手によって防がれた。
俺の口を手で塞いだまま、しずくちゃんは小声で告げる。
「しー、もしかしたらもう寝てるかもですし、静かに!」
「そ、そうだね!」
いやそんな都合よく行くか?
そう思いながら、俺はそーっと扉を開ける。
するとそこには見慣れた黒い塊が。
「ぶらっ、ぶほっ⁉︎」
またまた叫びそうになったところを、手で塞がれる。
手はそのままに、しずくちゃんは小声で興奮気味に捲し立てる。
「絶好のチャンスですよ!叫んでぱぁにしないでくださいね‼︎」
「もごっ…もごごっ、もごごごご‼︎」
「んー何言ってるかわかりませんね!」
いやお前が塞いでるからだろ!
というツッコミも届かないんだけどね…
俺たちがそんな茶番をしていると、その黒い塊が声を漏らした。
「んぅ……」
『⁉︎』
え?なんだ『んぅ……』って!
お前ほんとにあの悪魔か⁉︎
多分俺たちの心は一つになったと思う。
「てゆーか…」
「もしかしてですけど……」
「ブラック寝てる⁉︎」
「ブラックさん寝てる⁉︎」
俺たちの声がまた綺麗にハモった。もちろん小声で。
「これはチャンスッ!」
まぁなんて輝かしい笑顔。やろうとしてることがイタズラじゃなければ100点満点だったのに。
「きっと疲れてたんですねーうし、さっさとやっちゃいますよー」
そう言いながら、しずくちゃんは寝ているブラックの額に口付けを落とした。
そっと離された唇が、ひどく艶めかしく見える。
「⁉︎」
な、何してるの⁉︎
と俺が小声で言っても、しずくちゃんは人差し指を当ててイタズラっぽく笑うだけだ。
「これでブラックさんは夢の中です。さ、ぼくたちも夢の世界に行きましょ!」
そう言ってしずくちゃんは立ったままの俺の手を引っ張ってしゃがませる。
はいはい寝てくださいねーと言われるがまま、ブラックを挟んで2人で寝っ転がる。
「じゃ、目を閉じて」
すっと目を閉じると、暗闇の視界が一気に白くなって______
ブラックside
少し用事があって、魔界に数日行ってただけだった。
「さとしくーん、帰ってきましたよー」
俺ちゃんはそう言いながらいつも通り空けっぱの窓から部屋に入る。
「さとしくん?」
が、その部屋の主人はそこにいなかった。
「おかしいですねぇ…いつもならこの時間いるはずなんですが」
「何か知ってますか?カメラちゃん」
「じーじじじ?」
聞いてみるが、カメラちゃんも知らないらしい。
一緒に魔界に行ったんだから当たり前か。
「また何かに巻き込まれてたりして、そしたらほんっとさとしくんは鬼ヤバですねぇ!」
カカカ、と高笑いしてみるが、胸にこびりついている焦燥感と不安は消えない。
「…少し、探してみますか」
どこかで道草を食ってるんだろう。そう、きっとそうだ。
お母様に怒られますよ、とでも言って揶揄おう。そしてまた動画の話をするんだ。
大丈夫、この予感はきっと当たらない。また、いつも通りの日常が___
「カメラちゃん、いきますよ」
「じーじじ!」
相棒に声をかけ、入ってきた窓をまた潜る。まずはどこから探そうか。
「ひめちゃん、だいちくん」
彼の友達の後ろ姿を見つけ、手がかりを探すためにも声をかける。
振り返った2人の顔は、涙で濡れて、目元は真っ赤に染まっていた。
「どうしたんです?酷いカオして」
不思議になって聞いてみる。
するとひめちゃんの大きな瞳がより一層涙が溢れ出した。
「う、うぇっ…う、わぁ、ん‼︎」
どうしたものか…喋ってくれなきゃ解決のしようもない。
カメラちゃんも心底困ったようにじーじーと言っている。
俺ちゃんたちが困惑していると、涙を必死に拭いながらだいちくんが口を開いた。
「ブラック、おまえっ、しらねぇのかよ…?」
「知らないって…何をです?」
俺ちゃんが聞くと、だいちくんは瞳を涙で滲ませて言った。
「とりあえず、ついてこい」
言われるがまま、2人の後を追う。
道中、啜り泣く声と鼻を啜る音しかならなくて、ひどく不安を掻き立てる。
俺ちゃんも、冗談を言ったり、ワケを深く聞く気になれなかった。
「…なっ……‼︎」
そこは、さとしくんの家。
同じく泣き腫らしたお母様に挨拶をして、三人でいそいそと部屋の奥に行く。
目の前には、探し人の写真が飾られた仏壇が。
「う、そ、ですよね?」
俺ちゃんの問いかけに2人は答えない。
その無言が、答えを表していて。
でも、それを受け入れるなんて到底無理なことで。
「ドッキリですよね?アクシュミな。俺ちゃんを騙そうだなんて___」
「もう、やめて」
俺ちゃんの自己暗示にも似た何かを、静止する声。
「ひめ、ちゃん」
「もうやめて、ブラックッ‼︎辛いのは私たちも同じだけど…そんな貴方、見てられないわ‼︎」
ぼろぼろと大粒の涙をこぼして、ひめちゃんはそう言った。
その間もだいちくんは何も言わない。
「……そう、ですか。わかりました。すみません、取り乱しましたね」
少し落ち着いて、お参りを済ませてから2人は語り出した。
「さとしくんは、えっと、5日前かな、に、こ、交通事故でっ…!」
「大丈夫ですよ、なんとなくわかりました」
涙を堪えてその続きを言おうとする少女をの声を優しく遮る。
彼女のため、というよりきっと自分のためだろう。
言葉にされて、より彼の死を現実として捉えないように。
「さとし、ドジったんだ。アイツ、たいして足速くないくせに轢かれそうな猫庇ったりして…‼︎ほんと、バカだよなぁっ‼︎」
今度はだいちが話す。
なんとも彼らしい最期だ。
よわっちいくせに、お人好しで、自己犠牲を顧みない。
そして2人は語った。
告別式も終わった今日は、個人的にお参りに来たのだという。
話してる時も、話終わる時も、ずっと2人は泣いていた。
「きょ、今日はもう帰るね。五日経ってるのに、全然整理できてなくて」
「ブラック、またな」
涙を乱暴に拭いながら、2人は立ち上がる。
「ええ、また」
手をひらひらと振って、2人の子供を見送る。
見送る、なんてまるでここが自分の家のようじゃないか。
もう、彼はいないのに。
「つまらなくなりますねぇ…」
「じーじ……」
仏壇の写真の笑顔は、生きていた彼の笑顔よりひどく劣って見えた。
さとしくんがいなくなっても、世界は何も変わらず廻ってる。
一つ変わったのは俺ちゃんと彼の周囲だ。
二ヶ月経ったというのに、未だ周りが立ち直っていないのは、なんだかんだ言って彼の人望だろう。
「愛されてたんですねぇ」
そう呟きながら、編集の手を進める。
俺ちゃんのチャンネルもあまりかわらない。
強いて言えば、動画の伸びが悪くなったことと、コメントでよく『さとしくんは?』と聞かれるようになったことくらいだろうか。
最初のうちは今まで通りの伸びだったが、さとしくんが出ないとわかってくると彼のリアクションが楽しみだった視聴者は減っていき、古参の者ですら『つまらない』と感じ始めてるようだった。
今の活動拠点は魔界だが、たまに人間界に行ってさとしくんの周りを観察することがある。
彼の消えたあそこは色を失ったみたいで、ついこの前まで見ていた場所とまるで違うようだった。
それは、俺ちゃんの日々も。
さとしくんがいなくなって初めて気づいた。
彼のいない動画は、彼のいない俺ちゃんの世界は、
『ひどくつまらないもの』だということに。
「ねぇカメラちゃん」
「じっ、じー…じ?」
相棒のレンズは、大粒の涙で濡れている。
「人ってなんて脆くて、弱くて、愚かで」
「儚く美しいんでしょうかっ…‼︎」
いつの間にか、俺ちゃんの頬にも涙が伝っていた。
「永く一緒にいられるなんて、思ってなかったはずなのに…!」
この俺ちゃんが、1人の人間のために涙を流すなんて、ましてや固執するなんてらしくもない。
そう考えていても、涙は止まらず、感情も抑えきれない。
「あぁ……もっと…!」
“何か、できたはず“
後悔しても、もう遅い。
そこで視界がホワイトアウトした。
「あ、起きました?」
瞳を開けると、一面に映るのは少女の顔。
その顔は、申し訳なさそうな表情になっている。
「泣かせるつもりじゃなかったんです。ただ、ドッキリをしてみようかな、って思って……」
“泣かせるつもりじゃなかった“
その言葉で、いま自分が泣いているのだということに気づいた。
「すみません、本当に……」
そう言いながら、少女_しずくは真っ赤な舌を俺ちゃんの頬に這わせて涙を舐めた。
「きみに涙は似合いませんよ」
「ちょっと悪趣味でしたね、まさか泣くとは思わなくて__」
珍しく本心で謝っている彼女に、夢でも会いたかった人のことを聞く。
「さとしくんは…?」
俺ちゃんが聞くと、その顔がひどく不安そうに見えたのか、優しげな笑みを浮かべてしずくさんは告げた。
「ブラックさんが泣いてるの見て、焦りながら駄菓子屋行きましたよ。お菓子買うんでしょうね」
あぁ、なんと馬鹿なんだろう。
悪魔がそんなもので泣き止む位と思っているのだろうか。小さな子供じゃあるまいし。
でも、そんな彼の優しさが温かくて。
「事故らないといいですねぇ」
「あはは、事故りそうになったらきみが助けに行くでしょう?」
けらけらと笑う少女。
いつもより優しい笑みを浮かべているだろう俺ちゃん。
そんな2人を、いつの間にか沈みかけていた太陽が優しく照らしていた。
Fin.
後日談とエンド差分と仕掛け人たちのツッコミ版も書くつもりです。
クリップボードにコピーしました