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大戦中にナチスが行った国際法上の違法行為は許し難いものです。この小説は、ナチスやその他同盟国を擁護・称賛する目的ではありません。
ベルリンのキツネ
#1
総統閣下
窓には軍艦の影が映っていた。建物に居たものは皆、山へ逃げていった。私だけが、その場に残っていた。哀しいような、それでも暖かいような。私はためらわずに手榴弾の安全ピンを抜いた。
ガタン...ゴトン...
前も今も、私は列車に揺られている。ただ、一つ前と変わったことがある。それは、今の列車には先頭に対空砲がついているということだ。
私はV1ロケットの設計図をある偉大な人物に渡すためにベルリン行の列車へ乗っている。
帝国は初期ではとても優勢で、フランスの主要部を占領するまでに至った。しかし、イギリスには海という天然の要塞があり、ドイツの艦隊では今のところの上陸は難しいそうだ。無制限潜水艦作戦もしているが、最近は連合国による爆撃も増えてきた。ただ、私はまだ30だ。帝国の為にも、今此処で国民を残して逝ってしまうわけにはいかない。
おっと、ベルリンへ着いたようだ。話し忘れていたが、横には同伴者である偉大なる国家元帥、ヘルマン・ゲーリングが座っている。蒸気機関車の煙が、夜空に立ち昇っていた。モクモクというその賑やかさは、爆撃を受けた瓦礫からと同じように、私には視えた。駅を出てすぐ、大きな建物があった。いずれは移転も計画しているようっだが、偉大な人物はまだここにいるらしい。
中に入るまで、たくさんドアがあった。警備員の顔つきはどれも険悪で、そのうえ当然ではあるが小銃を携帯していたのでなおさら緊張してきた。ヘルマンはその空気に気付いたのか、肩に優しく手を置いて、「大丈夫、私の顔は通ってるんだから」と囁いた。
最後のドアと思わしき、重そうなドア...赤く、淵が金色に飾り付けられたようなドアを想像するかもしれないが、実際は防弾加工がされてあり、言ってしまえばとてつもなくダサいドア...を衛兵が開けてくれた。
[小文字]ヒューラー[/小文字]
「総統閣下、入ります」
ヘルマンが言った。さっきの言葉とは裏腹に、彼自身も緊張しているようだった。
「...入れ」
話には聞いていたが、元気がない。
「何だ。」
閣下は前の戦いに負けたせいで随分と気を病んでいるらしい。
「V1ロケットが設計できました。」
これは、私が言った。
すると、閣下は目の色を変えて飛んできた。
「どれだ、はやく見せろ!」
それには、私も吹き出しそうになったが、我慢した。ただなぜか、警備員が爆笑していたので私も我慢せずに笑った。
「何が面白いんだ?」
わざとらしく聞いてきた。
噂と違い、結構いい人のようだ。
「設計図は後で彼に渡しておくから、今夜、君はベルリンに止まっていけ。ホテルは取ってある。」
私はその優しさに感動したのち、閣下の準備の良さにも驚いた。
私は何か変な感じがしてその場に立っていた。
「行かないの?」
ヘルマンが声をかけてきた。
それでも立ち尽くしている私に、閣下はこう話しかけた。
「私の演説を聞かなかったのか。いざというときは国民同士助け合わなければいけないんんだよ。」
皮肉にも、優しさのみとは言えなかったが、それは、閣下の信念が垣間見える瞬間だった。ただ、それがこの先のドイツの命運を決めるやり取りであるということは、その場にいた誰もが予想しなかった。
ガタン...ゴトン...
前も今も、私は列車に揺られている。ただ、一つ前と変わったことがある。それは、今の列車には先頭に対空砲がついているということだ。
私はV1ロケットの設計図をある偉大な人物に渡すためにベルリン行の列車へ乗っている。
帝国は初期ではとても優勢で、フランスの主要部を占領するまでに至った。しかし、イギリスには海という天然の要塞があり、ドイツの艦隊では今のところの上陸は難しいそうだ。無制限潜水艦作戦もしているが、最近は連合国による爆撃も増えてきた。ただ、私はまだ30だ。帝国の為にも、今此処で国民を残して逝ってしまうわけにはいかない。
おっと、ベルリンへ着いたようだ。話し忘れていたが、横には同伴者である偉大なる国家元帥、ヘルマン・ゲーリングが座っている。蒸気機関車の煙が、夜空に立ち昇っていた。モクモクというその賑やかさは、爆撃を受けた瓦礫からと同じように、私には視えた。駅を出てすぐ、大きな建物があった。いずれは移転も計画しているようっだが、偉大な人物はまだここにいるらしい。
中に入るまで、たくさんドアがあった。警備員の顔つきはどれも険悪で、そのうえ当然ではあるが小銃を携帯していたのでなおさら緊張してきた。ヘルマンはその空気に気付いたのか、肩に優しく手を置いて、「大丈夫、私の顔は通ってるんだから」と囁いた。
最後のドアと思わしき、重そうなドア...赤く、淵が金色に飾り付けられたようなドアを想像するかもしれないが、実際は防弾加工がされてあり、言ってしまえばとてつもなくダサいドア...を衛兵が開けてくれた。
[小文字]ヒューラー[/小文字]
「総統閣下、入ります」
ヘルマンが言った。さっきの言葉とは裏腹に、彼自身も緊張しているようだった。
「...入れ」
話には聞いていたが、元気がない。
「何だ。」
閣下は前の戦いに負けたせいで随分と気を病んでいるらしい。
「V1ロケットが設計できました。」
これは、私が言った。
すると、閣下は目の色を変えて飛んできた。
「どれだ、はやく見せろ!」
それには、私も吹き出しそうになったが、我慢した。ただなぜか、警備員が爆笑していたので私も我慢せずに笑った。
「何が面白いんだ?」
わざとらしく聞いてきた。
噂と違い、結構いい人のようだ。
「設計図は後で彼に渡しておくから、今夜、君はベルリンに止まっていけ。ホテルは取ってある。」
私はその優しさに感動したのち、閣下の準備の良さにも驚いた。
私は何か変な感じがしてその場に立っていた。
「行かないの?」
ヘルマンが声をかけてきた。
それでも立ち尽くしている私に、閣下はこう話しかけた。
「私の演説を聞かなかったのか。いざというときは国民同士助け合わなければいけないんんだよ。」
皮肉にも、優しさのみとは言えなかったが、それは、閣下の信念が垣間見える瞬間だった。ただ、それがこの先のドイツの命運を決めるやり取りであるということは、その場にいた誰もが予想しなかった。