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グロテスクな描写,キャラ崩壊,急展開,厨二感半端ない文章(?)あり。
苦手な方は回れ右。
ゲーム開始から20分が経過した。
あれから脱落者は一人も出ていない。
また,カードキーの画面にはこんなものもあった。
[明朝体]▼残り人数▼
19/20
▼現時点での鬼の数▼
Lv.1~Lv.3:それぞれ4体
Lv.4・Lv.5:それぞれ1体[/明朝体]
「ご丁寧に残り人数まで載せてくれているとはね...」
「まぁ[漢字]理野仁[/漢字][ふりがな]りのに[/ふりがな] しょた様にかかればこんなのを見つけるなんて朝飯前__
そんなことを言いながら曲がり角に差し掛かろうとしたその時,別方向から歩いてきた雛とぶつかった。
「痛って~!あ,大丈夫か?」
「う...うん。ひなは平気だよ!」
お互い謝り合っているともう一人,曲がり角から姿を現した。
「大丈夫か?雛。それと貴方も。」
黄色の瞳と首の下辺りまで伸ばされた髪。灰色のシャツの上から白いコートを羽織った,どこか賢そうな印象をもった少年だった。
「なぎにぃ,ひなは大丈夫だよ!」
雛と親しく,兄と呼んでいることから,彼は雛の兄なのだろう。
「あ,えーと...自己紹介が遅れましたね....俺は熊ヶ崎 凪っていいます」
そう言い軽く微笑む凪。
(優しそうな奴で良かった...)
そう思いながらしょたも自己紹介をする。
「俺理野仁 しょただぜ!よろしくな!!」
「はい,よろしくお願いします,しょたさん」
「よろしくね!しょたさんっ!!」
一段落してからしょたは熊ヶ崎兄妹とタッグを組むことを提案した。
「えっと...良ければ組みませんか?俺一人はちょっと...」
「確かに人数が多少多い方が鬼の対処もしやすいかも__
「ねぇねぇ,しょたさんって,てて活に興味ある?」
兄の判断はそっちのけで雛はしょたに尋ねる。
「てて活....?」
「てぇてぇは好きかってこと!」
「まぁ嫌いではないけど_」
「本当?!」
「ちょっと,雛...」
凪が止めようとするが彼女の勢いは止まらない。
「なぎにぃ!!しょたさんは絶対良い人だよ!!てて活隊長のひなが言ってるんだからね!!!てて活メンバーに悪はないよ!!!」
いつの間にかてて活(雛曰くてぇてぇ保護発動隊というものらしい)とやらに入れられるしょた。
(なんかすっげぇ喜んでるけど...まぁいいか)
こうして新たな参加者タッグが誕生した。
******
各地でタッグを組むものが現れる中,こちらでは激闘が繰り広げられていた。
先程から爆音や振動が頻繫に起こっている。
「始まってすぐ鬼に見つかるとは...僕たちはついていないのかもしれないね。」
襲い掛かる鬼に向かって弓矢を構える零。
放たれた矢は凛によって施された追尾機能の影響か,不自然な軌道で飛んでいく。
一方,鬼の方はそんな矢に向かって白いエネルギー弾のようなものを飛ばす。
それは矢を一瞬で溶かしてしまった。
「お兄様...あの攻撃,とても威力が強いです!!」
零の後ろで鬼の立ち回りを観察している凛が震えた声で警告を促す。
「あぁ...そうだね。瀾くん!」
ついさっき矢を溶かしたエネルギー弾はそのまま零の方へと直接している。
「あいよ!!」
しかしそれは瀾の能力によって液体へと化した。
[明朝体]バシャ。[/明朝体]
勢いを失った攻撃は地面へと落下し,そのまま霧散した。
「個体を液体に変えるとは...能力は"状態変化"といったところかな?」
「なっ,何で分かるんだよ?!ほんとお前ら恐ろしいくらい鋭いな...」
行里兄妹の冷静すぎる観察に思わずツッコミを入れてしまう瀾。
「なんか落ち着かねぇんだけど__危ね!」
さらに数を増やし飛んできたエネルギー弾を間一髪で避けよながら,瀾も攻撃態勢にはいる。
「んじゃあ次はこっちの番だぜ?鬼さんよぉ!!」
瀾の能力はかなり使い勝手の良いものだった。相手の攻撃を液体化させて無力化させることが出来,収納にも長けている。
それに地面を液体状にすることでサーフィンをしているかのように,地面の上を高速移動することも可能としていた。
現に彼が今そうしているように。
「凄い...硬い地面なのに滑ってるみたいに移動してる...!」
そんな瀾の姿を見て,微かに目を輝かせる凛。
(状態変化というのは間違いなさそうだね...なら,これも可能なのだろうか)
再び弓矢を構えながらも,零は思考を巡らせる。
(瀾くんに尋ねてみるか)
「瀾くん,少しいいかい?」
いつの間にか取り出した剣で例のエネルギー弾を薙ぎ払っている瀾に零は再度呼びかける。
「どした?」
零が一斉に放った(追尾機能つきの)数本の矢に鬼が苦戦しているの見計らって瀾は零たちの方へと近づく。
「君のその能力は物体の気体化も可能かい?」
「あぁ。出来るけど」
お互い話しながらもその視線の先は鬼を捉えていた。
「でしたら...」
凛も同じく鬼を見ていたが,零と瀾へと視線を切り替える。
「お兄様の使っている矢を気体化させて鬼の隙をついて一斉に個体に戻せば鬼も避けられないのではないでしょうか...?」
自身なさげに言う凛だが,その提案はとても合理的なものだ。
「...それ。」
一瞬驚いた表情をした瀾。
そのまま彼は凛の傍まで行く。
「あ,えっと...これは私が勝手に考えただけなので気にしないでくださ__
「すごく良いと思うぞ!流石だな,凛!!」
瀾と同じく零も彼女の意見に賛成のようだった。
「僕もそれはとても良い考えだと思うよ。彼と同意見なのは少し癪だけど流石だね,凛」
「おいそれどういう意味だよ」
「ともかく今はそれでいこう。さっきの矢ももうもちそうにないからね。」
気づけば鬼は全ての矢を破壊していた。
「じゃあ行くぞ。零,凛!!」
そう言って瀾は再び鬼へと接近する。
[大文字]ガン![/大文字]
彼と鬼の取り出した剣はぶつかり合いながら火花を散らしている。
「さて,今のうちに矢の準備をしておこうか。凛,この矢の強化,お願い出来るかい?」
「はい!」
(あいつらの用意が終わるまで何とかして引き付けておく必要がある...が)
瀾は変わらず鬼と剣の打ち合いをしていた。
(そろそろ出来たか...?)
彼が行里兄妹の方を向こうとしたその時。
鬼は零たちへと標的を変えた。
そのまま彼らの方へと走っていく。
「こ...こいつっ!」
瀾の焦りに対し,零は涼しい顔をしていた。
「そうやってむやみに突っ込むと命とりになりかねないよ?__ねぇ,凛」
零にそう言われ凛は軽く頷く。
「瀾くん。こちらの準備は完了したよ。」
「了解。んじゃあ行くぞ!零!!」
瀾が指を軽くならす。
[明朝体]能力__解除[/明朝体]
途端,鬼の四方八方を矢がぐるりと取り囲んでいた。
突然現れた大量の矢に,鬼の方は驚いているようだ。
避ける間もなくそれらは鬼の体を貫いていった。
バキッという音と共に鬼の姿は画像の境界が分かれたブロックノイズのようになっている。
それは凡人が脱落した時と似たような見た目をしていた。
「これで一体撃破,だね。」
弓矢を瀾に返却しながら零が呟く。
「そうですね。出来ることならもう鬼とは遭遇したくないです...」
「まったくだ。」
「なら少し移動しようか。ここは見晴らしが良い分鬼に見つかる可能性も高くなるからね。凛,瀾さん。」
「はい!」
「おう!」
******
ゲーム開始から30分後。
[明朝体]カチッ[/明朝体]
放送開始を合図するボタンの音。
続いてスピーカーにノイズが発生する。
「また...放送?」
三度目となるとノイズを聞いただけで放送が始まることを予測する者も現れる。
「イベントの説明かな~?」
そのノイズをいち早く察知した[漢字]緋勇[/漢字][ふりがな]ひゆう[/ふりがな] [漢字]伊織[/漢字][ふりがな]いおり[/ふりがな]は近くのビルの壁に取り付けられているスピーカーに目をやる。
「参加者の皆様にお知らせで~す!」
伊織の予想通り,フロワの声が会場内にこだまする。
「これより,先ほどの放送でお伝えした"特別イベント"のルール説明を行いたいと思いまーす!」
「記念すべき第一回目のイベントは[下線]退勢翼賛会[/下線]です!ルール説明はカードキーの方をご覧ください!!私の方からは以上でーす!!」
[明朝体]ブツッ[/明朝体]
「たいせいよくさんかいって何だっけ?」
放送を聞き終え,カードキーを手にしたしょたがとなりを歩く凪に尋ねる。
「大政翼賛会...1940年10月12日から1945年6月13日にかけて存在した日本の政治結社のことですね。政界再編成と国論の統一を目的に発足されたそうです。名前の由来は「大政」は天下国家の政治,「天皇陛下のなさる政治」という意味で「翼賛」は力を添えてたすける,って意味があるようです。こちらでは"大政"ではなく"退勢"と表記されていますが」
「詳しんだな。でもそれとこのゲームに何の関係が...?」
「それはカードキーの画面を見た方が早いと思います」
「そうだな。んじゃあさっさとルール確認するか」
凪のカードキーが映し出す画面を彼に加え雛としょたが覗き込む。
[明朝体]▼「退勢翼賛会」ルール説明▼
‣このイベント開催期間はポジションに関わらず,別途「天皇」「道府県支部」「大都市支部」「市区町村支部」「町内会」「部落会」という役職が配布される。
‣[下線]「天皇」が脱落すると全員が脱落となる。[/下線]
‣各役職にはそれぞれ異なる特徴・能力が付与される。(役職説明は次のページへ)
‣このイベントに伴い,鬼の増減も行う。ただし通常の鬼とは異なり,レベル分けはされていない。(どの鬼もLv.2・Lv.3相当の強さに設定されている)
‣鬼も同じ役職で分けられている。
‣参加者は「天皇」の役職を持つ鬼を撃破することが勝利条件となる。(鬼側「天皇」が脱落すると残りの鬼も自動的に消滅する)
‣この期間内は残り人数の表示は行われない。また,鬼の方も誰か脱落したかは共有されない。
‣ポジションの能力はイベント中でも使用可能。[/明朝体]
「つまり天皇を探し出して守りながらも鬼側の天皇を倒さなきゃなんねぇってことかー」
ルール説明を読み終えたしょたが面倒くさそうに言う。
「どうやら次のページに役職の詳細があるみたいですね」
凪が画面をスライドすると,こんな画面が現れた。
[明朝体]▼役職一覧▼
‣「天皇」:陰陽師の効果が付与される。この役職を持つ者が脱落すると全員失格となる。(1人)
‣「道府県支部」:天皇の半径100m以内にいる時のみ身体能力が普段の2倍になる。(3人)
‣「大都市支部」:鬼に変装することができる。ただし変装できるのは撃破された鬼のみ。(3人)
‣「市区町村支部」:撃破された鬼の情報や相手から聞いた役職を"記録"することができる。記録された情報は参加者全員に共有される。(4人)
‣「町内会」:反対勢力を"弾圧"することができる。支給されたバッジを紛失すると脱落となる。(4人)
‣「部落会」:特に能力は付与されない。支給されたバッジを紛失すると脱落となる。(5人)[/明朝体]
「あっ,ひなのやくしょくは"町内会"ってやつだったよ~」
自分のカードキーに表示される役職を見て雛が言う。
「俺も"町内会"だな。お,これがバッジとやらか」
カードキーと同様いつの間にかポケットに入っていたバッジをしょたが取り出す。
そのバッジは金属製で,白い羽の絵が描かれていた。
「俺は"市区町村支部"ってやつでした。」
そう言う凪の手にはいつの間にかメモ帳とペンが。
「成程。これで記録したものが全員に共有されるってことか。...雛,しょたさん。お二人の役職,記録させてもらっても?」
「ああ,構わないぜ」
としょた。
「うん,ひなもいいよ~!」
と雛。
「ありがとうございます」
[明朝体]▼記録通達▼
理野仁 しょた:役職は「町内会」
熊ヶ崎 雛:役職は「町内会」
熊ヶ崎 凪:役職は「市区町村支部」[/明朝体]
******
「早速通達が。記録ってこんな感じで届くんだ」
電子音と共に送られてきた文章を読み,冷は呟く。
「早くも3人の役職が公開されましたよ__」
彼は暗がりに立つ誰かに向かって呼びかける。
「ね,天皇さん?」
あれから脱落者は一人も出ていない。
また,カードキーの画面にはこんなものもあった。
[明朝体]▼残り人数▼
19/20
▼現時点での鬼の数▼
Lv.1~Lv.3:それぞれ4体
Lv.4・Lv.5:それぞれ1体[/明朝体]
「ご丁寧に残り人数まで載せてくれているとはね...」
「まぁ[漢字]理野仁[/漢字][ふりがな]りのに[/ふりがな] しょた様にかかればこんなのを見つけるなんて朝飯前__
そんなことを言いながら曲がり角に差し掛かろうとしたその時,別方向から歩いてきた雛とぶつかった。
「痛って~!あ,大丈夫か?」
「う...うん。ひなは平気だよ!」
お互い謝り合っているともう一人,曲がり角から姿を現した。
「大丈夫か?雛。それと貴方も。」
黄色の瞳と首の下辺りまで伸ばされた髪。灰色のシャツの上から白いコートを羽織った,どこか賢そうな印象をもった少年だった。
「なぎにぃ,ひなは大丈夫だよ!」
雛と親しく,兄と呼んでいることから,彼は雛の兄なのだろう。
「あ,えーと...自己紹介が遅れましたね....俺は熊ヶ崎 凪っていいます」
そう言い軽く微笑む凪。
(優しそうな奴で良かった...)
そう思いながらしょたも自己紹介をする。
「俺理野仁 しょただぜ!よろしくな!!」
「はい,よろしくお願いします,しょたさん」
「よろしくね!しょたさんっ!!」
一段落してからしょたは熊ヶ崎兄妹とタッグを組むことを提案した。
「えっと...良ければ組みませんか?俺一人はちょっと...」
「確かに人数が多少多い方が鬼の対処もしやすいかも__
「ねぇねぇ,しょたさんって,てて活に興味ある?」
兄の判断はそっちのけで雛はしょたに尋ねる。
「てて活....?」
「てぇてぇは好きかってこと!」
「まぁ嫌いではないけど_」
「本当?!」
「ちょっと,雛...」
凪が止めようとするが彼女の勢いは止まらない。
「なぎにぃ!!しょたさんは絶対良い人だよ!!てて活隊長のひなが言ってるんだからね!!!てて活メンバーに悪はないよ!!!」
いつの間にかてて活(雛曰くてぇてぇ保護発動隊というものらしい)とやらに入れられるしょた。
(なんかすっげぇ喜んでるけど...まぁいいか)
こうして新たな参加者タッグが誕生した。
******
各地でタッグを組むものが現れる中,こちらでは激闘が繰り広げられていた。
先程から爆音や振動が頻繫に起こっている。
「始まってすぐ鬼に見つかるとは...僕たちはついていないのかもしれないね。」
襲い掛かる鬼に向かって弓矢を構える零。
放たれた矢は凛によって施された追尾機能の影響か,不自然な軌道で飛んでいく。
一方,鬼の方はそんな矢に向かって白いエネルギー弾のようなものを飛ばす。
それは矢を一瞬で溶かしてしまった。
「お兄様...あの攻撃,とても威力が強いです!!」
零の後ろで鬼の立ち回りを観察している凛が震えた声で警告を促す。
「あぁ...そうだね。瀾くん!」
ついさっき矢を溶かしたエネルギー弾はそのまま零の方へと直接している。
「あいよ!!」
しかしそれは瀾の能力によって液体へと化した。
[明朝体]バシャ。[/明朝体]
勢いを失った攻撃は地面へと落下し,そのまま霧散した。
「個体を液体に変えるとは...能力は"状態変化"といったところかな?」
「なっ,何で分かるんだよ?!ほんとお前ら恐ろしいくらい鋭いな...」
行里兄妹の冷静すぎる観察に思わずツッコミを入れてしまう瀾。
「なんか落ち着かねぇんだけど__危ね!」
さらに数を増やし飛んできたエネルギー弾を間一髪で避けよながら,瀾も攻撃態勢にはいる。
「んじゃあ次はこっちの番だぜ?鬼さんよぉ!!」
瀾の能力はかなり使い勝手の良いものだった。相手の攻撃を液体化させて無力化させることが出来,収納にも長けている。
それに地面を液体状にすることでサーフィンをしているかのように,地面の上を高速移動することも可能としていた。
現に彼が今そうしているように。
「凄い...硬い地面なのに滑ってるみたいに移動してる...!」
そんな瀾の姿を見て,微かに目を輝かせる凛。
(状態変化というのは間違いなさそうだね...なら,これも可能なのだろうか)
再び弓矢を構えながらも,零は思考を巡らせる。
(瀾くんに尋ねてみるか)
「瀾くん,少しいいかい?」
いつの間にか取り出した剣で例のエネルギー弾を薙ぎ払っている瀾に零は再度呼びかける。
「どした?」
零が一斉に放った(追尾機能つきの)数本の矢に鬼が苦戦しているの見計らって瀾は零たちの方へと近づく。
「君のその能力は物体の気体化も可能かい?」
「あぁ。出来るけど」
お互い話しながらもその視線の先は鬼を捉えていた。
「でしたら...」
凛も同じく鬼を見ていたが,零と瀾へと視線を切り替える。
「お兄様の使っている矢を気体化させて鬼の隙をついて一斉に個体に戻せば鬼も避けられないのではないでしょうか...?」
自身なさげに言う凛だが,その提案はとても合理的なものだ。
「...それ。」
一瞬驚いた表情をした瀾。
そのまま彼は凛の傍まで行く。
「あ,えっと...これは私が勝手に考えただけなので気にしないでくださ__
「すごく良いと思うぞ!流石だな,凛!!」
瀾と同じく零も彼女の意見に賛成のようだった。
「僕もそれはとても良い考えだと思うよ。彼と同意見なのは少し癪だけど流石だね,凛」
「おいそれどういう意味だよ」
「ともかく今はそれでいこう。さっきの矢ももうもちそうにないからね。」
気づけば鬼は全ての矢を破壊していた。
「じゃあ行くぞ。零,凛!!」
そう言って瀾は再び鬼へと接近する。
[大文字]ガン![/大文字]
彼と鬼の取り出した剣はぶつかり合いながら火花を散らしている。
「さて,今のうちに矢の準備をしておこうか。凛,この矢の強化,お願い出来るかい?」
「はい!」
(あいつらの用意が終わるまで何とかして引き付けておく必要がある...が)
瀾は変わらず鬼と剣の打ち合いをしていた。
(そろそろ出来たか...?)
彼が行里兄妹の方を向こうとしたその時。
鬼は零たちへと標的を変えた。
そのまま彼らの方へと走っていく。
「こ...こいつっ!」
瀾の焦りに対し,零は涼しい顔をしていた。
「そうやってむやみに突っ込むと命とりになりかねないよ?__ねぇ,凛」
零にそう言われ凛は軽く頷く。
「瀾くん。こちらの準備は完了したよ。」
「了解。んじゃあ行くぞ!零!!」
瀾が指を軽くならす。
[明朝体]能力__解除[/明朝体]
途端,鬼の四方八方を矢がぐるりと取り囲んでいた。
突然現れた大量の矢に,鬼の方は驚いているようだ。
避ける間もなくそれらは鬼の体を貫いていった。
バキッという音と共に鬼の姿は画像の境界が分かれたブロックノイズのようになっている。
それは凡人が脱落した時と似たような見た目をしていた。
「これで一体撃破,だね。」
弓矢を瀾に返却しながら零が呟く。
「そうですね。出来ることならもう鬼とは遭遇したくないです...」
「まったくだ。」
「なら少し移動しようか。ここは見晴らしが良い分鬼に見つかる可能性も高くなるからね。凛,瀾さん。」
「はい!」
「おう!」
******
ゲーム開始から30分後。
[明朝体]カチッ[/明朝体]
放送開始を合図するボタンの音。
続いてスピーカーにノイズが発生する。
「また...放送?」
三度目となるとノイズを聞いただけで放送が始まることを予測する者も現れる。
「イベントの説明かな~?」
そのノイズをいち早く察知した[漢字]緋勇[/漢字][ふりがな]ひゆう[/ふりがな] [漢字]伊織[/漢字][ふりがな]いおり[/ふりがな]は近くのビルの壁に取り付けられているスピーカーに目をやる。
「参加者の皆様にお知らせで~す!」
伊織の予想通り,フロワの声が会場内にこだまする。
「これより,先ほどの放送でお伝えした"特別イベント"のルール説明を行いたいと思いまーす!」
「記念すべき第一回目のイベントは[下線]退勢翼賛会[/下線]です!ルール説明はカードキーの方をご覧ください!!私の方からは以上でーす!!」
[明朝体]ブツッ[/明朝体]
「たいせいよくさんかいって何だっけ?」
放送を聞き終え,カードキーを手にしたしょたがとなりを歩く凪に尋ねる。
「大政翼賛会...1940年10月12日から1945年6月13日にかけて存在した日本の政治結社のことですね。政界再編成と国論の統一を目的に発足されたそうです。名前の由来は「大政」は天下国家の政治,「天皇陛下のなさる政治」という意味で「翼賛」は力を添えてたすける,って意味があるようです。こちらでは"大政"ではなく"退勢"と表記されていますが」
「詳しんだな。でもそれとこのゲームに何の関係が...?」
「それはカードキーの画面を見た方が早いと思います」
「そうだな。んじゃあさっさとルール確認するか」
凪のカードキーが映し出す画面を彼に加え雛としょたが覗き込む。
[明朝体]▼「退勢翼賛会」ルール説明▼
‣このイベント開催期間はポジションに関わらず,別途「天皇」「道府県支部」「大都市支部」「市区町村支部」「町内会」「部落会」という役職が配布される。
‣[下線]「天皇」が脱落すると全員が脱落となる。[/下線]
‣各役職にはそれぞれ異なる特徴・能力が付与される。(役職説明は次のページへ)
‣このイベントに伴い,鬼の増減も行う。ただし通常の鬼とは異なり,レベル分けはされていない。(どの鬼もLv.2・Lv.3相当の強さに設定されている)
‣鬼も同じ役職で分けられている。
‣参加者は「天皇」の役職を持つ鬼を撃破することが勝利条件となる。(鬼側「天皇」が脱落すると残りの鬼も自動的に消滅する)
‣この期間内は残り人数の表示は行われない。また,鬼の方も誰か脱落したかは共有されない。
‣ポジションの能力はイベント中でも使用可能。[/明朝体]
「つまり天皇を探し出して守りながらも鬼側の天皇を倒さなきゃなんねぇってことかー」
ルール説明を読み終えたしょたが面倒くさそうに言う。
「どうやら次のページに役職の詳細があるみたいですね」
凪が画面をスライドすると,こんな画面が現れた。
[明朝体]▼役職一覧▼
‣「天皇」:陰陽師の効果が付与される。この役職を持つ者が脱落すると全員失格となる。(1人)
‣「道府県支部」:天皇の半径100m以内にいる時のみ身体能力が普段の2倍になる。(3人)
‣「大都市支部」:鬼に変装することができる。ただし変装できるのは撃破された鬼のみ。(3人)
‣「市区町村支部」:撃破された鬼の情報や相手から聞いた役職を"記録"することができる。記録された情報は参加者全員に共有される。(4人)
‣「町内会」:反対勢力を"弾圧"することができる。支給されたバッジを紛失すると脱落となる。(4人)
‣「部落会」:特に能力は付与されない。支給されたバッジを紛失すると脱落となる。(5人)[/明朝体]
「あっ,ひなのやくしょくは"町内会"ってやつだったよ~」
自分のカードキーに表示される役職を見て雛が言う。
「俺も"町内会"だな。お,これがバッジとやらか」
カードキーと同様いつの間にかポケットに入っていたバッジをしょたが取り出す。
そのバッジは金属製で,白い羽の絵が描かれていた。
「俺は"市区町村支部"ってやつでした。」
そう言う凪の手にはいつの間にかメモ帳とペンが。
「成程。これで記録したものが全員に共有されるってことか。...雛,しょたさん。お二人の役職,記録させてもらっても?」
「ああ,構わないぜ」
としょた。
「うん,ひなもいいよ~!」
と雛。
「ありがとうございます」
[明朝体]▼記録通達▼
理野仁 しょた:役職は「町内会」
熊ヶ崎 雛:役職は「町内会」
熊ヶ崎 凪:役職は「市区町村支部」[/明朝体]
******
「早速通達が。記録ってこんな感じで届くんだ」
電子音と共に送られてきた文章を読み,冷は呟く。
「早くも3人の役職が公開されましたよ__」
彼は暗がりに立つ誰かに向かって呼びかける。
「ね,天皇さん?」