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追懐のよすが 赤坂楓編

#1

幕開けは夜明けと共に

「...そういえば明日じゃなかった?''あれ''って。」

鬱蒼とした森。立ち並ぶ木々の間からは幾筋もの木漏れ日が差し込み、草花を照らしながら光る水面の如く揺らめいていた。

その森の少し開けた場所__小さな野原からその声は聞こえてくる。
声の主はその野原にいる2人の少女のうちの1人だった。

「そろそろ練習に行こう...って聞いてる?」
小さめの切り株に腰掛け、目の前にある木製の机の上で腕を組みながら不満そうに話す少女。
彼女の名は「神鳥谷 月波(ひととのや つきは)」。その隣で頬杖をついた状態で居眠りにふけっている最中の少女が「赤坂 楓(あかさか かえで)」である。

「こ...こいつ......また人が話している時に居眠りを......!」
と言いながら頬杖をついている楓の腕を無理矢理倒す月波。右腕の支えを失った楓は崩れるようにして目を覚ました。
「あれ...私、寝てた?」

どうやら当人はまったくその気がなかったらしい。
「そうだよ。''また''寝てた。」
''また''の部分をやけに強調して言う月波の言いぐさに楓は苦笑する。
「ごめんごめん()だってここ椅子も机もあるし良い感じに日が当たるからつい眠くなるというか...」
仕方ない、と言いたげな楓に鋭い睨みを向けるとそっぽを向きながら月波が言う。

「午前5時に起こしに来た私にも非があるだろうけど」

「え?今何か言った?」
今の独り言を聞かれまいと慌てて否定する月波。

「言ってない言ってない。ほらさっさと道場に行くよ。」

道場というのはこの森の外れにある1人の男性が営む寺子屋のことである。しかし、勉学よりも戦闘訓練を教わることの方が多いため、そこに通う子供たちは道場と呼んでいた。



「せっかく先生に休みにしてもらったんだから今日は明日の異能力検定試験に備えて丸1日特訓だからね!」

「えぇ~!?あれってあと一ヶ月はなかった!?!?」
「何言ってんの楓!!そんなんじゃ受かんないよ!」

異能力検定試験__通称『能力検定』。
能力検定とは人類に敵対し、全世界の支配を企む種族『魔者(ましゃ)』を打ち倒すための力量があるかどうかを見極める試験である。
楓たちの通う寺子屋では2年に1度この試験が行われており、合格者にはそれぞれに見合った何かしらの武器が授与される...というシステムであった。

「そっか、もう明日なのか...でも月波が付き合ってくれるなら私もがんばらないとね。」
「当たり前でしょ。それが分かれば早く移動移動。」

そう言いながら楓の背中を押し、足早に森を去ろうとする月波。
乾いた砂のような音をたてながら森の中を吹き抜ける風が彼女の艶やかに輝く黒髪をなびかせていた。





******
先ほどいた野原から寺子屋まではそう遠くなかった。徒歩5分程といったところだろうか。東の空は白く燃え、雲の絶間からはの光が差し込んでいた。
「とこでさ」
慣れた手つきで寺子屋の入口の扉に取り付けられた南京錠を解除している月波の背中に向かって楓は疑問に思ったことを尋ねてみる。
「んー?」
ダイヤルを回す手を一切緩めずに返事をする月波。
「私は剣術に特化してるけど月波は魔法に特化してるでしょ?一緒に練習って言ったってどうやってするつもり?」

数秒経ったのち、月波の返答が返ってきた。
「知っての通り私は剣術がからっきし駄目だけど逆に私が楓に魔法を教えることはできるでしょ?」
南京錠を外し終えた月波が楓の方に振り向き言う。

「でも私には魔法を扱うのに必要な『魔力』がないって先生が言ってたじゃん。」



「心配ご無用。」
楓を中に入るように促し、後ろを向いて少し考えるそぶりをしてから月波が答える。
どうやら何か策があるようだ。

「確かに先生は楓に魔力がないと言った。」

そこまで言って少し間をとると彼女はでも、と付け加えいたずらっぽく笑いながら楓の方に向き直った。

「その代わりに君には『霊力』があるとも言っていた
だろう?」


どことなく先生に似た口調のように思えた。


「逆に君は霊力がないのだろう?」


同じく楓も先生の口調を真似て言ってみる。


「あはは、そうだね。」


...どうやら元の口調に戻ったようだ。

「それに関しては問題ないよ。昨日みっちり調べてきたからね。全部ココに入ってる。」

そう言って自分の頭に人差し指をむけ、得意げに言う月波。
この寺子屋に通っている子供たちの中で一番の成績と知識量を誇る彼女ならあり得なくもない、と楓は内心思った。

「それに霊力の扱い方って割と魔力の扱い方に似てるんだよ。だから基礎的な技だけでも今日練習して本番でみんなを驚かそうよ!」

剣術の練習をする予定だった楓だが、月波の熱意に根負けして霊力を扱った技の練習をすることになった。





******
月波との練習が始まると時間は刻々と進んでいった。あれほど青く澄んでいた空があっという間に茜色に染まっていく様子は誰かが空に魔法でもかけたようだった。

ー「いい?霊力操作ってのは複雑かつ繊細な能力なんだから集中力とコントロール力命!!!分かった?」

練習を終え、帰路についた楓の脳裏を月波の言葉がよぎる。

ー「霊力の扱い方って人によって違ってくるから技とかも多種多様みたいだよ。それに応用がかなりきくから割と何でもありの能力だね。だからかな、想像力とかも重視されてるみたい。」

自分のためかのように一つ一つ丁寧に説明してくれた月波に楓は敬服するばかりだった。




霊力操作、私に使いこなせるかな?)
細道になっている木立を歩きながらそうこう考えているうちに江戸の文化財を思わせるような木造の家々が見えてきた。

(一応弾幕程度なら使えるようになったけど...)
引き戸を開けてただいまを言うと奥から出てきた赤坂澄霞(あかさか すみか)がいつも通りの明るい笑顔を向けながら出迎えてくれた。

「おかえり、楓。」

相変わらずの白衣姿で、整った顔立ちに赤みがかった茶髪の髪を後ろで束ね、白色のバレッタでとめている彼女は、この村唯一の医者であり、これまでに多くの人の治療を請け負ってきた。

「今日はいつもより遅かったね~...もしかして明日の検定の練習?」

まる自分が帰ってくるタイミングを予知していたかのように素早くお茶を出してきた澄霞に驚きながらも返答する楓。

「うん、そうだよ。月波と一緒に練習してたんだ」
そう言いながら手水場に向かおうとする彼女を澄霞が引き留めた。

「ストーップ!そこ、通っちゃだめ!!」
見るとそこにはガラスの破片やら焦げた紙類やらが散乱していた。

「もしかしてまた部屋を爆発させちゃったの?!」

「えーっと、少し薬品の調合を間違えてしまいまして...今まで片付けてたんだけど......」

きまり悪い顔をしながら楓から目をそらす澄霞は、仕事がら度々薬品の調合等を自宅で行うことがある。その際に誤って部屋を爆発させる、ということが2ヶ月に1、2度くらいのペースで起こっている。


「まぁ片付けもそこそこ済んだし今回は建さんに直してもらうには至らないと思うよ。...悪いけど今はそっちを通ってくれる?」

(どおりで白衣が焦げてるわけだ...)と内心思いながらも目立った怪我等がないことに安堵する楓。
「うん、分かった。」


建さんというのは楓たちの隣人、萩原建のことであり元建築士の気前の良い老夫である。いつも治療を施してくれている礼にと、澄霞が破壊して部屋の修理等を喜んで引き受けてくれている。この家のが外見のよらず現代的で快適な造りになっているのも彼の腕利きのおかげだろう。





******
「やっと終わった~疲れた!」

粗方の掃除を終え、2人はテーブルについて(先程澄霞の出した)お茶を飲んでいた。

しかし、ついさっきまで掃除をしていたということもありお茶は完全に冷め切っていた。

「それでそれで?明日の試験の自信のほどは?」
と聞きながら椅子の背もたれに背をあずけ、さらに片腕をかけているという澄霞の態度からは竹を割ったようなさっぱりとした気性がうかがえた。

「えぇーと...まあまあかな。でも月波のおかげで弾幕が撃てるようになったんだよ!」

その言葉を聞いて一瞬石化したかのように動かなくなった澄霞だが、

「この一日で?すごいよ楓!!やっぱり霊力操作の才能もあるんだね~さすがは狛江の子だ」

と、大いに喜んでいた。

狛江というのは澄霞の姉、そして楓の母親にあたる人物である。しかし、楓が4歳の時に病死してしまった。
一方、同時期に父親の風斗は行方不明となったため、現在は楓の叔母にあたる澄霞のもとで暮らしている。



******
澄霞の部屋が元通りの状態になったのは完全に日が沈み切ってからのことだった。
壁や天井のあちこちに焦げ跡やすすが付着していたりガラスの破片が突き刺さったりとかなり悲惨な状況になっていた。楓が帰宅するまでにも片付けてはいたようだが廊下とは比べものにならないほどの散らかりようだったのだろう。

「廊下掃除が終わったからって油断してたよ...もう一ヶ月は片付けなんてしたくない」
そう言いながらベットに身を投げる澄霞。

「あ、そうだ。」

そう言った数秒後、突然ベットから体を起こして立ち上がり、傍にあった戸棚から白色の液体が入った小瓶を取り出した。

「あー良かった、これは無事だった!」

「それ、何の薬品?」

澄霞が取り出した薬品を興味深そうに見つめる楓を前に、澄霞は得意げな顔をして解説を始めた。

「これはね、ちょっと特別な回復薬なんだ。私のかわいい弟子と苦労して作り上げた代物なんだよ~!!」

「回復薬...?これが?」

「話は最後まで聞きたまえよ楓くん。この薬はちょっと特別だと言っただろう?なんとね、手足が吹き飛ぼうが臓器が無くなろうがこれを使えば元通りになるんだよ!!!」

(もうちょっとましな例を挙げてくれ...)
苦笑しながら頷く楓に構わずさらに話を進める澄霞。

「...つまりやっかいな病気にかかってもこれ1つで解決ってわけ。明日もし何かあった時のためにここに入れとくから怪我人が出たりしたら使って。あ、ちなみに体力とかは回復出来ないからね。」

「すごい薬...でもそれこんなところに置いといていいの?」

「平気平気。量産できるようにもなってるし。でも副作用があるからよっぽどの重症の時以外は使わないでね」

いきなり真面目な顔になった澄霞に驚きながらも
恐る恐る尋ねてみる楓。

「副作用って......?」




「簡単に言うと不老不死になっちゃうんだよ。」

作者メッセージ

自己満足で始めたものです
語彙力が終わっております

2025/02/01 21:37

キリサメアメ
ID:≫ 0sYukKzLY7f2M
コメント

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R-15 #暴力表現ついよす創作流血表現

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