文字サイズ変更

夏の終わひに、神は嗤う

#3

#3

その道中。
田舎なため、街灯も少なく、蝉の鳴く声だけが山に轟く。
暑苦しくて、ぬるいこの雰囲気が、気持ち悪いようで、心地が良い気がして、よくわからない。
「はぁ…こっから長いんだよなぁ、家。」
?《おい、そこの旦那。》
急に人の声がし、振り返ると和服を着た、謎の男が佇んでいた。
「えっと…俺になにか用ですか?」
?《今の時間は獣が出やすい。猪や熊にやられるぞ。》
暗くてうまく顔は見えないが、佇まいからしてスタイルが良いことはわかる。
「あぁ…確かにそうですね。」
?《少しの間でいいから、うちで時間を潰さないか?もう少し時が過ぎると、獣は寝始めるから。》
「えぇ…でも、ご迷惑でしょうし。」
それ以上に、知らない人の家で時間を潰すなど、あまりにもリスクが高い。
今の時代、田舎といえど物騒なことが多いしな。
?《あぁ…今の時代じゃ知らぬ人の家に入るのは少し物騒か。》
?《俺はお愁の知り合いだ。きっとお愁も俺に拾われることを予測しているだろうし。》
「そう、なんですね…。」
本当に信用しても良いのだろうか。
…まぁ、自分の身は自分で守るものだ。
最悪元陸上部の底力を見せよう。
「じゃあ、その、お願いします。」
?《良い返事だ。入れ。》
そうして彼に案内されるように彼の家に入って行った。

家といえど、家にたどり着くまでに少し時間がかかった。
「…遠いですね、お家。」
?《まぁな。俺の家は庭も家も、一人じゃ有り余るほど大きいからな。》
少しずつ進んでいくと、やっとお家が見えた。
「うわぁ…。」
その家はとにかくとにかく豪邸だった。
西洋的ではないが、昔の日本のお家のように大きかった。
?《不思議か。俺の家が。》
「不思議っていうか…迫力すごいなって。」
?《そうか。》
がらがらと戸棚を開ける。
?《さぁ、入れ。茶菓子くらいは出すさ。》
彼が振り返り、俺にそう言う。
その時も、うまく顔は見えなかった。

長い長い廊下が目の前に現れる。
廊下の奥は暗くてほとんど見えなかった。
?《座れ。》
「っあ、はい。」
案内されたのはこぢんまりとした居間だった。
「あ、あの。」
俺は居間の椅子に腰掛ける。
彼も反対側の椅子に腰掛けた。
?《なんだ?》
「なんで刀がここに…?[太字][斜体]模擬刀[/斜体][/太字]、ですか?」
そう、俺の背後には刀が飾られていた。
?《模擬なんかじゃないさ。[下線]本物の刀[/下線]だよ。》
「っへ。」
俺は一瞬頭が混乱してしまった。
刀?本物??
「こ、これ…本当に人斬れるんですか。」
?《あぁ、そうさ。》
「へ、へぇー…。」
何者なんだこの人。
もし、この人が本気で追いかけてきたら…。
俺は本当に逃げ切れるのだろうか。
「あ、あの…そういえばお名前聞いてなかったですね。」
「えっと、お名前は?」
?《名はそなたから名乗るのが流儀だろ。》
「え、あ、そう、ですよね。すいません…。」
この人喋り方もなんだか古風だし…。
調子狂うな。
「東野、響紀です。普通の大学生で、こっち帰ってきてて…。」
?《そうか。》
琥珀《俺は月城琥珀だ。》
「琥珀さん、ですね。覚えておきます。」
琥珀《…覚えるほどの名ではない。》
その応答の間の瞬間が少し不思議に思いつつも、俺は一番気になることについて聞いた。
「あの、琥珀さん。」
琥珀《なんだ。》
「あの…室内でなぜお面を?」
そう、彼はお面をしていたのだ。
先ほどまではしていなかったが、部屋に入った途端、ふすまから何か取り出し、徐にそれをつけ始めた。
「それも狐のお面、ですよね。」
「お愁さんのところで、信仰されているのは、[下線]九尾と天狗[/下線]ですけど、なにか関係されてるんですか?」
琥珀《…あぁ、これか。》
琥珀《そりゃ旦那はわかんねぇのも無理ないか。》
琥珀《これは、お愁の先代、冥霊(めいれい)から受け継いだものさ。》
あの優しげなおじいさんは、こんなにかっこいいお名前があったらしい。
正直驚いた。
「そうなんですね。」
琥珀《それより、もっと気付きやすいことに旦那は気が付かないんだな。》
「えっ?」
琥珀《そなたの家には、電気ぐらいあるだろう。》
「そうですけど…って、もしかして…。」
そう、この家はあまりにも真っ暗だった。
普通は外が暗くなると電気をつける。
当たり前のことだ。
こんな田舎にも電気はついている。
だが、この家には灯りも電気もなかった。
「…灯りとかつけないんですか?」
琥珀《そうだな。…あまり、灯りが好きではなくてな。》
「はぇー…。」
にしても不思議なお人だと思った。
現代で和服、お面、電気などのインフラなし、そして山暮らし。
なかなかに変わってる人だ。
「…あの。」
琥珀《なんだ。》
「[下線]琥珀さんのお顔[/下線]、気になります。」
ページ選択

作者メッセージ

結構踏み込んじゃう響紀くん、好きです。

2026/07/22 17:39

rary
ID:≫ 1acdLZrSPpU0c
コメント

この小説につけられたタグ

微BL?怪異シリアス

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はraryさんに帰属します

TOP