その道中。
田舎なため、街灯も少なく、蝉の鳴く声だけが山に轟く。
暑苦しくて、ぬるいこの雰囲気が、気持ち悪いようで、心地が良い気がして、よくわからない。
「はぁ…こっから長いんだよなぁ、家。」
?《おい、そこの旦那。》
急に人の声がし、振り返ると和服を着た、謎の男が佇んでいた。
「えっと…俺になにか用ですか?」
?《今の時間は獣が出やすい。猪や熊にやられるぞ。》
暗くてうまく顔は見えないが、佇まいからしてスタイルが良いことはわかる。
「あぁ…確かにそうですね。」
?《少しの間でいいから、うちで時間を潰さないか?もう少し時が過ぎると、獣は寝始めるから。》
「えぇ…でも、ご迷惑でしょうし。」
それ以上に、知らない人の家で時間を潰すなど、あまりにもリスクが高い。
今の時代、田舎といえど物騒なことが多いしな。
?《あぁ…今の時代じゃ知らぬ人の家に入るのは少し物騒か。》
?《俺はお愁の知り合いだ。きっとお愁も俺に拾われることを予測しているだろうし。》
「そう、なんですね…。」
本当に信用しても良いのだろうか。
…まぁ、自分の身は自分で守るものだ。
最悪元陸上部の底力を見せよう。
「じゃあ、その、お願いします。」
?《良い返事だ。入れ。》
そうして彼に案内されるように彼の家に入って行った。
家といえど、家にたどり着くまでに少し時間がかかった。
「…遠いですね、お家。」
?《まぁな。俺の家は庭も家も、一人じゃ有り余るほど大きいからな。》
少しずつ進んでいくと、やっとお家が見えた。
「うわぁ…。」
その家はとにかくとにかく豪邸だった。
西洋的ではないが、昔の日本のお家のように大きかった。
?《不思議か。俺の家が。》
「不思議っていうか…迫力すごいなって。」
?《そうか。》
がらがらと戸棚を開ける。
?《さぁ、入れ。茶菓子くらいは出すさ。》
彼が振り返り、俺にそう言う。
その時も、うまく顔は見えなかった。
長い長い廊下が目の前に現れる。
廊下の奥は暗くてほとんど見えなかった。
?《座れ。》
「っあ、はい。」
案内されたのはこぢんまりとした居間だった。
「あ、あの。」
俺は居間の椅子に腰掛ける。
彼も反対側の椅子に腰掛けた。
?《なんだ?》
「なんで刀がここに…?[太字][斜体]模擬刀[/斜体][/太字]、ですか?」
そう、俺の背後には刀が飾られていた。
?《模擬なんかじゃないさ。[下線]本物の刀[/下線]だよ。》
「っへ。」
俺は一瞬頭が混乱してしまった。
刀?本物??
「こ、これ…本当に人斬れるんですか。」
?《あぁ、そうさ。》
「へ、へぇー…。」
何者なんだこの人。
もし、この人が本気で追いかけてきたら…。
俺は本当に逃げ切れるのだろうか。
「あ、あの…そういえばお名前聞いてなかったですね。」
「えっと、お名前は?」
?《名はそなたから名乗るのが流儀だろ。》
「え、あ、そう、ですよね。すいません…。」
この人喋り方もなんだか古風だし…。
調子狂うな。
「東野、響紀です。普通の大学生で、こっち帰ってきてて…。」
?《そうか。》
琥珀《俺は月城琥珀だ。》
「琥珀さん、ですね。覚えておきます。」
琥珀《…覚えるほどの名ではない。》
その応答の間の瞬間が少し不思議に思いつつも、俺は一番気になることについて聞いた。
「あの、琥珀さん。」
琥珀《なんだ。》
「あの…室内でなぜお面を?」
そう、彼はお面をしていたのだ。
先ほどまではしていなかったが、部屋に入った途端、ふすまから何か取り出し、徐にそれをつけ始めた。
「それも狐のお面、ですよね。」
「お愁さんのところで、信仰されているのは、[下線]九尾と天狗[/下線]ですけど、なにか関係されてるんですか?」
琥珀《…あぁ、これか。》
琥珀《そりゃ旦那はわかんねぇのも無理ないか。》
琥珀《これは、お愁の先代、冥霊(めいれい)から受け継いだものさ。》
あの優しげなおじいさんは、こんなにかっこいいお名前があったらしい。
正直驚いた。
「そうなんですね。」
琥珀《それより、もっと気付きやすいことに旦那は気が付かないんだな。》
「えっ?」
琥珀《そなたの家には、電気ぐらいあるだろう。》
「そうですけど…って、もしかして…。」
そう、この家はあまりにも真っ暗だった。
普通は外が暗くなると電気をつける。
当たり前のことだ。
こんな田舎にも電気はついている。
だが、この家には灯りも電気もなかった。
「…灯りとかつけないんですか?」
琥珀《そうだな。…あまり、灯りが好きではなくてな。》
「はぇー…。」
にしても不思議なお人だと思った。
現代で和服、お面、電気などのインフラなし、そして山暮らし。
なかなかに変わってる人だ。
「…あの。」
琥珀《なんだ。》
「[下線]琥珀さんのお顔[/下線]、気になります。」
田舎なため、街灯も少なく、蝉の鳴く声だけが山に轟く。
暑苦しくて、ぬるいこの雰囲気が、気持ち悪いようで、心地が良い気がして、よくわからない。
「はぁ…こっから長いんだよなぁ、家。」
?《おい、そこの旦那。》
急に人の声がし、振り返ると和服を着た、謎の男が佇んでいた。
「えっと…俺になにか用ですか?」
?《今の時間は獣が出やすい。猪や熊にやられるぞ。》
暗くてうまく顔は見えないが、佇まいからしてスタイルが良いことはわかる。
「あぁ…確かにそうですね。」
?《少しの間でいいから、うちで時間を潰さないか?もう少し時が過ぎると、獣は寝始めるから。》
「えぇ…でも、ご迷惑でしょうし。」
それ以上に、知らない人の家で時間を潰すなど、あまりにもリスクが高い。
今の時代、田舎といえど物騒なことが多いしな。
?《あぁ…今の時代じゃ知らぬ人の家に入るのは少し物騒か。》
?《俺はお愁の知り合いだ。きっとお愁も俺に拾われることを予測しているだろうし。》
「そう、なんですね…。」
本当に信用しても良いのだろうか。
…まぁ、自分の身は自分で守るものだ。
最悪元陸上部の底力を見せよう。
「じゃあ、その、お願いします。」
?《良い返事だ。入れ。》
そうして彼に案内されるように彼の家に入って行った。
家といえど、家にたどり着くまでに少し時間がかかった。
「…遠いですね、お家。」
?《まぁな。俺の家は庭も家も、一人じゃ有り余るほど大きいからな。》
少しずつ進んでいくと、やっとお家が見えた。
「うわぁ…。」
その家はとにかくとにかく豪邸だった。
西洋的ではないが、昔の日本のお家のように大きかった。
?《不思議か。俺の家が。》
「不思議っていうか…迫力すごいなって。」
?《そうか。》
がらがらと戸棚を開ける。
?《さぁ、入れ。茶菓子くらいは出すさ。》
彼が振り返り、俺にそう言う。
その時も、うまく顔は見えなかった。
長い長い廊下が目の前に現れる。
廊下の奥は暗くてほとんど見えなかった。
?《座れ。》
「っあ、はい。」
案内されたのはこぢんまりとした居間だった。
「あ、あの。」
俺は居間の椅子に腰掛ける。
彼も反対側の椅子に腰掛けた。
?《なんだ?》
「なんで刀がここに…?[太字][斜体]模擬刀[/斜体][/太字]、ですか?」
そう、俺の背後には刀が飾られていた。
?《模擬なんかじゃないさ。[下線]本物の刀[/下線]だよ。》
「っへ。」
俺は一瞬頭が混乱してしまった。
刀?本物??
「こ、これ…本当に人斬れるんですか。」
?《あぁ、そうさ。》
「へ、へぇー…。」
何者なんだこの人。
もし、この人が本気で追いかけてきたら…。
俺は本当に逃げ切れるのだろうか。
「あ、あの…そういえばお名前聞いてなかったですね。」
「えっと、お名前は?」
?《名はそなたから名乗るのが流儀だろ。》
「え、あ、そう、ですよね。すいません…。」
この人喋り方もなんだか古風だし…。
調子狂うな。
「東野、響紀です。普通の大学生で、こっち帰ってきてて…。」
?《そうか。》
琥珀《俺は月城琥珀だ。》
「琥珀さん、ですね。覚えておきます。」
琥珀《…覚えるほどの名ではない。》
その応答の間の瞬間が少し不思議に思いつつも、俺は一番気になることについて聞いた。
「あの、琥珀さん。」
琥珀《なんだ。》
「あの…室内でなぜお面を?」
そう、彼はお面をしていたのだ。
先ほどまではしていなかったが、部屋に入った途端、ふすまから何か取り出し、徐にそれをつけ始めた。
「それも狐のお面、ですよね。」
「お愁さんのところで、信仰されているのは、[下線]九尾と天狗[/下線]ですけど、なにか関係されてるんですか?」
琥珀《…あぁ、これか。》
琥珀《そりゃ旦那はわかんねぇのも無理ないか。》
琥珀《これは、お愁の先代、冥霊(めいれい)から受け継いだものさ。》
あの優しげなおじいさんは、こんなにかっこいいお名前があったらしい。
正直驚いた。
「そうなんですね。」
琥珀《それより、もっと気付きやすいことに旦那は気が付かないんだな。》
「えっ?」
琥珀《そなたの家には、電気ぐらいあるだろう。》
「そうですけど…って、もしかして…。」
そう、この家はあまりにも真っ暗だった。
普通は外が暗くなると電気をつける。
当たり前のことだ。
こんな田舎にも電気はついている。
だが、この家には灯りも電気もなかった。
「…灯りとかつけないんですか?」
琥珀《そうだな。…あまり、灯りが好きではなくてな。》
「はぇー…。」
にしても不思議なお人だと思った。
現代で和服、お面、電気などのインフラなし、そして山暮らし。
なかなかに変わってる人だ。
「…あの。」
琥珀《なんだ。》
「[下線]琥珀さんのお顔[/下線]、気になります。」