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空が輝くまで

「好きなんだ」
私・鳴山星乃は、ある日、何にも興味がなかった男子に、そう言われた。
その男子は、クラスメイトの大原日向くん。関わったこともないし、話すのも初めて。
そんななか、初めに出てしまった言葉は。

「なんで?」
「…鳴山さんが、好きなんだ。ずっと追いかけてたんだ」
「私のこと、どこで知ったの?」
「…それは…。 一目惚れだよ! 通りかかった時に、一目惚れして、ずっと追いかけてて…」
「…嘘でしょ。ごめん。じゃあね」

なんで、好きでもない私に告白するのだろう。

ショックだったけど、ふと思った。
でも、大原くんは、私を本当に好きでいてくれているけど、理由は思いつかなかったのかもしれない。

「でも、そんなわけないか…」

悲しい。ショック。好きでもない人に、告白された。
私は、男子に遊ばれているのだろうか。

そう思って、立ち止まった時。

「…お〜い、日向〜!」

大原日向くんを呼ぶ声が聞こえて、慌てて建物の影に隠れた。
大原くんを呼んだのは、大原くんと仲がいい男子の、加森晴翔くんだ。

実は、加森くんは… 私の、好きな人なんだ。

だから、大原くんに話しかけられたとき、加森くんに近づけるかも、って思って、ここまで来てしまった。
『話したいことがあるんだ』って言われたとき、断ればよかった。こんなことになるなら。

「日向、どうだった?」
「…お前さ…」
「ははっ、やっぱ無理だった? あいつは俺が好きだからな〜」

「…は?」

頭が真っ白になった。
『どうだった?』って、大原くんが私に告白したこと?
『あいつ』って、私のこと?
つまり、加森くんは私が加森くんのことを好きってことを知っていて、大原くんに告白させたってこと?
ふられるのを、楽しんだってこと?

最低。

「…とりあえず、話聞いてやるからさ。帰るぞ〜」

意味がわからない。
どういうこと?
…私は、遊ばれてたの?

「星乃?」

後ろから、話しかけられた。
真っ青な顔で振り向くと、親友の藤野優陽がいた。
優陽は明るくて、優しくて、可愛くて、すごくモテる。
加森くんが優陽のことを好き、ってうわさも聞いたことがあるくらい。

「優陽…?」
「あっ、やっぱり星乃だ!」

「…どうしたの?」
「ごめん! なんか今日、星乃の様子が変だなって思って、つけてきちゃった!」
「えっ!!」

優陽は、話を聞いていたってこと?
…どうしよう…。

「あっ、でも、大丈夫!! 途中で、佐野くんに話しかけられて、見失っちゃったの」
「…そ、そうなんだ…」

よかった…。
ただ歩いているだけで、男子に話しかけられるなんて、さすが、優陽!
ナイス、佐野!!

「…なんか、あったの?」

珍しく、優陽が真剣な表情になった。

「なにもないよ?」

優陽に嘘はつきたくないけど、このことだけは言いたくない。
慌てて誤魔化すと。

「そっか! オッケ! 帰ろっか!」

そう言って、先に歩いて行った。
優陽は、それ以上聞いてこなかった。
優陽は、やっぱりなにもないって、思ったのかな。

…さすが、天然な優陽。

「星乃、早く!!」
「…うん!」

私は、辛いことなんか忘れて、優陽を大事にしよう。
                    心から、そう思った。


一週間後。
私はあの日から、なるべく大原くんと加森くんには関わらないことにした。
そのおかげで、いつもより優陽と一緒にいれるようになった。

あの会話を聞いたときはショックだったけど、優陽と前より仲良くなれたのは、嬉しい。
でも… まだ、忘れることはできない。

「星乃! 今日、席替えだって〜!」
今は、朝。教室に行くと、一番初めに、優陽にそう言われた。

「そうなの?」
「うん! 私、隣になりたい人いるんだよね〜」
「それって?」
「…ひみつ! じゃあ、また!」

優陽は、誰かに呼ばれて行った。
なんか、少し変だった。
『隣になりたい人いるんだよね〜』と言ったとき…

まぁ、天然な優陽のことだから、大丈夫だよね。
そう思い込んで、私は席に座った。

優陽が言っていた通り、今日は席替えだった。
1人ずつくじをひいて、席を決めるみたい。
完全に、運だ。

誰でも良いけど、加森くんと大原くんだけは、避けたい。
だって、あの会話を聞いてしまったのだから…。

そう思っているうちに、みんなくじをひいて、机を移動した。

「え…?」

なんと、となりは加森くんだった。
…なんて運が悪いんだろう、私。

加森くんのことを見ていると、目があった。だけど。

「あっ、となり藤野?」
「そっ、そうだね…」

なんと、反対側の加森くんのとなりは、優陽だった。

なんか加森くん、私のこと避けてない…?

「あっ、星乃、近くだね!」

加森くんから目をそらすように、優陽は私にニコッと笑いかけた。

「そうだね」

私はなんとか笑顔をつくった。


「ごめんね…」
今は、放課後、下校中。
いつも通り、優陽と帰っていた。

すると、優陽がなぜか急に、申し訳なさそうに謝った。

「なんで?」
「…え?」

私の反応が、優陽の予想と違っていたらしく、優陽は私よりびっくりしている。

「だっ、だって、星乃… 加森くんのこと、好き、でしょ…?」
「……えっ⁈」

優陽には、『加森くんが好き』ってことは、言ったことはないのに。
もしかして、優陽って、勘が鋭かったの…?

「親友の星乃の気持ちなんて、すぐわかるんだよ。好きな人だって、あのときのことだって…」

『あのとき』というのは、多分、私が大原くんにウソの告白をされたときのこと、だと思う。

っていうか、それじゃあ優陽、演技をしてた、ってこと…?

「あのとき私、実は、全部話を聞いてたの。大原くんに告白されたこととか…」
「…そう、なんだ…」

じゃあ、 大原くんと加森くんの会話も、聞いていたんだね、優陽。
じゃあ… 私が一人で抱え込まなくてよかったんだね、優陽…

自然と、涙が出てきそうになる。
けど、抑える。

「…ごめんね、『佐野くんに話しかけられた』とか嘘ついて。いや、話しかけられたのは本当だけど、断ったよ。佐野くんより、星乃の方が気になるから」
「…うん…」
「…ほんとはね、星乃から話を聞きたかったの。だから、なるべく真剣に、『なにかあったの?』って聞いたんだよ。だけど、星乃は言いたくなさそうだったから、諦めた」
「…うん…」

優陽は、私より一人で抱え込んでいたのかもしれない。
優陽は、思っていたより、私のことを大事にしてくれていたのかもしれない。

そう思うと、今まで優陽のことを『天然』と思っていた自分が、恥ずかしい。
こんなに、いろいろ考えてくれて、一番友達思いの優陽を、『天然』なんて思うなんて…

「ごめんね、星乃」
「…ううん、私もごめん」

二人で笑い合って、少しの無言が続いた。

そのとき。
「私さ、大原くんのことが好きなの」
「……えっ⁈」

急だった。
めちゃくちゃ急だった。

えっ!
優陽が、大原くんのことを好き…?
じゃあ、私が告白されたとき…

「大原くんが星乃に告白してたとき、すごく悲しかった。失恋したって、思ったの。だけど、加森くんとの会話を聞いちゃって、ちょっとだけ嬉しい、って思っちゃったの」
「…うん…」

私が加森くんに「悲しい」と思ったように、優陽も、大原くんに「悲しい」って思ったのかな。

それじゃあ、私は断って正解だった。
親友の恋は、応援するのが正解だし、私は優陽のことを応援したい。

「…ごめん、星乃」
「ううん。お互い、頑張ろう!」

優陽を見ると、見たことないくらい暗い顔で、小さく頷いていた。


次の日。
「えっ、そうなの?」
「そう。話通じたの、初めて」

笑顔で、楽しそうに明るく話しているのは、席が前後の、優陽と大原くん。
昨日、優陽は「頑張ろう」って思ったのか、今日はずっと話している。

でも、大原くんも楽しそう。

なんだか複雑で、少しだけ悲しい。

「あのさ、鳴山」
そのとき、後ろから急に話しかけられた。
話しかけてきたのは… 加森くんだ。

「なに?」
「…ちょっと、話があるんだ」
「…う、うん」

加森くんがそう言って教室を出て行ったので、私は加森くんを追いかけて、風が気持ちいい屋上に来た。

「…あのさ」
「う、うん…」

なんか、緊張する。
いつもは、明るく話している加森くんが、なんだか真剣で、いつもと違う。

「…あの話、聞いてたんだろ…?」
「…えっ?」

あの話って… 私が大原くんに告白された時のこと…?

でも、私が聞いてたって、なんで知ってるの…?

「この頃のお前、俺をちょっと避けてるだろ…? それで、聞いたのかなって…」
「…う、うん…」
「…あっ、やっぱ聞いてた…?」

私が小さく頷くと、加森くんは気まずそうに俯いて、少し黙ったあと、私を見て。

「ほんとに、ごめん!」
「…うん…」

『日向、どうだった?』
『…お前さ…』
『ははっ、やっぱ無理だった? あいつは俺が好きだからな〜』
『…は?』

あの時の会話を思い出す。
ショックだった。
私が加森くんを好き、ってことが、加森くんにバレていたこと。
そして、大原くんが告白に失敗したことを、加森くんがバカにしたこと。
大原くんが、黙り込んだこと。

全て、ショックだった。
悲しかった。
もう、二人には会いたくないと思った。

でも。

「…私、加森くんのことが好き」

気づけばはっきり声に出ていた。
でも、声は震える。

加森くんは、大きく目を見開いている。

「もちろん、ショックだったよ。あの会話を聞いて。…でも、私は、加森くんのことが好きなの。…気持ちがすぐに変わる想いなんて、恋じゃないんだよ」
「…ごめん。俺…」

すぐに、涙が出てきそうになる。
でも、私は頑張って笑って、

「うん、わかった。じゃあね」

私はそう言って、走って逃げた。

「おい! 鳴山!」
そんな声が聞こえたけれど、気にしない。

走って、ほとんど誰もいない女子トイレの前に着いた頃にはもう、涙が出てきてしまいそう。

でも、私は泣かない。

失恋したけど、
苦しいけれど、
辛いけれど、
泣かない。

その時、誰かの話し声が聞こえてきて、急いでトイレに入った。

「あれ、やばかったよね〜」
「ね! あいつ、嫌われてるのに気づかないんだもん。バカだよね〜」

話しているのは、クラスメイトの仲の良い女子の4人。
悪口を言っているように聞こえる。

「いや、気づいてるでしょ。だって、あんな子だよ?」

笑い声が聞こえる。
『あいつ』って、誰?
今、悪口を言われてるのって、誰?

なんか、すごく嫌な予感がする。

「あいつを好きな人なんて、いないよね」
「わかる〜! あいつ、顔だけだもんね〜」
「っていうか、名前なんだっけ?」
「バカ野でしょ」
「あっ、いいねそれ! そうやって呼んだら、あいつ喜びそう」
「ね〜!」

「っていうか、本題に戻ろ! さっき、やばかったよねって話」
「写真撮ろうとしたら、逃げてさ〜 面白すぎて、お腹壊れそうだったわ〜」
「あの、逃げ方面白かったよね! それで、莉奈が捕まえてさ〜」
「私が捕まえた時の写真、撮った? あいつの変顔やばいから」
「いや、あれは変顔じゃないよ。普通のあいつの顔」

また笑い声が聞こえる。
聞いてて、居心地が悪い。

多分、4人は、ある人のことをいじめてる。

その人は、さっき写真を撮られそうになって、逃げたら4人の中の莉奈ちゃんって子に捕まえられた。
これが、4人の話している内容。

その、いじめられている子って、誰なんだろう?
私はそれが気になって、静かに話を聞くことにした。

「私の彼氏が言ってたんだけどさ、あいつ、走り方やばくない?」
「そうなの?」

その時。
「あのさ」

圧が強い、はっきりとした声。

男子だということは、わかったけれど、誰かはわからない。

「えっ、なんであんたが女子トイレに入ってるのよ⁈」
「ごめん。でも、話し声が聞こえたから」

その男子が喋った時、確信した。
その男子は… 加森くんだ。

「藤野のこと、言ってるんだろ」

加森くんがそう言った途端、静まり返った。

えっ…?
4人が、優陽のことを言っていたのだとしたら、優陽はいじめられてるってこと?

「は? あの人気者の優陽ちゃんの、悪口を言うわけないでしょ」
「そうだよ! っていうか、証拠はあるの?」
「いや、勘」

えっ。
勘なの…?
ちょっと、吹き出しそうになる。

「なら、もう出て行ってよ。これ以上いたら、変態だよ!」
「そうだよ! 出ていって!」

加森くん、追い出されちゃうのかな。

そう思った。でも、その時。
「…俺、勘って言ったけどさ。もし、これから藤野がいじめられてるってなったら、俺はお前らだって思うよ」
「そ、そうなるわけないじゃん! だから、私たちはなにもしてないって!」

確実に、4人は焦り始めてると思う。
がんばれ、加森くん。

「っていうか、あんただけでしょ? あんた1人の言うことなんて、誰も聞くわけないでしょ」
「あと、もう1人」

その瞬間、血の気がひいた。
「このトイレに、お前らと、俺と、もう1人いる」

それって…
それって、私のこと…?
でも、なんで…?

「それって、どういうこと?」
「…俺は気づいてるから、出て来いよ。…鳴山星乃」

私は静かに、ドアを開けて、出た。

「…なんで?」

4人は、目を大きく見開いている。

「…ごめん。話聞いちゃった…」
「…なんでよ! いるなら、出てくればよかったでしょ!」
「最初、聞いちゃって。それで、出てこれなくて…」

「鳴山」

加森くんがなにかを言いかけた、その時。

キーンコーンカーンコーン…

チャイムが鳴った。

「じゃあ、私たち行くから!」

4人は、慌ててトイレを出て行った。

「…加森くん、なんで気づいたの?」

私がそう聞くと、加森くんは私と目を合わせずに、こう言った。

「お前がどっかに行って、こっそり追いかけてきたんだ。で、話を聞いてたら、4人がいた」
「…へぇ…」

それで、女子トイレに入ってきた、ってこと…?
加森くん、行動力ありすぎ…

私なら、絶対できない。
でも。
でも、そんなことを当たり前のようにするのが、加森くんだから。
…私の好きな人は、私の憧れの人でもあるから…。

「おい、行くぞ」
「う、うん!」

私がそう考えている間に、加森くんはもう、出るところだった。
こんなところにいるなんて、居心地が悪いもんね。
それに、もうチャイムは鳴ったし、もうすぐ授業だ。

私も急いで、トイレを出た。

その時。
「加森くん…?」
なぜか加森くんは、左側の廊下を見て、立ち止まっていた。

私も加森くんのところに行くと…

「え…?」

なんと、廊下のど真ん中で、あの4人が、優陽を囲んでいたんだ。
その周りには、大勢の人が集まっていた。

「ほんっと、生意気だよね〜」
「っていうかバカ野、加森のこと好きなんでしょ?」
「いや、ちがっ…」
「ごめーん! 今、何にも聞こえなかった〜! もう一回言って〜!」
「鈴花、やめときな。どうせ、愛の告白でしょ」

4人は、優陽を囲んで大きく笑う。

助けたい。
親友を、大切な優陽を、助けたいけれど、怖くて動けない。

「おい、やめろよ!」

そんな時、気づくと、加森くんがこの場から、4人に怒鳴っていた。

でも。
「あっ! 加森じゃん! ちょうどいい! バカ野、早く告っちゃいなよ〜」
「早く!」
4人のうちの1人が、優陽を蹴る。

「莉奈、こんなに人いるから、告れないでしょ」
「確かに! じゃあ、私たちが代わりにやってあげるよ!」

すると、1人が優陽を無理やり立たせて、加森くんの方に無理やり押した。

「早く言いなよ〜」
「もう、ハグしちゃえば?」
「良いね〜! 『好き〜!』って言っちゃいなよ〜」

そう言って優陽を4人が押して、加森くんと優陽の距離はどんどん縮まっている。

「ちょ、ちょっと! やめなよ!」

私は頑張って声を出したけれど。

「もしかして、あんたも加森のこと好きなの? バカ野、失恋決定じゃん!」

4人が思いっきり優陽を押して、優陽は転んだ。
それを見て、4人は笑ってる。

私のせいだ…

「立ち上がれないの? じゃあ、このまま蹴ってあげる?」

4人が、転んでいる優陽を足で蹴ろうとする。
助けたいけれど、私が言ったら、またさっきみたいになる。

加森くんは、私の横でずっと、立ったまま。

どうしよう…

その時。
私と加森くんの後ろから、誰かが走って通り過ぎて行った。

そして、
「大丈夫? 藤野さん」

優陽に、手を差し伸べている。

「…大原くん…」

そう。私と加森くんの後ろを通って、優陽を助けようとしたのは、大原くんだった。

「はぁ? また?」
「ほんと、大原ってバカ野のこと好きだよね〜」
「変な人を好きになるよね、大原」

大原くんでも、助けられないのかな…

不安になった。
でも。

「俺のこと、どんなこと言われても良いけど、俺は藤野さんと付き合ってるから。藤野さんは、加森のことなんか好きじゃないよ。俺ら、付き合ってるから」

この場にいる全員が、目を見開いた。

4人まで、びっくりして声も出てない。

「っていうか4人とも、こんな大勢の人に見られていいの? 藤野さんより、お前らの方が嫌われてると思うけど」

大原くんがそう言うと、4人は慌てて走って逃げて行った。

すごい! 大原くん!

「…ごめん… 大原くん…」

今にでも消えそうな声でそう言ったのは、優陽。

すると、大原くんは優陽の耳もとでなにかを言った。

「おい! お前らなにやってんだよ!」

その時、先生がやってきて、このことは、解決した。

「優陽… 助けられなくて、ごめんね」

放課後になって、私はすぐに優陽のところに駆けつけた。
そして、いつものように一緒に帰る。

「なんで星乃が謝るの? 私がいじめられてたから悪いんだよ。…っていうか私、あの子たちに、なんか悪いことしたのかな…?」

優陽がそう言って、思った。
やっぱり、優陽は天然で、すごく可愛い、って。

4人が優陽をいじめてる理由は、決まってる。
4人は、優陽が、可愛くて天然でモテる優陽が、うらやましくて、いじめてるんだ。

そんなことに気づかない優陽も、すごく可愛い。

だから、思ったことは言わないことにした。

「大原くん、すごかったよね」
「…うん。いつも、私がいじめられてる時、助けてくれるの」

優陽が大原くんのことを好きになった理由。
ほとんどわかったけれど、優陽は話してくれた。

「私、5ヶ月前くらいから、いじめられててさ。いじめのきっかけは、あの子たちと仲良くなった時だったの。『一緒に遊ぼ!』って誘われて、行ったのが、きっかけだった」

「公園に、行ったの。そしたら、あの子たち、急に私のことをいないように接してさ。私の目の前で、私の悪口とか、私の黒歴史とかを言い始めて。『なんでそんなことするの?』って言ったんだけど…。それが、いじめの始まりだった」

私は、黙って頷く。
優陽は、明るく話しているけれど、優陽の顔を見れば、どれだけ辛かったかわかる。
優陽の苦しみはわからないけれど、苦しかったんだな、ってことはわかる気がする。

「それから毎日、公園に呼ばれるようになった。1回行かなかった日があったんだけど、次の日、教科書が全部無くて…。その時、あの子たちは笑ってて、もう逆らうことはできないんだな、って思ったの」

だんだん、優陽の目がうるっとしてきてる。
でも、気にしないふりをして、話の続きを聞いた。

「…この頃、急にひどくなってきて、学校でいじめられるようになったの。その時、気づいてくれたのが、大原くん。いつもかばってくれて…。嬉しかったの…。
でも…」

優陽の頬に、涙が流れた。
もらい泣きしそうになる。

「大原くんが巻き込まれるようになって…。それで、大原くんが巻き込まれるのが嫌で、あの子たちがいない時に、『もういいよ』って言ったの。その時…」

「『俺のことは気にしなくて良いから。自分の気持ちに嘘をつかないようにして、もう1回考えてみて。助けてほしい気持ち、わかるから。俺は、藤野さんを助けたいんだ』って言ってくれて…」

「それで、好きになったの…っ」

そこで、優陽の話は途切れた。

話すだけでも、思い出すだけでも辛くて苦しいはずなのに、全部話してくれて、ありがとう。

そう思うと、私も涙が出てきた。

「…ごめんね、気づけなくて…」
「…ううん」
「本当に、ごめんね…」
「…ううん」

優陽は頑張って涙を我慢して、無理やり笑っているのに、私が泣くなんて、ひどいよね…

ごめんね、優陽…

すると、優陽が私に抱きついてきた。
「…どうしたの…?」

優陽はなにも喋らないけれど、体が震えてる。
静かに、バレないように、泣いてるんだなってことがわかった。

「…私… 大原くんに告白したの…っ」
「…えっ…?」

「でも… ふられたよ…。大原くんは、やっぱり… 星乃のことが好きなんだね…っ」
「…えっ…?」

でも、あれは嘘の告白なんだよ。
私は、本当に大原くんに告白されたわけじゃないんだよ。

「…星乃は… 良い子だから、好かれるんだよね…っ。私は… いじめられるくらい、悪い子だから…っ」
「…ううん…っ」
「……っ」

私は、優陽を見ながら、涙を我慢して、なるべく笑って。

「私も、加森くんにふられたよ。…加森くんはきっと、優陽のことが好きなんだよ。そんな噂も、あったでしょ? だから、私と優陽、似たもの同士だよ」
「…え…っ?」
「だから、お互い頑張ろう。真剣に、ちゃんと、気持ちを伝えよう」

すると、優陽は涙で濡れた顔で、ニコッと笑って、大きく頷いた。


私たちは、なにがあっても壁を乗り越えれる。
だって、私たちは、最高の親友で、仲間だから。


2日後。
あれから、優陽へのいじめはおさまって、優陽がまた笑顔になった。
それが嬉しくて、今は忘れていたけれど…。

『…私、加森くんのことが好き』
『…ごめん。俺…』

あの会話を思い出して、現実に戻るような感覚になった。

そうだ。私は、加森くんにふられた。

でも、優陽と約束した。
『真剣に、ちゃんと気持ちを伝える』って。

だから、今日。
決心したけれど、なかなか加森くんに話しかけられない。

その時。
「あの、大原くん」

私より先に、優陽が大原くんに話しかけていた。

「…どうした?」
「…話があるの。ちょっと来てほしいんだ」
「…いいよ」

2人は、教室を出て行った。

よし。私も!
加森くんを見つけて、話しかけようとした、その時。

「あっ、鳴山!」

なぜか加森くんが先に、私に話しかけてきた。

「えっ?」

なぜか、加森くんは息がきれてる。

「…探してた」
「…え?」

私を、探してた…?
それって…
どういうこと?

「お前に話したいことがあるんだ。どこがいい?」
「…どこ、って?」
「場所」
「…屋上、かな」

一番最初に思いついた場所は、屋上だった。
屋上は、前に加森くんと話したときに行った場所でもあるし、私が好きな場所でもあるんだ。

「行くぞ」

加森くんは、私をおいて、歩いて行った。
私も急いで加森くんを追いかける。

そして、屋上についた。
加森くんは、私に背中を向けて、なにも喋らない。

「話、って?」

私がそう言うと、やっとこっちを向いた。

でも、
「え…? 泣いてるの…?」

なぜか、加森くんは泣いていた。

「…ごめん…」

聞いたことない、消えそうな声。
いつも明るくて面白い加森くんからは、聞いたことがあるわけない。

「…俺さ… ずっと、お前のことが好きだった」
「…え?」

どういうこと?

「…日向がお前に告白する前から、ずっと好きだった。だけど… 俺、お前が俺のこと好きって、聞いちゃったんだ…」
「…うん…」

「…どうやって接したらいいかわからなくて…。それで、鳴山を傷つけた」
「……」

「日向がお前に告白したのは、俺のせい。俺が… 俺が、鳴山が本当に俺のこと好きか、確かめたくて…。あの頃の俺は、おかしかったんだ」
「…え?」

「自分がどうしたいのか、わからなくなって…。その時、日向に言われたんだ。『お前は自分の気持ちに嘘をつくなよ。まっすぐ向き合え』って」
「…うん」

「それで、前、お前に言ったんだ。謝ろうと思って。…でも、俺、言葉間違ったんだよな…。ごめん」

加森くんが、前に私を呼び出した時。『話、聞いてたんだろ?』と言われた時。
その時、加森くんは私に謝ろうとしてくれたんだよね。

でも、私は逃げた。
怖くて、ふられるのが怖くて、逃げた。

ごめんね、加森くん。
伝えようとしてくれたのに、ごめんね…

「…本当に、ごめん」
「…うん…」

加森くんを見ると、涙が出てくる。
でも、頑張る。
私が先に、伝える。

「…ねぇ、加森くん」
「ん?」
「…好きだよ」

頑張って笑顔をつくって、そう言うと、加森くんはいつもの元気な笑顔を見せて。

「…俺も」
「うん!」

私、やっぱり加森くんのことが、好きだ。
私を傷つけた、って謝ってくれた加森くんを。
いつも、輝いている加森くんを。

「なぁ、星乃」
「…えっ、なに?」

初めて、『星乃』って言われた喜びと、驚きが混ざって、変な反応になる。

「日向と藤野、上手くいってるよな」
「…うん!」

その瞬間、思った。
優陽も、私も、気づかないうちに、好きな人と両思いで、幸せだったんだ、って。

優陽。
今ごろ、笑顔だよね。
きっと、大原くんと笑い合っているよね。

そう思いながら、私は加森くんと、手を繋いで歩き出した。

今までで1番、空が輝いているように感じた。

作者メッセージ

初めての投稿です!
ぜひ、読んだらコメントをお願いします!
アドバイスとか、感想とか大歓迎です!

2024/11/04 15:31

流亜
ID:≫ 66LXPW8MiRrsw
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