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音楽の神様 〜夏のコンクール編〜

#1

プロローグ

「音楽の神様」を祀る音嶺神社。
毎年音楽にまつわる人々が、大切な演奏会やコンクールの前にやって来る。
年間、25万人を超える人々が訪れる、日本一の音楽系神社だと、そう呼ばれていた。


「理央、前見ないと転ぶぞ、」

俺は目の前の理央に向けて声をかける。
段ごとに幅が大きく違う階段を後ろ向きで登る理央をみていると、転んで手を怪我しないか不安になる。

「だいじょ〜ぶ!」

目の前で能天気に話す彼を見ると、いつもの副部長としての態度と正反対で笑えてくる。

音嶺神社と青柳高校を繋ぐ一本の裏道は、登り階段、しかも段数315段(部員調べ)という地獄の階段だった。

俺達青柳高校吹奏楽部は毎年部長、三年副部長が音嶺神社に金賞の祈りを込めてお参りする、というコンクール前の風習がある。

風習、といっても作られたのは5年前、学校初の全国金賞を手に入れた代の先輩がコンクール前にお参りしたことからきているだけであり、必ず行かなければならない、というわけではない。
あくまでも部長の判断で、というわけだ。

「理央、前」

考えながら歩いていると唯一の踊り場の柵に理央がぶつかりそうになっている。

大きな怪我をすることでもないだろう、と少し遅めに声を掛けると、理央はクルッと一回転して柵をギリギリのところで回避した。

「危なっ、ギリギリセーフ」

「いい加減前見て歩け」

コンクールを来週に控えた中で、部活を抜け出してまでお参りし、ふざけてケガしましたなんて顧問の先生に報告できない。

「笑、音楽に関わることだけなら、唄も真面目になるんだけどな、まあ、それがお前のいいところでもあるんだけど」

「わかったから、進むぞ」

そんな話をしながら、俺たちは音嶺神社の鳥居をくぐった。




「それにしても、この時期は人少ないな」

夏と冬に多くの人がやって来る音嶺神社は、秋、10月にもなると、人はまばらになる。

「まあ、この時期にここに来るのは有名なプロ奏者か、よっぽど余裕がある全国出場校しかいないどろうからな、」

「俺たちは?」

「余裕はないけど近くだから来た人」

「だよな笑」


道の真ん中を避けつつも境内を歩くと、階段を少し上がり、賽銭箱の前に着く。

少し離れた賽銭箱に五円玉と五十円玉を投げ入れ、一礼し、二人揃って手を合わせる。

(全国金賞、絶対獲ります)




後日。
2017年。
吹奏楽部、全国の強豪が集い、最後の演奏が行われた。

「悔いの無い演奏を、日本一の青柳高校吹奏楽部の演奏を、全国に響かせるぞ!」

本番の舞台袖で唄が言った言葉は、吹奏楽部全員の心に響く。

その日のトランペットのソロは完璧だった。

演奏後にトランペットを専攻する審査員の先生から、賛辞を受け取り、プロの交響曲団のスカウトの名刺を受け取るほど、彼の演奏は完璧で、儚く、何よりも美しかった。





2017年 10月 全日本吹奏楽コンクール
青柳高校、ゴールド金賞。


部長、音嶺唄、三年副部長、早瀬理央が主軸となった青柳高校5年連続金賞という、快挙が成し遂げられた日だった。


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作者メッセージ

初投稿&初シリーズとなりました。

読み方
音嶺神社(おとみねじんじゃ)
青柳高校(あおやなぎこうこう)
音嶺唄(おとみねうた)
早瀬理央(はやせりお)

物語の原点、0話とも言うべきお話です。
次回の一話からは新しい主人公、登場人物とともに、一から部を作り変える話を書いていきます。

修正/2025 10.28

2025/10/28 17:56

羽月
ID:≫ 041SeWM/cfQKs
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青春吹奏楽吹奏楽部楽器

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