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そこの君、「思い出」を売ってくれないか?

俺の名前は 氷見 集 読み方は勝手に想像してくれ。

俺はソシャゲやらアニメやらなんとやらを愛する人間だ。

総プレイ時間、総視聴時間は自分で言ってもビックリする。(前、数えてみたらとんでもなかった。怖いから言わない。)

でも今日は学校があるからな。

愛が減る一日だ。

そして今は登校中。割と家から遠いのに、自転車の使用許可が下りないので使わない。田舎だからな。困るぜ。

そして遅刻しそう…かもしれない。

ペースを上げる。

ストライドも増幅させる。


そうすると後ろから

「そこの君、思い出を売ってくれないか?」

突然そう言われた。胡散臭い男に。通学途中だってのに。邪魔されてる暇は無いのに。遅れそうなのに。

「[小文字]あっ、ごめんなさい。俺予定あるから…[/小文字]」

大きな声が出なかった。これが声を出してこなかった奴の未来だ。こういう時に困る。

「だからさ、思い出を売ってくれ。10万円。どう?どう?」
「どうも何も、曖昧すぎだろ。思い出って。何が思い出で何が思い出じゃないんだよ。」

突っ込むときは声が出る。俺はツッコミ担当らしい。

胡散臭い男はこう答えた。
「いやだから思い出だって。わかるでしょ?」
「分かんねーよ!」

それが曖昧だって言ってんのに…

「10万だよ?欲しくないのかにゃ?」
「急に語尾を変えるな。…いや、欲しくないことは無いけども。」
男は間髪入れずに
「その言葉を待ってました!はい、これ読み込んで!」

そう言い、コードを見せつけてきた。横には数字が羅列する。

「は?」
「こうしてこうしてこう!ほらできた。架空の口座に10万円!!」
「こうしてこうしてこう!の間に何された?!」
「ちょいちょいとやりましたよ。」
「それを教えろ!!」

画面を見る。 ガチで10万入ったのか?

「嘘はつかないさ。思い出を売ってくれたからね。」
「いやでも、特に異常は…」
「それでオーケー。それ実は嘘だったのさ!」
「嘘つかないって言ったろ!!」
「思い出売る前だったもーん。」

うざい

「…それより君、学校は大丈夫なの?」

画面を見る。横に羅列する数字は 8:32 

「あーもう最悪遅刻だよ」
「出席日数足りて無さそうだもんね」

うざい

あと俺は中学だ。公立だし。

でも、怒られるだろうな。

不審者と話してました。  じゃ、言い訳にならないよ。

「どうしてくれるんだ!」
「でも撲、10万あげたよ。」
「撲は一人称じゃねえよ。紛らわしいもん使うな。」

でも、10万が本当なら相当感謝だ。

犯罪ではなかろう。 これは言い訳できる。

「じゃーねー」

最後までウザかった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「記憶屋って知ってる?」


そんな声が聞こえてきた。

いつも同じメンバーでつるんでいる女子グループから聞こえてきた。

決して、盗み聞きしていたわけでは無いことをここに誓う。いやホントにね。

だが、何か既視感が。記憶屋?

条件反射で調べる。(この学校ではケータイ禁止だ。絶賛ルールを破っている。)

どうやら、ラノベの題名だったらしい。

よく創作でありがちな、「思い出を高額で売ってなんやかんや…」のお話らしい。

さっき出会ったな?!

10万くれたあの人!



あと記憶屋て。薬の屋なら聞いたことあるが。

「記憶屋 評価」 で調べてみる。

…かなり評価が高いではないか。

おやおや、最近のコメントばっかりだぞ。

以下、コメント
「へんな人だった、けれど、10万円、もらえた。」
「ケータイなかったからもらえなかった 。最悪。この話本当らしいし…。もうマジで。」
「記憶に異常が見られないため、ただのお金くれる人間だった。電子マネーってところが面白い。」

ホントにラノベのコメントか?

そのサイト名は、面白ライトノベル集ではなかった。
「オカルトの館」だった。一生開かないようなサイトを開いてしまった。

コメントを見るに、朝会った男と同一人物だろう。

こんなにやってたらあいつ金欠だろ。と、どうでもいい心配をする。

記憶屋と言っておいて、思い出を買うと言っておいて、何も被害は出ていない。

創作のこの手の話では基本、記憶売っちゃった奴が不幸になっていく。つまり、この話はBADENDでオチる。

でも、俺含め、10万もらった奴は思い出どころか記憶すら失っていない。

つまりHAPPYEND?


そうなのかもしれない。


記憶が消されていたとしても、消されたことに気づけなければ消されたことにならない。


それは存外、真実なのかもしれない。


俺自身がそうかもしれないからだ。


「かもしれない」でしか語れない。


記憶が消された''かもしれない''から。



ならば、そんなこと、気にしなくてもいいのだ。

たとえ忘れても。忘れたとしても、その時が楽しかったのならば。

思い出として残っていなくてもHAPPYなんだ。ENDはつかない。




ケータイの画面を見ながら、そう思う。

ホーム画面に戻る。

条件反射で僕が愛するソシャゲ「Land of Evil」を開く。

ロードなげー。

どこまで進めたっけな。何しようかな。ほぼエンディングまで見たし…

短時間でできること…


…ありゃ?

全部 未クリア?



え?


まさか


俺は、スマホの内部データを覗くアプリを見る。(俺はプレイ時間をいつもここで確認している。)


「[小文字]カスが…[/小文字]」

この言葉はツッコミではなく、ただの落胆だった。 

風船のように、声がしぼむ。



俺はもう一度あのサイトを開く。

一生開かないだろうな。と、思っていたサイト。「オカルトの館」である。


以下、俺のコメント
「怪しい、胡散臭い奴からは離れろ。そういうのを不審者っていう。 とにかく、思い出が消される。 すぐ逃げろ。」





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それから俺は、「Land of Evil」のエンディングを回収すべく、夜な夜なゲームをした。







「Land of Evil」は、BADENDで幕を閉じる。

創作において、「思い出を売る」ってのは基本BADENDだ。




俺は記憶''は''消されていない。''思い出''は消された。

でも、ゲームをしている間は楽しい。僕の愛。

その時が楽しかったのならば。

思い出として残っていなくてもHAPPYなんだ。ENDはつかない。


どうやら、この話はHAPPYENDで幕を閉じるようだ。

作者メッセージ

なんか、程よい感じに書けました。

構成が前書いた物語と似ていることから鑑みるに、僕の癖なのでしょう。

僕も作中の氷見のように、ソシャゲやらアニメやらなんとやらが好きですね。

氷見は僕の化身なのでしょうか。 どうやらそうらしいです。

ちなみに、氷見 集 の読みは ひみ たかる です。  以上です!

2025/12/13 11:47

n氏
ID:≫ 15/k7pnxnDS1U
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