期末テスト最終日。教室の空気は、いつもよりほんの少しだけ張りつめていた。
「それでは……始め!」
先生の声が静かな教室に響く。昔の私だったら、その合図と同時に勢いよく解答用紙をめくっていただろう。でも、今は違う。
一度ゆっくり深呼吸をする。気持ちを落ち着けて、問題文をじっくり読む。
――成長したな、私。
カリカリカリ……。
教室には、シャーペンの走る音だけが静かに響いていた。長いようで、でもあっという間の時間が過ぎていく。そして――
「終了です。ペンを置いてください。」
……終わった。私はふうっと息をつき、椅子の背もたれに体を預けた。
[水平線]
〜テスト終了〜
(いえええええい!!家に帰って遊ぶぞおおおお!!)
心の中で盛大に叫んだ、その瞬間。
[太字]ガガッ……。[/太字]
校内放送が入った。
『電車がトラブルのため、現在運転を見合わせています。電車通学の人は教室に残ってください。歩きや自転車の人は帰っても構いません。』
な、なんだってー!
このまま学校で待つのは、正直ちょっとイヤだ。私は少し考えて、決めた。
根性で歩いて帰るしかない☆
カバンを背負い、私は学校を出た。
[水平線]
テクテク。テクテク。テクテクテクテク……。
最初は余裕だった。
「これ、散歩みたいなもんじゃん!」
なんて思いながら歩いていたけれど――ふと、前から歩いてくる人影が目に入った。
小さめの背中。近づいてきて、私は思わず足を止めた。
(……あれ)
見覚えのある顔。いや、たぶん間違いない。
小学生のころよく一緒にいた後輩の子だ。
同じスイミングスクールで「今日は25メートルタイム測るよー!」ってコーチに言われて、二人で笑いながらプールサイドに立った。
同じパソコンクラブでも、隣の席だった。課題が終わったあと画面をのぞきこんで
「それどうやるの?」
「こうだよ、ほらクリックして――」
って、ずっとおしゃべりしていた。
プールの塩素の匂い。キーボードを叩くカタカタって音。放課後の教室のオレンジ色の光。
そんな記憶が、一気に胸の奥からあふれてきた。
相手も、私のほうをちらっと見た。
目が合う。一瞬だけ。
そのまま、何事もなかったみたいに視線を外して、通り過ぎていった。私は振り返りもしない背中を、ぼんやり見送る。
(……覚えてないか)
まあ、仕方ないかもしれない。
中学校のころから私、髪型だいぶ変えたし。背も少し伸びたし。
それに、たぶん向こうにとっては、私は「昔ちょっと一緒に遊んだ人」くらいの存在だったのかもしれない。
でも、さっきまで頭の中にあふれていた思い出だけが取り残されたみたいに、静かに残っていた。
私は小さく息を吐いて、また歩き出す。
テクテク。テクテク。
[水平線]
四十分後。
「も、もう無理だ……」
足は棒。カバンは教科書持ち帰りすぎで重い。心がポキッと折れかけている。
「…………家…………」
そのときだった。ふと顔を上げると、視界の先に見慣れた屋根が見えた。
「あっ……!」
目の前に迫る、我が家。
「やった…!」
こうして私は、ついに家へたどり着いた。ドアを開けながら、心の底から思う。
「もう二度と歩いて帰らない……」
……と言いたいところだけど。
ちなみに、歩いて帰るのはこれで二回目。
だからこうなることは、実は最初から覚悟していたんだよ☆
おわり
「それでは……始め!」
先生の声が静かな教室に響く。昔の私だったら、その合図と同時に勢いよく解答用紙をめくっていただろう。でも、今は違う。
一度ゆっくり深呼吸をする。気持ちを落ち着けて、問題文をじっくり読む。
――成長したな、私。
カリカリカリ……。
教室には、シャーペンの走る音だけが静かに響いていた。長いようで、でもあっという間の時間が過ぎていく。そして――
「終了です。ペンを置いてください。」
……終わった。私はふうっと息をつき、椅子の背もたれに体を預けた。
[水平線]
〜テスト終了〜
(いえええええい!!家に帰って遊ぶぞおおおお!!)
心の中で盛大に叫んだ、その瞬間。
[太字]ガガッ……。[/太字]
校内放送が入った。
『電車がトラブルのため、現在運転を見合わせています。電車通学の人は教室に残ってください。歩きや自転車の人は帰っても構いません。』
な、なんだってー!
このまま学校で待つのは、正直ちょっとイヤだ。私は少し考えて、決めた。
根性で歩いて帰るしかない☆
カバンを背負い、私は学校を出た。
[水平線]
テクテク。テクテク。テクテクテクテク……。
最初は余裕だった。
「これ、散歩みたいなもんじゃん!」
なんて思いながら歩いていたけれど――ふと、前から歩いてくる人影が目に入った。
小さめの背中。近づいてきて、私は思わず足を止めた。
(……あれ)
見覚えのある顔。いや、たぶん間違いない。
小学生のころよく一緒にいた後輩の子だ。
同じスイミングスクールで「今日は25メートルタイム測るよー!」ってコーチに言われて、二人で笑いながらプールサイドに立った。
同じパソコンクラブでも、隣の席だった。課題が終わったあと画面をのぞきこんで
「それどうやるの?」
「こうだよ、ほらクリックして――」
って、ずっとおしゃべりしていた。
プールの塩素の匂い。キーボードを叩くカタカタって音。放課後の教室のオレンジ色の光。
そんな記憶が、一気に胸の奥からあふれてきた。
相手も、私のほうをちらっと見た。
目が合う。一瞬だけ。
そのまま、何事もなかったみたいに視線を外して、通り過ぎていった。私は振り返りもしない背中を、ぼんやり見送る。
(……覚えてないか)
まあ、仕方ないかもしれない。
中学校のころから私、髪型だいぶ変えたし。背も少し伸びたし。
それに、たぶん向こうにとっては、私は「昔ちょっと一緒に遊んだ人」くらいの存在だったのかもしれない。
でも、さっきまで頭の中にあふれていた思い出だけが取り残されたみたいに、静かに残っていた。
私は小さく息を吐いて、また歩き出す。
テクテク。テクテク。
[水平線]
四十分後。
「も、もう無理だ……」
足は棒。カバンは教科書持ち帰りすぎで重い。心がポキッと折れかけている。
「…………家…………」
そのときだった。ふと顔を上げると、視界の先に見慣れた屋根が見えた。
「あっ……!」
目の前に迫る、我が家。
「やった…!」
こうして私は、ついに家へたどり着いた。ドアを開けながら、心の底から思う。
「もう二度と歩いて帰らない……」
……と言いたいところだけど。
ちなみに、歩いて帰るのはこれで二回目。
だからこうなることは、実は最初から覚悟していたんだよ☆
おわり