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【曲パロ】歌って踊ってパロって!

#8

Wrong Side Out/CG5【!】

工場の扉を押した瞬間、錆びた鉄の匂いが鼻を突いた。十年前、この場所は子供の夢と笑いで満ち溢れていたはずだった。
今はもう、死んでいる。そう思った。

だが足を踏み入れると、死んだはずの空間に微かに息づく気配があることに気づく。廊下の壁にはひび割れたポスター、床には埃で覆われた足跡の形。どれも微かに、誰かの存在を主張しているようだった。
懐中電灯の光が揺れ、青い笑顔が浮かぶ。巨大なマスコット――ハギーワギー。
立ち止まる俺を見つめている。目が、確かに俺を追っている。
「……戻るんじゃなかったのか?」
震える声で呟く。答えは返ってこない。



階段を降り、地下研究区画に足を踏み入れる。空気が急に冷たく重くなる。胸の奥に言い知れぬ不安が広がった。
これが、あの実験の跡か――。
天井からピンク色の腕が垂れ下がる。その先端には、ゴムのように伸びる体。
マミーロングレックスが長い腕を揺らし、首を傾けて笑っていた。
「遊ぶ時間よ…」
囁きが、床に響く。理性が逃げ出そうとする自分に、必死で足を動かす。

廊下を曲がると、影が揺れる。紫色の猫型、キャットナップ。眠らせる赤いガスを吐きながら、静かに笑う。
心臓が凍りつく。俺は、逃げながらもその美しく不気味な動きに目を奪われていたのだ。
背後で、犬の顔をしたドッグデイが飛び出した。
「こいつのガスを吸うな!まだ出口は…」
必死な声が耳に刺さる。だがその先、床がゆっくり盛り上がり、粘土の塊が立ち上がった。
ドーイ・ザ・ドーマン――腕を伸ばし、低く呻く。
「守るはずだった…みんなを…」
その声には、絶望と怒り、そして自分への責めが混ざっていた。俺は息を呑む。彼もまた、裏返された存在なのだ。
 
暗がりから、低く冷たい声が響く。
「戻ってきた人間がいる。」
声の主――ハーレーソーヤー博士。影だけがゆらめき、天井の奥で存在感を放つ。その一言で、廊下の奥にうねる影が目覚める。全ての異形の動きが連鎖する。
博士は姿を現さず、ただ計画を見守るだけ。だが、ここにある恐怖のすべてが彼の仕業であることは分かる。

照明が一斉に点き、スピーカーから低い機械音が響く。天井の奥に存在感を放つ紫の三つ編み――リリー・ラブブレイズ。新たな実験体。人形のような外見に反し、目には悲しみと憤怒が宿る。
「出られないわよ。」
糸の腕がゆっくり伸びる。
俺は逃げたい。だが同時に、彼女の悲しみが胸を締め付ける。人間だったはずの彼女が、今は操られる存在――裏返された世界の証だ。

ガラスケースの中で小さな赤い人形――ポピーが微笑む。その表情は静かだが、どこか鋭い光を帯びていた。
「全員、裏返っちゃったの…」
小さな声が胸に響く。俺は理解する。
ここはかつての子供の夢の場所ではなく、人間と玩具の境界が溶けた世界だ。
青い影がうごめき、ピンクの腕が伸びる。紫のガスが廊下に漂い、粘土の腕が床を突き破る。
リリーは立ち止まり、糸の腕を俺に向ける。
「逃げなさい…でも覚えて…私たちは、まだあきらめていないの」 

息を切らし、俺は出口へ走る。背後で無数の影が蠢く。胸が張り裂けそうになる。
恐怖と悲しみ、そして理解――
ここにいる者たちは全員、裏返された存在であり、本当の意味で自由な者はいないのだと。
振り返ると、工場の窓の奥に全員の影が並んでいた。全員が静かに俺を見つめ、まるで囁く。


「私たちはもう、裏返されたんだ」


扉が静かに閉まり、工場は暗闇に沈む。心臓がまだ早鐘のように打つ。
この世界の裏側で何が行われていたのか、そして今後誰がこの場所に閉じ込められるのか。
  


答えは誰も知らない。

2026/03/08 18:53

白妙かなめ
ID:≫ drkoV7421/l0I
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