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【曲パロ】歌って踊ってパロって!

#1

Jester/black gryph0n【!】

最初に異変を感じたのは、みんなが同じ夢を見始めたことだった。
それは妙に明るい夢だ。
色彩が過剰で、音楽が途切れず、知らないはずの場所なのに懐かしい。夢の中では誰もが笑っている。理由もなく、ただ「楽しい」という感情だけが押しつけられる。
目が覚めると、夢の内容はすぐに薄れる。だが、感情だけが残った。楽しかった、はずだ。
そう思い込まされているような、後味の悪さ。


ある日、同僚が言った。
「昨日も行った?」
行った、という言い方に引っかかった。夢を“見た”じゃない。“行った”。

[水平線]


その夜、俺は意識的に眠りについた。逃げるためじゃない。確かめるためだ。
瞬き一つで、世界は切り替わる。


眩しいほどの光。どこまでも続く広場。
空には広告のような文字が流れ、意味を成さない祝福の言葉が降り注いでいる。
人はたくさんいる。
だが、誰一人として顔を覚えられない。視線を外した瞬間、特徴が抜け落ちる。“人”という概念だけが並んでいる。
音楽が鳴る。楽しげで、軽快で、拒否する隙を与えないリズム。胸の奥がざわついた。
ここは安全だ、と誰かが言っている。危険だ、と別の誰かが叫んでいる。


両方とも、自分の声だった。


近くにいた存在が話しかけてくる。
「初めて?」
声は優しい。だが、内容が頭に入ってこない。言葉が、感情に変換される前に消えていく。
「ここでは、考えすぎない方がいいよ」
その瞬間、広場の端で誰かが立ち止まった。戸惑い、恐怖、疑問。それらを抱えた途端、その人は“滑らかに”崩れた。
血も骨もない。ただ形だけが意味を失い、背景と同化していく。誰も騒がない。音楽は止まらない。
理解した。ここは閉じ込める場所じゃない。


選ばせない場所だ。


現実に戻ることはできる。だが、戻った人間は少しずつ変わる。感情が単純になる。怒りや悲しみが、処理落ちしたみたいに消えていく。笑顔だけが残る。

[水平線]

数日後、街中で同じ“目”を見た。夢の中の、あの人たちと同じ目。 


逃げる必要はない。
拒否する必要もない。

そう囁く声が、現実の雑音に紛れて増えていく。眠る前、俺は思う。今夜もきっと“行く”のだろう。
それでも、まだ一つだけ確認していないことがある。




――最初に、あれを作ったのは誰だ?

問いを浮かべた瞬間、胸の奥がひどく冷えた。なぜか、その答えを知っている気がしたからだ。




音楽が、もう鳴り始めている。

2026/02/08 11:41

白妙かなめ
ID:≫ drkoV7421/l0I
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