第一共鳴ホールの扉が開いた瞬間、空気が変わった。
広大な円形ホール。天井には黒い音響パネルが敷き詰められ、床には十五の光のリングが円を描くように並んでいる。
その光景を前に、候補者たちは息を呑んだ。
「……すごい」
ユウキが小さく呟く。みやは目を輝かせて跳ねた。
「うわぁっ! なんか戦隊モノの基地みたいじゃん!僕ここ好きー!!」
「静かにしなさい」
栞が眉をひそめる。
「ここは音を測る場所よ。あなたの声で空気が乱れる」
「えっ、僕の声そんな強いの?」
「強いわよ。無駄に」
「ひどっ!」
そんなやり取りの横で、如月はふわりと笑っていた。
「んふふ……にぎやかですねぇ。」
その時、ホールの奥から足音が近づいた。
「おねーちゃんっ!!」
白いワンピースがふわりと揺れ、白髪ロングの少女が如月に抱きついた。
如月星羅。低音特化枠の候補者。
「星羅……来てたんだ」
「うんっ! おねーちゃんと一緒に歌えるの、すっごく楽しみなんだよ〜!」
星羅は嬉しそうに頬を寄せる。如月は相変わらずふわふわした笑みを浮かべた。
「わたし、如月星羅ですっ!おねーちゃんの妹だよ〜! よろしくね、君達!」
みやが目を丸くする。
「妹なんだ…あれ、でも如月って……」
「おねーちゃんはね? 女の子じゃないんだよ〜。でも男の子でもないんだよ〜。すごいでしょ〜?」
「……情報量が多い」
栞が額を押さえた。
その時、別の方向から小さな声が響いた。
「みんなー! さなだよーっ!」
パステルカラーの服、ふわふわツインテール。猫耳フードのパーカーを揺らしながら、ぬいぐるみを抱えた少女が走ってきた。
仲本さな。即興枠の最年少候補者。
「おにーさん、おねーさん、よろしくねっ!さな、今日すっごく緊張してるの……だから、なでなでして?」
「えっ、あ、うん……」
みやが戸惑いながら頭を撫でる。
「えへへ〜! ありがとっ!さな、これで100倍がんばれるよ!」
「……この子、強いわね」
栞が呟く。
「甘えながら場を支配してる……」
ユウキも思わず感心した。如月は星羅の肩に手を置きながら、ふわりと笑う。
「即興枠……面白いですねぇ。」
そんな騒がしい空気を切り裂くように、ホール全体に低いチャイムが響いた。
『――適性検査、第一段階。“共鳴テスト”を開始します』
天城博士が姿を現した。
「皆さん、光のリングの上に立ってください。これから行うのは、“声を合わせる”ための最初の試験です」
候補者たちはそれぞれのリングに立つ。ユウキは深く息を吸い、心を静めた。
(……俺の声は、他人と合わせられるのか?)
博士が説明を続ける。
「共鳴テストでは、あなた達の声が“どれだけ他者と干渉し、調和するか”を測定します。高音、低音、即興、共鳴……枠が違えば声の役割も違う。しかし、粒子を止めるには“十五人の声が揃う瞬間”も必要です」
博士の視線が全員をゆっくりと見渡す。
「では――始めましょう」
[水平線]
ホール中央に、透明な音響パネルが浮かび上がる。そこに“基準音”が表示された。
ユウキはすぐに理解した。
(……この音に合わせて歌え、ということか)
博士が手を上げる。
「三、二、一」
基準音が鳴り響いた。
ユウキは迷わず声を出す。揺れない高音。呼吸は一定。音程は完璧。
その瞬間、ホールの空気が震えた。
「すご……」
みやが思わず呟く。如月は目を細めた。
「きれいですねぇ……嘘です。本当は、ちょっと怖いですねぇ」
星羅は如月の袖を握りながら、低く柔らかい声を重ねた。その低音は、ユウキの高音を包み込むように響く。
(……安定してる)
ユウキは驚いた。星羅の声は、如月とは違い“揺れない”。低音なのに、まるで水のように滑らかだった。
みやも勢いよく声を重ねる。
「いっくよー!!」
その声は強烈で、ホールの空気を押し出すような力があった。
「ちょっと、勢いが強すぎるわよ!」
栞が言いながらも、自分の声を重ねる。彼女の声は、まるで糸を通すように正確だった。みやのやや暴れた音を、見事に“軌道修正”していく。如月はふわりと笑いながら、不安定な高音をあえて揺らし、全体に“隙間”を作る。
その隙間に、さなが即興で声を滑り込ませた。
「さなもいくーっ!」
小さな声なのに、空気を一瞬で変える。即興なのに、全体の音を“繋ぐ”ように響く。
(……すごい)
ユウキは思った。
このメンバーは、バラバラなのに、なぜか“ひとつの音”になろうとしている。博士がモニターを見つめながら呟いた。
「……共鳴率、上昇。このメンバー……面白い」
テストが終わると、ホールは静寂に包まれた。
みやが大きく息を吐く。
「はぁぁぁ……疲れたぁ……!」
「あなた、声出しすぎ」栞が冷静に言う。
「でも、楽しかったよねっ!」
さながぴょんと跳ねる。
「おねーちゃん、どうだった?」
星羅が如月の袖を引く。
「ん〜……みんな、嘘つきですねぇ。でも……悪くなかったですよ。これ嘘じゃないです。ほんとに。」
その言葉に、星羅が嬉しそうに頬を寄せた。博士が歩み寄り、全員に告げる。
「――合格です。あなた達は、今日から正式に《レゾナンス・アカデミア》の生徒となります」
ホールがざわめいた。
ユウキは静かに息を吸った。
(……ここからだ)
歌で世界を止めるための戦いが、今、始まった。
広大な円形ホール。天井には黒い音響パネルが敷き詰められ、床には十五の光のリングが円を描くように並んでいる。
その光景を前に、候補者たちは息を呑んだ。
「……すごい」
ユウキが小さく呟く。みやは目を輝かせて跳ねた。
「うわぁっ! なんか戦隊モノの基地みたいじゃん!僕ここ好きー!!」
「静かにしなさい」
栞が眉をひそめる。
「ここは音を測る場所よ。あなたの声で空気が乱れる」
「えっ、僕の声そんな強いの?」
「強いわよ。無駄に」
「ひどっ!」
そんなやり取りの横で、如月はふわりと笑っていた。
「んふふ……にぎやかですねぇ。」
その時、ホールの奥から足音が近づいた。
「おねーちゃんっ!!」
白いワンピースがふわりと揺れ、白髪ロングの少女が如月に抱きついた。
如月星羅。低音特化枠の候補者。
「星羅……来てたんだ」
「うんっ! おねーちゃんと一緒に歌えるの、すっごく楽しみなんだよ〜!」
星羅は嬉しそうに頬を寄せる。如月は相変わらずふわふわした笑みを浮かべた。
「わたし、如月星羅ですっ!おねーちゃんの妹だよ〜! よろしくね、君達!」
みやが目を丸くする。
「妹なんだ…あれ、でも如月って……」
「おねーちゃんはね? 女の子じゃないんだよ〜。でも男の子でもないんだよ〜。すごいでしょ〜?」
「……情報量が多い」
栞が額を押さえた。
その時、別の方向から小さな声が響いた。
「みんなー! さなだよーっ!」
パステルカラーの服、ふわふわツインテール。猫耳フードのパーカーを揺らしながら、ぬいぐるみを抱えた少女が走ってきた。
仲本さな。即興枠の最年少候補者。
「おにーさん、おねーさん、よろしくねっ!さな、今日すっごく緊張してるの……だから、なでなでして?」
「えっ、あ、うん……」
みやが戸惑いながら頭を撫でる。
「えへへ〜! ありがとっ!さな、これで100倍がんばれるよ!」
「……この子、強いわね」
栞が呟く。
「甘えながら場を支配してる……」
ユウキも思わず感心した。如月は星羅の肩に手を置きながら、ふわりと笑う。
「即興枠……面白いですねぇ。」
そんな騒がしい空気を切り裂くように、ホール全体に低いチャイムが響いた。
『――適性検査、第一段階。“共鳴テスト”を開始します』
天城博士が姿を現した。
「皆さん、光のリングの上に立ってください。これから行うのは、“声を合わせる”ための最初の試験です」
候補者たちはそれぞれのリングに立つ。ユウキは深く息を吸い、心を静めた。
(……俺の声は、他人と合わせられるのか?)
博士が説明を続ける。
「共鳴テストでは、あなた達の声が“どれだけ他者と干渉し、調和するか”を測定します。高音、低音、即興、共鳴……枠が違えば声の役割も違う。しかし、粒子を止めるには“十五人の声が揃う瞬間”も必要です」
博士の視線が全員をゆっくりと見渡す。
「では――始めましょう」
[水平線]
ホール中央に、透明な音響パネルが浮かび上がる。そこに“基準音”が表示された。
ユウキはすぐに理解した。
(……この音に合わせて歌え、ということか)
博士が手を上げる。
「三、二、一」
基準音が鳴り響いた。
ユウキは迷わず声を出す。揺れない高音。呼吸は一定。音程は完璧。
その瞬間、ホールの空気が震えた。
「すご……」
みやが思わず呟く。如月は目を細めた。
「きれいですねぇ……嘘です。本当は、ちょっと怖いですねぇ」
星羅は如月の袖を握りながら、低く柔らかい声を重ねた。その低音は、ユウキの高音を包み込むように響く。
(……安定してる)
ユウキは驚いた。星羅の声は、如月とは違い“揺れない”。低音なのに、まるで水のように滑らかだった。
みやも勢いよく声を重ねる。
「いっくよー!!」
その声は強烈で、ホールの空気を押し出すような力があった。
「ちょっと、勢いが強すぎるわよ!」
栞が言いながらも、自分の声を重ねる。彼女の声は、まるで糸を通すように正確だった。みやのやや暴れた音を、見事に“軌道修正”していく。如月はふわりと笑いながら、不安定な高音をあえて揺らし、全体に“隙間”を作る。
その隙間に、さなが即興で声を滑り込ませた。
「さなもいくーっ!」
小さな声なのに、空気を一瞬で変える。即興なのに、全体の音を“繋ぐ”ように響く。
(……すごい)
ユウキは思った。
このメンバーは、バラバラなのに、なぜか“ひとつの音”になろうとしている。博士がモニターを見つめながら呟いた。
「……共鳴率、上昇。このメンバー……面白い」
テストが終わると、ホールは静寂に包まれた。
みやが大きく息を吐く。
「はぁぁぁ……疲れたぁ……!」
「あなた、声出しすぎ」栞が冷静に言う。
「でも、楽しかったよねっ!」
さながぴょんと跳ねる。
「おねーちゃん、どうだった?」
星羅が如月の袖を引く。
「ん〜……みんな、嘘つきですねぇ。でも……悪くなかったですよ。これ嘘じゃないです。ほんとに。」
その言葉に、星羅が嬉しそうに頬を寄せた。博士が歩み寄り、全員に告げる。
「――合格です。あなた達は、今日から正式に《レゾナンス・アカデミア》の生徒となります」
ホールがざわめいた。
ユウキは静かに息を吸った。
(……ここからだ)
歌で世界を止めるための戦いが、今、始まった。