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星紡ぎのルミナリア

#2

影の足音

そのとき――
地下室の奥から、かすかな足音が響いた。

「……誰か来る」

フィアがアストの手を引く。
アストは石板から離れ、暗がりに身を潜めた。

扉の向こうで、誰かが鍵を回す音がする。

ふたりは息を潜めたまま、
光る星図を背に、影の中で身を寄せ合った。
冷たい空気が肌を刺す。
石の床に落ちる光は、星図の淡い輝きに揺れている。

足音がひとつ。
規則正しく、重く、迷いがない。

「……院長ね」

フィアが息を潜めて囁く。
アストは喉が乾くのを感じた。

院長は星図の前で立ち止まり、光る石板をじっと見つめた。
「……また光っているのか」

その声は低く、震えていた。
恐れとも、焦りともつかない響き。

アストは胸の黒星が反応しないよう、
必死に呼吸を抑えた。
だが、黒星は微かに脈打ち続けている。

ドクン……ドクン……

院長は石板に手を触れ、
深く息を吐いた。

「千年前の封印が……揺らぎ始めている。黒星の子が目覚めたのか……?」

アストの心臓が跳ねた。
フィアがアストの袖を掴む。
その手は冷たく震えている。

院長は続けた。

「王都に知らせねばならぬ。黒星が再び動き出したとなれば……あの“影”が現れる前に、手を打たねば」

影――
その言葉に、アストの胸がざわついた。

院長はしばらく星図を見つめたあと、
ゆっくりと扉へ戻っていった。

足音が遠ざかり、扉が閉まる音が響く。
静寂が戻った瞬間、フィアは大きく息を吐いた。

「……危なかった……」

アストも壁に背を預け、胸の鼓動を落ち着かせようとした。


「院長……黒星のこと、知ってるんだ」
「うん。しかも王都に知らせるって……」
フィアはアストを見つめた。
その瞳には、迷いと決意が混ざっている。

「アスト、このままここにいたら……捕まるよ」

アストは言葉を失った。
逃げる?
自分が?
修道院しか知らない自分が?

フィアはアストの手を握り直した。

「行こう。今しかない。星図が開いたのも、アストが呼ばれたのも……全部、意味があるんだよ」
アストは胸の奥の黒星が、
静かに、しかし確かに脈打つのを感じた。


まるで答えるように。


「……わかった。行こう、フィア」

フィアは微笑んだ。
その笑顔は、風のように軽くて、どこか強かった。



ふたりは地下室を後にし、
まだ誰も動き出していない朝の修道院を抜け出した。
風が吹いた。
フィアの風星が、道を示すように。

2026/01/05 11:54

白妙かなめ
ID:≫ drkoV7421/l0I
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