星読みの村を離れ、アストたちは北の森を抜け王都へと続く街道へと足を踏み入れた。空は厚い雲に覆われ、冬のような冷たい風が吹きすさび、木々のざわめきがどこか不穏な予兆を告げている。
アストは歩きながら、胸をぎゅっと押さえた。
(また……黒星が重い……)
試練を経てからというもの黒星の脈動は以前にも増して鋭く、まるで「何かが近づいている」と警告するかのようにアストの身体を内側から締め付けた。
フィアは不安そうに覗き込み、そっと声をかけた。
「アスト……また痛むの?」
「うん……でも、大丈夫。歩けるよ」
しかしその言葉とは裏腹に、アストの顔色は青ざめ、唇の端は微かに震えていた。
「大丈夫じゃないよ……顔色悪いもん」
リオが後ろから重い声をかける。
「無理すんなや。黒星の負荷が増えてるんやろ?」
アストは小さく苦笑した。
「隠せてないか……」
「隠せてへんよ。お前、胸押さえる癖ついてきてるし」
フィアは迷わずアストの手を握った。その手の温もりが、胸の奥に微かな安堵を運ぶ。
「アスト……黒星の力、使いすぎなんだよ。リュシアンさんも言ってたでしょ? 使えば使うほど、アストの存在が別世界に引き寄せられるって」
アストは力強くフィアの手を握り返す。
「分かってる。でも……影が増えてる。僕が力を使わなきゃ、もっと危険になるんだ」
フィアは唇を噛み、眉をひそめた。
「アストがいなくなったら……もっと危険だよ……」
その言葉に、アストは言葉を失った。
その瞬間、森の間を吹き抜ける風が一層強くなり、フィアの髪を乱した。風星が反応している。
フィアは胸に手を当て、耳を澄ませる。
(風星……アストを守れって言ってるの……?)
風がまるで囁くように、低く、しかし確かに聞こえる声で吹き抜ける。
[太字][斜体][下線][明朝体]“…境界を……整えよ…”[/明朝体][/下線][/斜体][/太字]
フィアの目が大きく見開かれた。
「アスト……風星が何か言ってる」
アストは驚きと戸惑いの入り混じった表情でフィアを見る。
「風星が……?」
フィアはうなずき、拳を強く握りしめた。
「うん……“境界を整えよ”って……アストの黒星が暴走しないように……私が支えなきゃいけないって……」
リオが腕を組みながら、少し離れた位置で冷静に分析する。
「つまり、フィアがそばにいればアストの負荷が軽くなるってことか」
「うん……でもね……」
フィアの声には覚悟と決意が混じる。
「風星の力を使いすぎると……私も境界に引かれるんだって」
アストは息を呑んだ。
「そんな……!」
フィアはアストの手をさらに強く握り、瞳に光を宿す。
「私、怖くないよ」
アストは震える声で言葉を返す。
「怖くないわけない……自分が消えるかもしれないのに……?」
フィアは首を横に振り、静かに、しかし強く言った。
「……アストがいなくなる方が、もっと怖いから」
その言葉が胸の奥に刺さる。アストの手が少し震えた。フィアは続けた。
「アストは黒星の継承者で、世界を繋ぐか閉じるかを選ぶ人なんだよね。だったら……私アストがどんな未来を選んでも……支えたい」
アストの胸に熱が走った。フィアの言葉が心の奥底で静かに火を灯す。
リオが少し離れた場所で空を見上げ、鋭い声で警告する。
「……覚悟を決めるのはいいけどな、影が来てるで」
二人が振り返ると、森の奥から黒い靄がゆっくりと広がってきていた。
[太字][斜体][下線][明朝体]“…継承者…………ひらけ…………ひらけ…”[/明朝体][/下線][/斜体][/太字]
アストの胸が強く脈打つ。
「くっ……!」
フィアが即座に肩を支える。
「アスト! 黒星が反応してる!」
リオが剣を抜き、影の波を睨みつける。
「影の数……多いな。アスト、戦えるか?」
アストは息を整え、意志を固める。
「戦うよ……でも……フィア、お願い。……風星で支えてほしい」
フィアは力強く頷く。
「もちろん!」
彼女の背に手を置くと、風が二人の周囲に渦を巻き、黒星と風星の気配が絡み合う。アストは胸の黒星に手を当て、影に向かって叫んだ。
「僕は……開かない!影、もう来るな!!」
黒星が眩い光を放ち、影が悲鳴を上げて後退する。だがその瞬間、アストの身体がふらつき、輪郭がわずかに歪む。
「っ……!」
フィアはすぐに抱きとめる。
「アスト!!」
リオが慌てて叫ぶ。
「おい! 存在が薄くなってる!!」
フィアは全身で風星の力を呼び込み、意識を集中させる。
「お願い風星……アストを守って!!」
風が渦巻き、アストを包み込む。輪郭が戻り、アストは深く息を吐いた。
「ありがとう……」
涙をこらえながら微笑むフィア。
「……私がいる限り、絶対に消えさせないから」
アストは握り返す手に力を込めた。
「二人で、黒星を制御しよう」
リオが剣を構えたまま笑う。
「よし、決まりや。黒星と風星のコンビで、影をぶっ飛ばすで」
影の波が再び迫る。アストとフィアは並び立ち、互いの星の力を支え合いながら立ち向かう。
(僕は……一人じゃない)
黒星が強く光を放ち、風星がそれを包み込む。二つの星が共鳴し、影を押し返す。その光景は、まるで世界そのものが二人を後押ししているかのようだった。
アストとフィアは互いの力を頼りに――王都への道を、希望を胸に進み始めた。
アストは歩きながら、胸をぎゅっと押さえた。
(また……黒星が重い……)
試練を経てからというもの黒星の脈動は以前にも増して鋭く、まるで「何かが近づいている」と警告するかのようにアストの身体を内側から締め付けた。
フィアは不安そうに覗き込み、そっと声をかけた。
「アスト……また痛むの?」
「うん……でも、大丈夫。歩けるよ」
しかしその言葉とは裏腹に、アストの顔色は青ざめ、唇の端は微かに震えていた。
「大丈夫じゃないよ……顔色悪いもん」
リオが後ろから重い声をかける。
「無理すんなや。黒星の負荷が増えてるんやろ?」
アストは小さく苦笑した。
「隠せてないか……」
「隠せてへんよ。お前、胸押さえる癖ついてきてるし」
フィアは迷わずアストの手を握った。その手の温もりが、胸の奥に微かな安堵を運ぶ。
「アスト……黒星の力、使いすぎなんだよ。リュシアンさんも言ってたでしょ? 使えば使うほど、アストの存在が別世界に引き寄せられるって」
アストは力強くフィアの手を握り返す。
「分かってる。でも……影が増えてる。僕が力を使わなきゃ、もっと危険になるんだ」
フィアは唇を噛み、眉をひそめた。
「アストがいなくなったら……もっと危険だよ……」
その言葉に、アストは言葉を失った。
その瞬間、森の間を吹き抜ける風が一層強くなり、フィアの髪を乱した。風星が反応している。
フィアは胸に手を当て、耳を澄ませる。
(風星……アストを守れって言ってるの……?)
風がまるで囁くように、低く、しかし確かに聞こえる声で吹き抜ける。
[太字][斜体][下線][明朝体]“…境界を……整えよ…”[/明朝体][/下線][/斜体][/太字]
フィアの目が大きく見開かれた。
「アスト……風星が何か言ってる」
アストは驚きと戸惑いの入り混じった表情でフィアを見る。
「風星が……?」
フィアはうなずき、拳を強く握りしめた。
「うん……“境界を整えよ”って……アストの黒星が暴走しないように……私が支えなきゃいけないって……」
リオが腕を組みながら、少し離れた位置で冷静に分析する。
「つまり、フィアがそばにいればアストの負荷が軽くなるってことか」
「うん……でもね……」
フィアの声には覚悟と決意が混じる。
「風星の力を使いすぎると……私も境界に引かれるんだって」
アストは息を呑んだ。
「そんな……!」
フィアはアストの手をさらに強く握り、瞳に光を宿す。
「私、怖くないよ」
アストは震える声で言葉を返す。
「怖くないわけない……自分が消えるかもしれないのに……?」
フィアは首を横に振り、静かに、しかし強く言った。
「……アストがいなくなる方が、もっと怖いから」
その言葉が胸の奥に刺さる。アストの手が少し震えた。フィアは続けた。
「アストは黒星の継承者で、世界を繋ぐか閉じるかを選ぶ人なんだよね。だったら……私アストがどんな未来を選んでも……支えたい」
アストの胸に熱が走った。フィアの言葉が心の奥底で静かに火を灯す。
リオが少し離れた場所で空を見上げ、鋭い声で警告する。
「……覚悟を決めるのはいいけどな、影が来てるで」
二人が振り返ると、森の奥から黒い靄がゆっくりと広がってきていた。
[太字][斜体][下線][明朝体]“…継承者…………ひらけ…………ひらけ…”[/明朝体][/下線][/斜体][/太字]
アストの胸が強く脈打つ。
「くっ……!」
フィアが即座に肩を支える。
「アスト! 黒星が反応してる!」
リオが剣を抜き、影の波を睨みつける。
「影の数……多いな。アスト、戦えるか?」
アストは息を整え、意志を固める。
「戦うよ……でも……フィア、お願い。……風星で支えてほしい」
フィアは力強く頷く。
「もちろん!」
彼女の背に手を置くと、風が二人の周囲に渦を巻き、黒星と風星の気配が絡み合う。アストは胸の黒星に手を当て、影に向かって叫んだ。
「僕は……開かない!影、もう来るな!!」
黒星が眩い光を放ち、影が悲鳴を上げて後退する。だがその瞬間、アストの身体がふらつき、輪郭がわずかに歪む。
「っ……!」
フィアはすぐに抱きとめる。
「アスト!!」
リオが慌てて叫ぶ。
「おい! 存在が薄くなってる!!」
フィアは全身で風星の力を呼び込み、意識を集中させる。
「お願い風星……アストを守って!!」
風が渦巻き、アストを包み込む。輪郭が戻り、アストは深く息を吐いた。
「ありがとう……」
涙をこらえながら微笑むフィア。
「……私がいる限り、絶対に消えさせないから」
アストは握り返す手に力を込めた。
「二人で、黒星を制御しよう」
リオが剣を構えたまま笑う。
「よし、決まりや。黒星と風星のコンビで、影をぶっ飛ばすで」
影の波が再び迫る。アストとフィアは並び立ち、互いの星の力を支え合いながら立ち向かう。
(僕は……一人じゃない)
黒星が強く光を放ち、風星がそれを包み込む。二つの星が共鳴し、影を押し返す。その光景は、まるで世界そのものが二人を後押ししているかのようだった。
アストとフィアは互いの力を頼りに――王都への道を、希望を胸に進み始めた。