星読みの村の奥へと続く小道は、昼間だというのに薄暗かった。
木々の間から差し込む光は弱く、まるで外界とは違う空気が流れているように感じられる。
アスト、フィア、リオの三人はセラの案内で村の最奥へ向かっていた。
「この先に、星の賢者がおるんか?」
リオが前を歩くセラに問いかける。
「ええ。リュシアン様は、星の流れを読む者。黒星の継承者が現れるのを、ずっと待っていたの」
アストは胸の奥がざわつくのを感じた。
黒星が脈打つたび、何かが呼応するように微かな震えが走る。
(……また、声が聞こえるのか?)
フィアが心配そうにアストの横顔を覗き込む。
「アスト、顔色悪いよ……無理しないで」
「僕は大丈夫。黒星が……何か言いたがってるだけだ」
「それが大丈夫じゃないのよ……」
フィアの声は震えていた。
アストは彼女の手を軽く握り返し、安心させるように微笑む。
やがて、木々の間から古びた塔が姿を現した。石造りの天文塔――星読みの村の象徴とも言える建物だ。
塔の頂上には巨大な観測装置があり、星を映す鏡がゆっくりと回転している。
「ここが……」
アストは息を呑んだ。
セラは静かに頷く。
「星の賢者リュシアン様は、この塔の最上階におられます。アスト、あなたを待っているわ」
階段を登るたび、黒星が強く脈打った。
まるで塔の上にいる人物が、黒星を呼んでいるかのように。
(……誰なんだ。僕を待っていたって……)
最上階の扉の前で、セラが立ち止まった。
「アスト。あなたが開けて」
アストは深呼吸し、扉に手をかけた。ギィ……と重い音を立てて扉が開く。
部屋の中央に、白い髪の青年が立っていた。年齢はアストたちとそう変わらないように見える。
だが、その瞳は星空のように深く、底知れない光を宿していた。
青年はアストを見るなり、静かに微笑んだ。
「ようやく来たね。黒星の継承者――アスト」
フィアがアストの後ろから顔を出す。
「あなたが……星の賢者、リュシアン?」
「そうだよ、フィア。そして旅人リオ。二人がアストを支えていることも、星々は見ている」
リオは驚いたように眉を上げた。
「僕のことまで知ってるんや……」
リュシアンはゆっくりとアストに近づき、その胸に宿る黒星を見つめた。
「黒星は、君を選んだ。そして――君に“世界の真実”を見せようとしている」
アストは喉が鳴るのを感じた。
「世界の……真実?」
リュシアンは窓の外、昼間の空を指差した。
「アスト。この世界――ルミナリアは、“ひとつの世界”ではない」
アストも、フィアも、リオも息を呑んだ。
「どういう……意味だ?」
アストが震える声で問う。
リュシアンは静かに語り始めた。
「世界は層になっている。重なり合い、干渉し合い、ときに混ざり合う。君が見た“別世界の影”は、その証拠だ」
アストの胸がざわつく。
「じゃあ……影は、別の世界の存在?」
「そう。そして黒星は――世界と世界を繋ぐ“鍵”なんだ」
フィアが息を呑む。
「黒星って……災厄じゃなかったの?」
「災厄と呼ばれたのは、王国が恐れたからだよ。本当は違う。黒星は“始まりの星”――世界を繋ぐための星だ」
アストは拳を握りしめた。
「じゃあ……僕は何をすればいい?」
リュシアンはアストの肩に手を置いた。
「まずは黒星の声を聞くこと。君はまだ、ほんの一部しか触れていない。黒星は君に“選択”を迫っている」
「選択……?」
「世界を繋ぐか、閉じるか。どちらを選ぶかで、未来は大きく変わる」
アストは胸の奥が重くなるのを感じた。
(僕が……世界の未来を?)
リュシアンは続けた。
「だが、急ぐ必要はない。まずは黒星の力を理解しよう。そのために――君には“試練”を受けてもらう。黒星の記憶に触れる試練だ。君が黒星の本質を知るための、最初の一歩」
アストは深く息を吸い、頷いた。
「……分かった。僕は逃げない。黒星が何を望んでいるのか、確かめたい」
リュシアンは満足そうに微笑んだ。
「いい覚悟だ、アスト。では――試練の準備を始めよう」アストの胸の黒星が、静かに脈打った。
まるで、これから始まる試練を歓迎するかのように。
木々の間から差し込む光は弱く、まるで外界とは違う空気が流れているように感じられる。
アスト、フィア、リオの三人はセラの案内で村の最奥へ向かっていた。
「この先に、星の賢者がおるんか?」
リオが前を歩くセラに問いかける。
「ええ。リュシアン様は、星の流れを読む者。黒星の継承者が現れるのを、ずっと待っていたの」
アストは胸の奥がざわつくのを感じた。
黒星が脈打つたび、何かが呼応するように微かな震えが走る。
(……また、声が聞こえるのか?)
フィアが心配そうにアストの横顔を覗き込む。
「アスト、顔色悪いよ……無理しないで」
「僕は大丈夫。黒星が……何か言いたがってるだけだ」
「それが大丈夫じゃないのよ……」
フィアの声は震えていた。
アストは彼女の手を軽く握り返し、安心させるように微笑む。
やがて、木々の間から古びた塔が姿を現した。石造りの天文塔――星読みの村の象徴とも言える建物だ。
塔の頂上には巨大な観測装置があり、星を映す鏡がゆっくりと回転している。
「ここが……」
アストは息を呑んだ。
セラは静かに頷く。
「星の賢者リュシアン様は、この塔の最上階におられます。アスト、あなたを待っているわ」
階段を登るたび、黒星が強く脈打った。
まるで塔の上にいる人物が、黒星を呼んでいるかのように。
(……誰なんだ。僕を待っていたって……)
最上階の扉の前で、セラが立ち止まった。
「アスト。あなたが開けて」
アストは深呼吸し、扉に手をかけた。ギィ……と重い音を立てて扉が開く。
部屋の中央に、白い髪の青年が立っていた。年齢はアストたちとそう変わらないように見える。
だが、その瞳は星空のように深く、底知れない光を宿していた。
青年はアストを見るなり、静かに微笑んだ。
「ようやく来たね。黒星の継承者――アスト」
フィアがアストの後ろから顔を出す。
「あなたが……星の賢者、リュシアン?」
「そうだよ、フィア。そして旅人リオ。二人がアストを支えていることも、星々は見ている」
リオは驚いたように眉を上げた。
「僕のことまで知ってるんや……」
リュシアンはゆっくりとアストに近づき、その胸に宿る黒星を見つめた。
「黒星は、君を選んだ。そして――君に“世界の真実”を見せようとしている」
アストは喉が鳴るのを感じた。
「世界の……真実?」
リュシアンは窓の外、昼間の空を指差した。
「アスト。この世界――ルミナリアは、“ひとつの世界”ではない」
アストも、フィアも、リオも息を呑んだ。
「どういう……意味だ?」
アストが震える声で問う。
リュシアンは静かに語り始めた。
「世界は層になっている。重なり合い、干渉し合い、ときに混ざり合う。君が見た“別世界の影”は、その証拠だ」
アストの胸がざわつく。
「じゃあ……影は、別の世界の存在?」
「そう。そして黒星は――世界と世界を繋ぐ“鍵”なんだ」
フィアが息を呑む。
「黒星って……災厄じゃなかったの?」
「災厄と呼ばれたのは、王国が恐れたからだよ。本当は違う。黒星は“始まりの星”――世界を繋ぐための星だ」
アストは拳を握りしめた。
「じゃあ……僕は何をすればいい?」
リュシアンはアストの肩に手を置いた。
「まずは黒星の声を聞くこと。君はまだ、ほんの一部しか触れていない。黒星は君に“選択”を迫っている」
「選択……?」
「世界を繋ぐか、閉じるか。どちらを選ぶかで、未来は大きく変わる」
アストは胸の奥が重くなるのを感じた。
(僕が……世界の未来を?)
リュシアンは続けた。
「だが、急ぐ必要はない。まずは黒星の力を理解しよう。そのために――君には“試練”を受けてもらう。黒星の記憶に触れる試練だ。君が黒星の本質を知るための、最初の一歩」
アストは深く息を吸い、頷いた。
「……分かった。僕は逃げない。黒星が何を望んでいるのか、確かめたい」
リュシアンは満足そうに微笑んだ。
「いい覚悟だ、アスト。では――試練の準備を始めよう」アストの胸の黒星が、静かに脈打った。
まるで、これから始まる試練を歓迎するかのように。