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橙 side
橙
「 …… ッ 」
病院の 外に 出た 俺は 、 ベンチに 座り込んで 小さく 息を 漏らす 。
息は 白く なって 、 消えた 。
寒さも 、 身体に 染みる 。
今は 、 冬だ 。
桃
「 …… 橙 」
頬に 何か 暖かい ものが 当たる 。
橙
「 … 桃ちゃん 、 どうしたん 、 ? 」
桃
「 ココア 」
そう 言うと 、 俺に ココアを 投げて 、 立ち去った 。
地面の 雪に くっきりと 桃くんの 靴の 跡が 残る 。
橙
「 、 ありがと 」
聞こえるか 聞こえないか 分からない くらいの 距離で 、 俺は 言った 。
ココア 。
多分 、 桃くんが それを 選んだのには 理由が ある 。
●●が 忘れている 記憶の 中の 、 一つに あるはずの 、 あの日の 思い出 。
俺たちは 、 12月の はじめに 、 6人で 遊園地に 行くことに なった 。
それぞれが 必死に お金を ためて 。
でも 、 その日は 生憎の 雨で 、 俺たちは ガッカリして バス停で 座り込んでいた 。
寒い中 、 傘も 持たずに 張り切って やってきた 俺たちは 、 途方に 暮れて いたのだった 。
その時の ●● の 声は 、 今でも 耳に 染み付いている 。
●●
「 はい っ ‼︎ ココア ‼︎ 」
傘も 差さずに 飛び出していって 、 びしょ濡れに なって 7つの 缶を 抱えて 帰ってきた 。
誰よりも 楽しみにしていた はずの ●●は 、 遊園地に 行けなくなっても 、 ニコニコと 笑っていた 。
紫
「 風邪 引くよ 」
橙
「 へ っ 、 ? 」
あの日の ことを 思い出していると 、 後ろから 、 あの日 、 紫くんが 言った ことを 同じ 言葉が 聞こえた 。
あの日 、 紫くんは ●●に そう 言って 笑った 。
俺が 振り向くと 、 また 同じように 紫くんが 笑った 。
紫
「 ねえ 橙くん 」
橙
「 ん ? 」
紫
「 ちょっと 考えたこと 、 聞いてもらっても いい ? 」
橙
「 ああ 」
俺が 小さく 頷くと 、 紫くんは 俺の 隣に 缶の ココアを 持って 座った 。
紫
「 … 俺たちの 覚えてる この 半年間の 思い出を 、 ●●ちゃんに 話したら 」
紫
「 ●●ちゃんは 記憶を 取り戻すんじゃないかな 」
橙
「 おぉ …… 、、 ⁇ 」
何だか 凄いことを 言っている 気が した 。
俺は 、 実のところ 半分 諦めていた 。
お医者さんが どうにか してくれるのを 信じて 、 待っていた 。
橙
「 紫くん 、 やっぱ 優しいな 」
紫
「 ふふ 、 ありがと 」
一呼吸 置いて 、 紫くんが 続けた 。
紫
「 実は これ 、 考えたの 蒼ちゃん なんだよ 」
紫
「 でも 誰にも 言いそうに ないし 」
紫
「 焦ったくて 俺が 言っちゃった 」
そう 言って イタズラが バレた 子供の ように 小さく 笑う 紫くん 。
そんな 紫くんを 、 そう 、 本当に 幼稚園 ぶり くらいに 見た気がして 、 俺も 笑う 。
俺たちの 吐息と 小さな 笑顔は 、 冬の 空気に 溶けていった 。