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暴力表現などが含まれている作品になります。
苦手な人はここでUターンすることをおすすめします。
―――出雲学園は、引くほど敷地が大きかった。
以前、見学で訪れたことはあるが、やはりいつ見ても大きい。通っていたら慣れるものなのだろうか。
校舎に入ったらまずは、職員室へ来るように言われていた楓は、やけに綺麗な廊下を歩く。教室がある校舎からは生徒の笑い声などが聞こえてきて、楓は「元気だなぁ」と呑気に思った。
職員室が見えてきて、楓はドアを三回ノックする。
「はーい」
中から出てきたのは、少しふくよかな体型の女性だ。柔和な雰囲気の女性は、楓を見ると「あら」と声を上げた。
「あなた、もしかして四組の転校生?」
「はい、その・・・・・・」
「ああ、分かってるわよ!藍城先生よね?ちょっと待ってて、今呼んでくるから」
女性はそう言いながら、職員室の中へ戻っていく。中から微かに「藍城先生ー!転校生の子ですよー!」という声が聞こえた。
ドアの前で待っていると、すぐに一人の青年がやって来た。
―――とても、整った顔立ちの青年だ。
首元で切り揃えられた、光が当たって煌めく[漢字]白髪[/漢字][ふりがな]はくはつ[/ふりがな]。長い睫毛に縁取られた瞳は、宝石のように美しい瑠璃色をしている。男性にしては華奢だが、身長は180近くはあるようだ。
「一ノ瀬楓さんですね?」
「あ、え、は、はい・・・・・・」
「二年四組の担任で、日本史を担当している[漢字]藍城[/漢字][ふりがな]あいじょう[/ふりがな][漢字]瑠璃[/漢字][ふりがな]るり[/ふりがな]と申します。本日からよろしくお願いしますね」
「は、はい、よろしくお願いします・・・・・・」
テレビでしか見かけないような、整った顔立ちをしている瑠璃に、楓は緊張しながらも返事をする。以前の学園見学では、彼は出張で不在だったらしく、別の教師が案内してくれた。なので、楓は瑠璃とは初対面だったのだ。
そんな楓の様子に、瑠璃は肩を小さく揺らしながら笑みをこぼす。
「やっぱり、転校初日は緊張しますよね。転校してきた学園が[漢字]出雲学園[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]ですし」
「はい・・・・・・あの、やっぱり凄い人たちが、たくさんいるんでしょうか・・・・・・?」
「そうですね・・・・・・確かに、運動や勉強など特出した個性を持つ生徒もいますが・・・・・・殆どは、普通の高校生と同じですよ。皆、普通に授業を受けて、普通に日々を過ごす。出雲学園の生徒だからといって、何か特別である理由にはならないので」
「そう、なんですか・・・・・・ありがとうございます」
瑠璃の言葉を聞きながら、楓は腹の前で指先を忙しなく動かす。
「出雲学園の生徒だからといって、何か特別である理由にはならない」―――楓が持つ、出雲学園の生徒に対する考えとは、真逆だった。楓は、出雲学園の生徒だから、『特別』なのだと考えていた。だが、瑠璃は違う。
「(でも、ここは名門校なんだ。そんなわけない)」
大人と子供は、価値観も、見える世界も何もかも違う。
瑠璃の言葉を完全に信じ切るには、彼とは日を過ごしていないし、楓はこの学園についても、生徒についても知らなさすぎる。
楓は、前を行く瑠璃の背中を眺めながら、小さな拳を握りしめた。
[下線] [/下線]
「私が教室から声をかけるので、それで入ってきてください」
瑠璃にそう言われ、楓は教室の扉の前でゆっくりと、息を吐く。
中からは、瑠璃の声が聞こえてきた。楓は、瑠璃の言葉を聞き逃さないように耳を澄ませる。
「それでは、次の話です・・・・・・本日から、このクラスに転校生が来ます」
瑠璃のその言葉に、教室の中からはざわめきが聞こえた。
「え、マジ?出雲に来んの珍しくね?」
「転入試験めっちゃムズいって噂だもんなぁ。それ受かったって凄くね?」
「女子でも男子でもいいから仲良くしたいなー」
そんな言葉たちが楓の鼓膜を揺らしていくたびに、握られた手のひらからじんわりと手汗が出てくる。人前で話すのは、昔から苦手だ。心臓の音が異様にうるさく感じる。
「ほら、静かにしてください・・・・・・では、入ってきてもらって大丈夫ですよ。どうぞ」
瑠璃の声が聞こえて、楓はゆっくりと扉を開ける。そして、ゆっくりと一歩、教室へと踏み出した。
いくつもの好奇心が含まれた視線が、楓を穴が空くのではないかというくらいに刺してくる。緊張を悟られないようにと、楓は涼しい表情を顔に貼り付けて、教卓に立った。
三十人ほどの視線が、心が、楓に集まった。
「―――一ノ瀬楓と言います。慣れないことばかりで迷惑をかけるかもしれませんが、精一杯頑張ります。よろしくお願いします」
―――少し声が震えてしまったが、そこはよしとしておこう。
以前、見学で訪れたことはあるが、やはりいつ見ても大きい。通っていたら慣れるものなのだろうか。
校舎に入ったらまずは、職員室へ来るように言われていた楓は、やけに綺麗な廊下を歩く。教室がある校舎からは生徒の笑い声などが聞こえてきて、楓は「元気だなぁ」と呑気に思った。
職員室が見えてきて、楓はドアを三回ノックする。
「はーい」
中から出てきたのは、少しふくよかな体型の女性だ。柔和な雰囲気の女性は、楓を見ると「あら」と声を上げた。
「あなた、もしかして四組の転校生?」
「はい、その・・・・・・」
「ああ、分かってるわよ!藍城先生よね?ちょっと待ってて、今呼んでくるから」
女性はそう言いながら、職員室の中へ戻っていく。中から微かに「藍城先生ー!転校生の子ですよー!」という声が聞こえた。
ドアの前で待っていると、すぐに一人の青年がやって来た。
―――とても、整った顔立ちの青年だ。
首元で切り揃えられた、光が当たって煌めく[漢字]白髪[/漢字][ふりがな]はくはつ[/ふりがな]。長い睫毛に縁取られた瞳は、宝石のように美しい瑠璃色をしている。男性にしては華奢だが、身長は180近くはあるようだ。
「一ノ瀬楓さんですね?」
「あ、え、は、はい・・・・・・」
「二年四組の担任で、日本史を担当している[漢字]藍城[/漢字][ふりがな]あいじょう[/ふりがな][漢字]瑠璃[/漢字][ふりがな]るり[/ふりがな]と申します。本日からよろしくお願いしますね」
「は、はい、よろしくお願いします・・・・・・」
テレビでしか見かけないような、整った顔立ちをしている瑠璃に、楓は緊張しながらも返事をする。以前の学園見学では、彼は出張で不在だったらしく、別の教師が案内してくれた。なので、楓は瑠璃とは初対面だったのだ。
そんな楓の様子に、瑠璃は肩を小さく揺らしながら笑みをこぼす。
「やっぱり、転校初日は緊張しますよね。転校してきた学園が[漢字]出雲学園[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]ですし」
「はい・・・・・・あの、やっぱり凄い人たちが、たくさんいるんでしょうか・・・・・・?」
「そうですね・・・・・・確かに、運動や勉強など特出した個性を持つ生徒もいますが・・・・・・殆どは、普通の高校生と同じですよ。皆、普通に授業を受けて、普通に日々を過ごす。出雲学園の生徒だからといって、何か特別である理由にはならないので」
「そう、なんですか・・・・・・ありがとうございます」
瑠璃の言葉を聞きながら、楓は腹の前で指先を忙しなく動かす。
「出雲学園の生徒だからといって、何か特別である理由にはならない」―――楓が持つ、出雲学園の生徒に対する考えとは、真逆だった。楓は、出雲学園の生徒だから、『特別』なのだと考えていた。だが、瑠璃は違う。
「(でも、ここは名門校なんだ。そんなわけない)」
大人と子供は、価値観も、見える世界も何もかも違う。
瑠璃の言葉を完全に信じ切るには、彼とは日を過ごしていないし、楓はこの学園についても、生徒についても知らなさすぎる。
楓は、前を行く瑠璃の背中を眺めながら、小さな拳を握りしめた。
[下線] [/下線]
「私が教室から声をかけるので、それで入ってきてください」
瑠璃にそう言われ、楓は教室の扉の前でゆっくりと、息を吐く。
中からは、瑠璃の声が聞こえてきた。楓は、瑠璃の言葉を聞き逃さないように耳を澄ませる。
「それでは、次の話です・・・・・・本日から、このクラスに転校生が来ます」
瑠璃のその言葉に、教室の中からはざわめきが聞こえた。
「え、マジ?出雲に来んの珍しくね?」
「転入試験めっちゃムズいって噂だもんなぁ。それ受かったって凄くね?」
「女子でも男子でもいいから仲良くしたいなー」
そんな言葉たちが楓の鼓膜を揺らしていくたびに、握られた手のひらからじんわりと手汗が出てくる。人前で話すのは、昔から苦手だ。心臓の音が異様にうるさく感じる。
「ほら、静かにしてください・・・・・・では、入ってきてもらって大丈夫ですよ。どうぞ」
瑠璃の声が聞こえて、楓はゆっくりと扉を開ける。そして、ゆっくりと一歩、教室へと踏み出した。
いくつもの好奇心が含まれた視線が、楓を穴が空くのではないかというくらいに刺してくる。緊張を悟られないようにと、楓は涼しい表情を顔に貼り付けて、教卓に立った。
三十人ほどの視線が、心が、楓に集まった。
「―――一ノ瀬楓と言います。慣れないことばかりで迷惑をかけるかもしれませんが、精一杯頑張ります。よろしくお願いします」
―――少し声が震えてしまったが、そこはよしとしておこう。