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暴力表現などが含まれている作品になります。
苦手な人はここでUターンすることをおすすめします。
―――[漢字]出雲[/漢字][ふりがな]いずも[/ふりがな]学園。
日本の中でも屈指の名門校であり、多くの著名人がこの学園を卒業している。出雲学園に入学するだけで人生は成功すると言われている学園。
―――そんな学園に、[漢字]一ノ瀬[/漢字][ふりがな]いちのせ[/ふりがな][漢字]楓[/漢字][ふりがな]かえで[/ふりがな]は、転校することになった。
一ノ瀬楓の特徴を挙げるとするならば、肩で切り揃えられた茶髪と、茶色の瞳。特に、顔立ちが整っているというわけではないが、どちらかといえば「整っている」と評価するような、そんな顔立ちだ。
「楓は二年四組よね。担任の先生も凄く優しそうで綺麗な人だったし、良かったじゃない」
夕食のことだった。
楓とよく似た顔立ちの母が、頬に手を当てながらそう言った。
母は、楓の皿にキャベツとキュウリのサラダを盛りながら、楓を見る。
「それにしても、楓も凄いわね。出雲学園に転入出来るなんて・・・・・・お祖母ちゃんが聞いたら卒倒しちゃう。出雲学園の転入試験、凄く難しいらしいから」
「うん、凄く難しかった」
「やっぱりね。私、友達に出雲学園を志望してた子がいるんだけど、やっぱり落ちちゃったもの。流石は名門校よねぇ」
母はよく喋る人だ。
楓は、母の話に頷いているフリをして、右耳から左耳へと聞き流した。
―――元々、出雲学園に通いたいだなんて思ったこともない。周りからの評価を気にする母に、勧められたのがきっかけだった。
本当は、地元でずっと仲の良い友人たちといたかった。それでも、母からの期待と圧には逆らえなかった。
大嫌いな勉強を散々して、受かった出雲学園―――別に、嬉しくなかった。
「ごちそうさまでした」
母の話に一段落がついたところで、楓は皿を流しに持っていき、洗剤がついたスポンジで洗う。
そのまま、濡れた手をタオルで拭き、二階の自室に入った。
―――楓の人生の目標は、「目立たず、ノミのように生きること」。
安易に目立たず、影のようになるのが、彼女の目標だった。だが、その目標も、出雲学園に通うとなったら話が変わってきてしまう。
出雲学園に通い、卒業したと聞けば、殆どの人間は「とても優秀じゃないか」「君は社会の役に立つべく育てられた素晴らしい人材だね」と、褒め称えられる。別に、褒められるのが嫌いだと言うほどひねくれているわけではない。
だが、目立つのだ。それも、とてつもなく。
国内屈指の名門校、多くの著名人が卒業した―――そんな学園から卒業したと聞けば、人は自然と期待をかけてくる。楓は、期待をかけられればかけられるほど、嫌になってくるのだ。
「・・・・・・明日、かぁ」
ベッドに寝転がって、楓は小さく口の中だけで呟いた。
―――まるで、朝日が顔を出すのを、望まない声だった。
[下線] [/下線]
楓は、姿見の前で真新しい制服に包まれた自分を眺めた。
ベージュ色のブレザー、赤色のリボン、紺色のスカート―――人気な制服で、中学の頃は楓も「着てみたい」と、友人とはしゃいでいたはずの制服。だが、実際に着たら、嬉しいと言った感情は湧き上がらなかった。
「・・・・・・やだなぁ」
小さくそう呟いたが、何を言っても現実は現実でしかない。
楓は一階に下りて、テーブルに置かれていたトーストとサラダを静かに咀嚼する。父はいつも朝早くから仕事に行き、母もデザイナーという職業柄、朝にはもういないことが多い。
朝食を飲み込み、楓は出雲学園の通学鞄を手に取る。そして、玄関でやはり真新しいローファーに足を突っ込んだ。
そのまま、誰もいない家へ、楓は静かに挨拶する。
「・・・・・・いってきます」
日本の中でも屈指の名門校であり、多くの著名人がこの学園を卒業している。出雲学園に入学するだけで人生は成功すると言われている学園。
―――そんな学園に、[漢字]一ノ瀬[/漢字][ふりがな]いちのせ[/ふりがな][漢字]楓[/漢字][ふりがな]かえで[/ふりがな]は、転校することになった。
一ノ瀬楓の特徴を挙げるとするならば、肩で切り揃えられた茶髪と、茶色の瞳。特に、顔立ちが整っているというわけではないが、どちらかといえば「整っている」と評価するような、そんな顔立ちだ。
「楓は二年四組よね。担任の先生も凄く優しそうで綺麗な人だったし、良かったじゃない」
夕食のことだった。
楓とよく似た顔立ちの母が、頬に手を当てながらそう言った。
母は、楓の皿にキャベツとキュウリのサラダを盛りながら、楓を見る。
「それにしても、楓も凄いわね。出雲学園に転入出来るなんて・・・・・・お祖母ちゃんが聞いたら卒倒しちゃう。出雲学園の転入試験、凄く難しいらしいから」
「うん、凄く難しかった」
「やっぱりね。私、友達に出雲学園を志望してた子がいるんだけど、やっぱり落ちちゃったもの。流石は名門校よねぇ」
母はよく喋る人だ。
楓は、母の話に頷いているフリをして、右耳から左耳へと聞き流した。
―――元々、出雲学園に通いたいだなんて思ったこともない。周りからの評価を気にする母に、勧められたのがきっかけだった。
本当は、地元でずっと仲の良い友人たちといたかった。それでも、母からの期待と圧には逆らえなかった。
大嫌いな勉強を散々して、受かった出雲学園―――別に、嬉しくなかった。
「ごちそうさまでした」
母の話に一段落がついたところで、楓は皿を流しに持っていき、洗剤がついたスポンジで洗う。
そのまま、濡れた手をタオルで拭き、二階の自室に入った。
―――楓の人生の目標は、「目立たず、ノミのように生きること」。
安易に目立たず、影のようになるのが、彼女の目標だった。だが、その目標も、出雲学園に通うとなったら話が変わってきてしまう。
出雲学園に通い、卒業したと聞けば、殆どの人間は「とても優秀じゃないか」「君は社会の役に立つべく育てられた素晴らしい人材だね」と、褒め称えられる。別に、褒められるのが嫌いだと言うほどひねくれているわけではない。
だが、目立つのだ。それも、とてつもなく。
国内屈指の名門校、多くの著名人が卒業した―――そんな学園から卒業したと聞けば、人は自然と期待をかけてくる。楓は、期待をかけられればかけられるほど、嫌になってくるのだ。
「・・・・・・明日、かぁ」
ベッドに寝転がって、楓は小さく口の中だけで呟いた。
―――まるで、朝日が顔を出すのを、望まない声だった。
[下線] [/下線]
楓は、姿見の前で真新しい制服に包まれた自分を眺めた。
ベージュ色のブレザー、赤色のリボン、紺色のスカート―――人気な制服で、中学の頃は楓も「着てみたい」と、友人とはしゃいでいたはずの制服。だが、実際に着たら、嬉しいと言った感情は湧き上がらなかった。
「・・・・・・やだなぁ」
小さくそう呟いたが、何を言っても現実は現実でしかない。
楓は一階に下りて、テーブルに置かれていたトーストとサラダを静かに咀嚼する。父はいつも朝早くから仕事に行き、母もデザイナーという職業柄、朝にはもういないことが多い。
朝食を飲み込み、楓は出雲学園の通学鞄を手に取る。そして、玄関でやはり真新しいローファーに足を突っ込んだ。
そのまま、誰もいない家へ、楓は静かに挨拶する。
「・・・・・・いってきます」