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鬼神様は平和に暮らしたい

#1

#1 始まりの日

―――[漢字]出雲[/漢字][ふりがな]いずも[/ふりがな]学園。

日本の中でも屈指の名門校であり、多くの著名人がこの学園を卒業している。出雲学園に入学するだけで人生は成功すると言われている学園。

―――そんな学園に、[漢字]一ノ瀬[/漢字][ふりがな]いちのせ[/ふりがな][漢字]楓[/漢字][ふりがな]かえで[/ふりがな]は、転校することになった。

一ノ瀬楓の特徴を挙げるとするならば、肩で切り揃えられた茶髪と、茶色の瞳。特に、顔立ちが整っているというわけではないが、どちらかといえば「整っている」と評価するような、そんな顔立ちだ。

「楓は二年四組よね。担任の先生も凄く優しそうで綺麗な人だったし、良かったじゃない」

夕食のことだった。

楓とよく似た顔立ちの母が、頬に手を当てながらそう言った。
母は、楓の皿にキャベツとキュウリのサラダを盛りながら、楓を見る。

「それにしても、楓も凄いわね。出雲学園に転入出来るなんて・・・・・・お祖母ちゃんが聞いたら卒倒しちゃう。出雲学園の転入試験、凄く難しいらしいから」

「うん、凄く難しかった」

「やっぱりね。私、友達に出雲学園を志望してた子がいるんだけど、やっぱり落ちちゃったもの。流石は名門校よねぇ」

母はよく喋る人だ。
楓は、母の話に頷いているフリをして、右耳から左耳へと聞き流した。

―――元々、出雲学園に通いたいだなんて思ったこともない。周りからの評価を気にする母に、勧められたのがきっかけだった。
本当は、地元でずっと仲の良い友人たちといたかった。それでも、母からの期待と圧には逆らえなかった。
大嫌いな勉強を散々して、受かった出雲学園―――別に、嬉しくなかった。

「ごちそうさまでした」

母の話に一段落がついたところで、楓は皿を流しに持っていき、洗剤がついたスポンジで洗う。
そのまま、濡れた手をタオルで拭き、二階の自室に入った。

―――楓の人生の目標は、「目立たず、ノミのように生きること」。
安易に目立たず、影のようになるのが、彼女の目標だった。だが、その目標も、出雲学園に通うとなったら話が変わってきてしまう。

出雲学園に通い、卒業したと聞けば、殆どの人間は「とても優秀じゃないか」「君は社会の役に立つべく育てられた素晴らしい人材だね」と、褒め称えられる。別に、褒められるのが嫌いだと言うほどひねくれているわけではない。

だが、目立つのだ。それも、とてつもなく。
国内屈指の名門校、多くの著名人が卒業した―――そんな学園から卒業したと聞けば、人は自然と期待をかけてくる。楓は、期待をかけられればかけられるほど、嫌になってくるのだ。

「・・・・・・明日、かぁ」

ベッドに寝転がって、楓は小さく口の中だけで呟いた。
―――まるで、朝日が顔を出すのを、望まない声だった。


[下線]                                                   [/下線]


楓は、姿見の前で真新しい制服に包まれた自分を眺めた。

ベージュ色のブレザー、赤色のリボン、紺色のスカート―――人気な制服で、中学の頃は楓も「着てみたい」と、友人とはしゃいでいたはずの制服。だが、実際に着たら、嬉しいと言った感情は湧き上がらなかった。

「・・・・・・やだなぁ」

小さくそう呟いたが、何を言っても現実は現実でしかない。

楓は一階に下りて、テーブルに置かれていたトーストとサラダを静かに咀嚼する。父はいつも朝早くから仕事に行き、母もデザイナーという職業柄、朝にはもういないことが多い。

朝食を飲み込み、楓は出雲学園の通学鞄を手に取る。そして、玄関でやはり真新しいローファーに足を突っ込んだ。

そのまま、誰もいない家へ、楓は静かに挨拶する。

「・・・・・・いってきます」

作者メッセージ

こんにちは、ユユです。
まだ一話なので、めっちゃつまらないかもしれません。
コメントで感想・アドバイスなど、遠慮なく申し上げてください。

2026/02/10 17:02

ユユ
ID:≫ 6hAbmO4.wTlZo
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