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武器、お勧めしない言葉遣い、流血などがあります。

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言霊の幸ふ国(ことだまのさきわうくに)

#5

人は、誰しもが言霊と呼ばれる、波動のようなものを持っている。
一流の武道家等が感じる“覇気”のようなもので、レスタリオ《第一並行世界》に長く暮らしている者は、鍛錬せねば見ることは出来ない。
しかしエルパシオ《第二並行世界》に住む者は、幼子でも言霊を感じ取る事ができる。

言霊は、物質を超える力を持つ。
言霊とは人と想いであり、人なしには存在出来ない物だ。
ふつうは感情が昂った時、または特定の物ーー扉などーーに反応して言霊が引き出される。
訓練すれば操ることも不可能ではないが、“継承者”達は一種の異能力のように言霊を操るため、遠く及ばない。
“継承者”とは、古の時代から代々継承されてきた特別な言霊を操る者達である。
“継承者”はその血筋の中から生まれる事もあれば、全く関わりのない者から生まれる事もあった。
そして、“継承者”が見つからない場合は、才能有と判断された若者が“継承者”の訓練を受け、また次の継承者となる。そうして、現代までその言霊とその特殊能力は受け継がれてきた。
たとえば、特定の言葉を発した時に炎を発生させる異能。これは、炎の継承者の持つ言霊だ。エルパシオに住む人間の約1割が何らかの異能を継承しているとされる。

エルパシオ《第二並行世界》は、レスタリオ《第二並行世界》と密接な関係にある。
そして、古くからその二つの世界を行き来する“扉”が存在している。
世界で起きている不可解な事件や、不明点の多い歴史的建造物の多くは、エルパシオが一枚噛んでいる事が多い。
更に、世界と向き合う総理大臣や命を狙われやすい超人気アイドルは、エルパシオの存在を知っている事がある。
彼らを守ったり、違法な関わりを取り締まるのが、
エルパシオ最強の軍隊、《イグニス》。彼らの多くが特殊な能力や“継承者”、優れた頭脳、体力を持つ者で、いつの時代も、彼らが二つの世界を股にかけて活躍していたーーー。

「大体こんなもんか?俺が“扉”を通る時に光が出たろ?あれは俺の言霊に反応した扉が出す光なんだよ」
「はい質問」
「なんだ?」
「言霊って言うくせに、言葉全然関係なくないか?」
黎空とチセは扉のあった建物まで戻り、様々な説明を受けていた。
(まだ肝心な所が聞けてないのに)
疑問を持てば解消するまで突き詰めるのが黎空の癖だった。
「るせーな。その説明いる?」
「い・る!」
黎空が食い気味にそう主張した時だった。
「それはね、言葉がなければ言霊は生まれなかったからよ」
と言って、とん、とチセの頭に人差し指を載せたのは、四十代くらいの見知らぬ女性だった。
(気配が全くない!!)
「初めまして、救世主さん。私はリンクス・ビズトリト。チセの母よ」
「音もなく近づくなよ…」
実の息子も驚いたらしく、珍しく黎空と同じ事を言った。
「昔日本人は、言葉には不思議な力が宿ると信じていた。その頃は、エルパシオとの交流が盛んだったのかもしれないわね。そしてそれが“言霊”のもと。今でも言葉を元に能力が発動する場合が多いのよ」
「ありがとうございます。葉月黎空と言います」
リンクスは偉い人だとチセが言っていた。だがまさか母親とは思っていなかった。
チセと同じヘーゼル色の髪と目、三つ編みの結び目には髪飾りがついている。
「ええ、よろしく。私はこのアライアン王国で臨時の指揮を執っていました。そしてこれからは…、あなたがこの国を束ねるのよ」
リンクスは、黎空に向かって真剣な口調でとんでもないことを言った。
「は??」
「真逆チセ、その辺りの説明はしていないの?」
「一気に教えすぎてもあれかなと」
チセはあっさりと答えたが、リンクスはその言葉に怒らず、
「それが、…救世、主、なんですか?」
「そうよ。三十年ほど前に、ここから遠く離れた南の乾いた地でフレイラン帝国という国ができた。
彼らはどんどん北へ侵略して、領土を増やしていった。当然私たちアライアン王国とグレイラン森林王国も狙われたわ。でも、この二つの国は同盟を結んでいた。いつだって、お互いが協力して共通の敵を倒すように努めた。しかし、アライアン王国の当時の王が裏切って、この同盟は壊れてしまったの。それからというもの、アライアンは王国という名を持ちながら王を作らず、グレイラン森林王国は自国の自慢である森を伐採してまで軍事強化に努めた…」
暗い顔をしていたチセが、ちらりと黎空の方を見た。
「だから、グレイランとアライアンは今でも争い合っているんだ」
その当時の人々は、仲のいい友人や家族が、急に敵になってしまったのだ。互いの肉を抉るような気持ちで争い、細かな地形の隅々にまで境界線も引かれて。
リンクスは、気持ちを改めるかのように、置かれてあった異国の茶を飲み干した。
「そしてある時、当時の《イグニス》のリーダーがフレイラン帝国の軍人に殺された。まだ少女といって良い年齢の、けれども立派な戦士だった。彼女は死ぬ間際にこう言った。「私の後を継ぐ、《救世主》の少女が現れるだろうーー。」と。彼女は気が遠くなるほど昔からの、初代イグニスのリーダーの血を引いていた。残されたイグニスのメンバーは、その言葉を受けて、初代の血を引く家を守る事にした。そして、予言した通りに、その家に一人の女の子が生まれた。イグニスのメンバーの青年が、彼女の護衛として、共に暮らすことになった。」
リンクスの語る歴史は、澱みなく、第三者から見たような、それでも重いと分かる話だった。
「それが、私、なんですね」
「ええ。辛い話だけれど」
「一つ、聞いても良いですか」
「どうぞ」
黎空の兄は《イグニス》だった。
自分は、《イグニス》のリーダーとなる運命を背負っている。
「《イグニス》は、どんな組織なんですか」
「お前は、多分もう知ってるよ」
チセが少し後ろめたそうに言った。 
(どういう事だ?) 
「イグニスにはね…」
リンクスが目を逸らしながら小さな声で言った。
「今は、私とチセしか居ないのよ」
「はあ?」
かくして、英傑だらけのスーパーエリート集団だと思っていた《イグニス》のイメージも、消え去る事になった。





作者メッセージ

色々設定が多くて、説明章になっちゃいました…よろしくお願いします!

2025/06/14 17:00

りゃんりゃん。
ID:≫ 5pplVSwPOVTKw
コメント

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暴力表現並行世界異能力チームバトル

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