[大文字]憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つむらそ[/大文字] 山上憶良
どうしよう。
この儂が、遣唐使として唐に渡り、東宮の待構にも任ぜられたこの儂が、今史上最大の窮地に陥っていた。
宴会とは、どうやって退席すればよい?
儂ももう七十。そろそろ酒は控えねば、明日の仕事に差し支える。
どうしよう。この盛り上がりぶりの中、儂だけがさっさと退席するのも気が引けるが、かといって颯爽と立ち去れる言い訳があるわけでもなし。
どうしよう。
ふと、儂に天の掲示の如く名案が浮かんだ。
「家で子が泣いておるでしょうし、母も待っているでしょう。儂はそろそろ」
言った瞬間、後悔した。
宴の主催者の大伴旅人さまが、はぁ?という顔で儂の事を見た。
七十歳で母が存在する訳がない。
七十歳で泣く赤子が存在する訳がない。
「い、いやあ今のは冗談で…」
史上最大の窮地が、宇宙最大の窮地になった。
「そろそろお開きに致しましょうか」
大伴さまが、そう言った。
儂には大伴さまが、微笑む大仏に見えた。
どうしよう。
この儂が、遣唐使として唐に渡り、東宮の待構にも任ぜられたこの儂が、今史上最大の窮地に陥っていた。
宴会とは、どうやって退席すればよい?
儂ももう七十。そろそろ酒は控えねば、明日の仕事に差し支える。
どうしよう。この盛り上がりぶりの中、儂だけがさっさと退席するのも気が引けるが、かといって颯爽と立ち去れる言い訳があるわけでもなし。
どうしよう。
ふと、儂に天の掲示の如く名案が浮かんだ。
「家で子が泣いておるでしょうし、母も待っているでしょう。儂はそろそろ」
言った瞬間、後悔した。
宴の主催者の大伴旅人さまが、はぁ?という顔で儂の事を見た。
七十歳で母が存在する訳がない。
七十歳で泣く赤子が存在する訳がない。
「い、いやあ今のは冗談で…」
史上最大の窮地が、宇宙最大の窮地になった。
「そろそろお開きに致しましょうか」
大伴さまが、そう言った。
儂には大伴さまが、微笑む大仏に見えた。