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微グロ。後本物ぽくはないけど幽霊出てきます。
「ぜーーーったい入って来ないで!!」
「分かってるってば」
山中の住んでいるアパートは本当に公園の直ぐ側にあった。
常盤以外びっしょりと全身ずぶ濡れになった俺達は山中とは別室に通された。
「そこにTシャツとジャージがあるから!テキトーに着替えて!絶対入ってくんな!!創也さまなら良し!!」
そう言い残し、俺が答える前にばたんと戸を閉めた。
「だから入んないって」
「あ、俺は良いんだ」
「お前もぜってー入んな」
「わかってるよ」
常盤はそう言ったが、なんとなく信用できず、俺は常盤といっしょに向かい側の部屋に入った。
「ねぇ、淳くん。なんで俺は彩音ちゃんの名前知ってたと思う?」
着替える俺に、常盤が尋ねた。
「さあ、幽霊はなんでもお見通しだからなんじゃないのか?」
ちらりと常盤が俺の方を見て、素早く息を吸って、吐いた。
「そんなのでまかせだよ。…実は、彩音は、俺の腹違いの妹なんだ」
唐突な話題に、俺はTシャツを脱ぎかけたまま常盤の方を振り返った。
「何?」
「俺の母さんは世界的なピアニストでさ、父さんはそんな忙しい母さんよりも若くて暇してる人と子供を作っちゃった、ってワケ。今年で俺は二十二、彩音は十八だから、…俺は十七でアイドルデビューして、彩音は十三の時かな。その時、はじめて俺達は出会った。中学一年生の彩音はひどく俺を慕ってくれてね、兄弟だって言うのに、創也さま、創也さまって」
「そう、だったのか」
どういうふうに返せば良いのか、わからなかった。
「俺が漫画が好きだって言うとなにかにつけてくれるし、俺が好きなお菓子はいつまでも覚えてくれていた。兄と妹ってより、ファンとアイドルのような関係でさ。常盤創也ってのも、俺の本名じゃないしね」
俺はなんだか複雑な気持ちになった。片親が違うとはいえ兄弟なのだ。それなのに、兄に〝様〟づけするなんて、俺にも弟がいるが絶対に呼ばれたくないと思う。
「なんで俺にそんなこと話すんだ?」
ついーっと、常盤の視線が俺の腹に向いた。
「ふふ、栄養のないものばっか食べてる癖に、淳くんなかなか良い体つきしてるねぇ」
「はぁ?」俺は首を傾げる。一体何が言いたいのだろう。
「いい男になってよ、彩音ちゃんが常盤創也離れするくらい」
「それって…」
「創也さまぁ?これ、前にテレビで欲しいって言ってた漫画なんだけど」
張本人がだんだんと扉をノックする音で、俺の声はかき消された。
慌てて服を着て、平静を装う。
「淳くん、ちょっとここ立ってて」
「え?」
よく分からなかったが、取り敢えず言う通りの場所に立つ。
「彩音ちゃんごめーん、俺幽霊だから物持てないや!」
「創也さまぁ?」
どうやら、手を繋いでいないと常盤は彩音に見えないらしい。
「ごめん淳くん、そろそろ行かなきゃ!」
「おいっ、まだ理由聞いてねぇぞ!」
というか、どこへ行くと言うのだろう?
「そうだった!」
そう言ってから、常盤は底なしの太陽のような笑みを浮かべた。
「俺は小さい頃からさ、憧れてたんだ。人の前に立つのも好きだったし、人を笑顔にするのも好きだった。だからーーー、君が死にゆこうとしているのを見て、今だ、って。そう、思ったんだ。君のことを考えもせずにそんなことして、ごめんね」
何をーー、と俺は言おうとした。が、なぜか言葉は出なかった。
「俺は、ヒーローになりたかったんだ」
そう、一言だけ、少しだけ寂しそうに、そう言ってから常盤の体は急速に薄れ始めた。
「幽霊は本心に弱いんだよ、だからーーー、彩音のこと、よろしく頼むね」
かすかで淡い燐光に包まれて、常盤の姿はゆらゆらと揺れる。
「おいっ!?」
俺は手を伸ばしたが、そこにはもう誰もいなかった。
「創也様聞いてる?開けるよ!」
ばんっと勢い良く扉が開かれる。
俺が立っていたのは運悪く扉の眼の前だった。
そして、ずかずかと周りを見ずに入ってきた彩音と俺が正面衝突してーーー。
「っう…」
偶然か必然か、俺は彩音をかばうようにして背中を床に打ち付けた。カーペットが引いてあるおかげで、思っていたほどの衝撃と痛みはなかったが、突然の出来事に俺は彩音の背中に回された腕を解くことが出来なかった。
そして、しばらく遅れてやって来る柔らかい感触。背中ではなく、唇に伝わる、暖かくて柔らかい感触。
唇…?
「「ん??」」
彩音も同じ状況に陥っていたのだろう、まったく同じタイミングで疑問符が発せられた。
『淳くん、ちょっとここに立って』
『いい男になってよ』
俺はあいつに仕組まれたことを知った。
「くそっ…!」
「はぁ!?せっかく女の子とキス出来たのにクソとは何よクソとは!!喧嘩売ってんの?ねぇっ?」
「へぇ、そんなに俺に喜んで欲しいのか?」
「ち、違うし!!!!」
明らかに狼狽した表情を見せる彩音。
ふと、俺は彼女の呼び名が「山中」から「彩音」になっていることに気づいた。
「くっそぉ……」
「だぁっーーー!だからクソって何よーー!!」
彩音のビンタが炸裂する。
まだまだ、道のりは長そうだな、と、常盤創也は微笑んだ。
「分かってるってば」
山中の住んでいるアパートは本当に公園の直ぐ側にあった。
常盤以外びっしょりと全身ずぶ濡れになった俺達は山中とは別室に通された。
「そこにTシャツとジャージがあるから!テキトーに着替えて!絶対入ってくんな!!創也さまなら良し!!」
そう言い残し、俺が答える前にばたんと戸を閉めた。
「だから入んないって」
「あ、俺は良いんだ」
「お前もぜってー入んな」
「わかってるよ」
常盤はそう言ったが、なんとなく信用できず、俺は常盤といっしょに向かい側の部屋に入った。
「ねぇ、淳くん。なんで俺は彩音ちゃんの名前知ってたと思う?」
着替える俺に、常盤が尋ねた。
「さあ、幽霊はなんでもお見通しだからなんじゃないのか?」
ちらりと常盤が俺の方を見て、素早く息を吸って、吐いた。
「そんなのでまかせだよ。…実は、彩音は、俺の腹違いの妹なんだ」
唐突な話題に、俺はTシャツを脱ぎかけたまま常盤の方を振り返った。
「何?」
「俺の母さんは世界的なピアニストでさ、父さんはそんな忙しい母さんよりも若くて暇してる人と子供を作っちゃった、ってワケ。今年で俺は二十二、彩音は十八だから、…俺は十七でアイドルデビューして、彩音は十三の時かな。その時、はじめて俺達は出会った。中学一年生の彩音はひどく俺を慕ってくれてね、兄弟だって言うのに、創也さま、創也さまって」
「そう、だったのか」
どういうふうに返せば良いのか、わからなかった。
「俺が漫画が好きだって言うとなにかにつけてくれるし、俺が好きなお菓子はいつまでも覚えてくれていた。兄と妹ってより、ファンとアイドルのような関係でさ。常盤創也ってのも、俺の本名じゃないしね」
俺はなんだか複雑な気持ちになった。片親が違うとはいえ兄弟なのだ。それなのに、兄に〝様〟づけするなんて、俺にも弟がいるが絶対に呼ばれたくないと思う。
「なんで俺にそんなこと話すんだ?」
ついーっと、常盤の視線が俺の腹に向いた。
「ふふ、栄養のないものばっか食べてる癖に、淳くんなかなか良い体つきしてるねぇ」
「はぁ?」俺は首を傾げる。一体何が言いたいのだろう。
「いい男になってよ、彩音ちゃんが常盤創也離れするくらい」
「それって…」
「創也さまぁ?これ、前にテレビで欲しいって言ってた漫画なんだけど」
張本人がだんだんと扉をノックする音で、俺の声はかき消された。
慌てて服を着て、平静を装う。
「淳くん、ちょっとここ立ってて」
「え?」
よく分からなかったが、取り敢えず言う通りの場所に立つ。
「彩音ちゃんごめーん、俺幽霊だから物持てないや!」
「創也さまぁ?」
どうやら、手を繋いでいないと常盤は彩音に見えないらしい。
「ごめん淳くん、そろそろ行かなきゃ!」
「おいっ、まだ理由聞いてねぇぞ!」
というか、どこへ行くと言うのだろう?
「そうだった!」
そう言ってから、常盤は底なしの太陽のような笑みを浮かべた。
「俺は小さい頃からさ、憧れてたんだ。人の前に立つのも好きだったし、人を笑顔にするのも好きだった。だからーーー、君が死にゆこうとしているのを見て、今だ、って。そう、思ったんだ。君のことを考えもせずにそんなことして、ごめんね」
何をーー、と俺は言おうとした。が、なぜか言葉は出なかった。
「俺は、ヒーローになりたかったんだ」
そう、一言だけ、少しだけ寂しそうに、そう言ってから常盤の体は急速に薄れ始めた。
「幽霊は本心に弱いんだよ、だからーーー、彩音のこと、よろしく頼むね」
かすかで淡い燐光に包まれて、常盤の姿はゆらゆらと揺れる。
「おいっ!?」
俺は手を伸ばしたが、そこにはもう誰もいなかった。
「創也様聞いてる?開けるよ!」
ばんっと勢い良く扉が開かれる。
俺が立っていたのは運悪く扉の眼の前だった。
そして、ずかずかと周りを見ずに入ってきた彩音と俺が正面衝突してーーー。
「っう…」
偶然か必然か、俺は彩音をかばうようにして背中を床に打ち付けた。カーペットが引いてあるおかげで、思っていたほどの衝撃と痛みはなかったが、突然の出来事に俺は彩音の背中に回された腕を解くことが出来なかった。
そして、しばらく遅れてやって来る柔らかい感触。背中ではなく、唇に伝わる、暖かくて柔らかい感触。
唇…?
「「ん??」」
彩音も同じ状況に陥っていたのだろう、まったく同じタイミングで疑問符が発せられた。
『淳くん、ちょっとここに立って』
『いい男になってよ』
俺はあいつに仕組まれたことを知った。
「くそっ…!」
「はぁ!?せっかく女の子とキス出来たのにクソとは何よクソとは!!喧嘩売ってんの?ねぇっ?」
「へぇ、そんなに俺に喜んで欲しいのか?」
「ち、違うし!!!!」
明らかに狼狽した表情を見せる彩音。
ふと、俺は彼女の呼び名が「山中」から「彩音」になっていることに気づいた。
「くっそぉ……」
「だぁっーーー!だからクソって何よーー!!」
彩音のビンタが炸裂する。
まだまだ、道のりは長そうだな、と、常盤創也は微笑んだ。