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微グロ。後本物ぽくはないけど幽霊出てきます。
生という言葉は、走馬灯の中にただの一つも感じられなかった。
その時だった。
俺よりも少し背の低い青年が飛び込んできたのは。
「ーーっ!?」
犯人は驚いた顔をしたが、彼の衝動までを止めることは出来なかった。
そして、残酷な鋭利な刃物はーーー、彼の胸に深々と突き刺さった。
その時初めて、締め付けられた俺の喉が咆哮を上げた。
もう、何もかもが遅かった。
俺は深々とため息をついた。
引き出しを開けて、煙草を吸おうと中をまさぐった。最近は控えていたはずなのに、事件後は毎日のように煙を吸っている。
思い返したって良いことなんて一つもないのに、事件が起こってから毎晩の如く、俺は悪夢にうなされた。
一本目の最後を深々と肺の中に行き渡らせた後、俺は立ち上がって洗面所までふらふらと歩き、鏡の向こうの、もう一人の俺を見つめた。
目の下には消えない隈がこびりつき、頬の削げた顔は土気色。
とても大手商社の出世頭とは思えない。
俺のそんな体調をおもんぱかってか、こんな俺を役立たずと思ってか、俺の夏期休暇は月末までーーー、八月三十一日までになった。
八月ももう中旬。
一向に以前までの調子を取り戻せない俺は休暇の延長を申請しなければいけないかもしれない。
洗面所を出て、またベッドに戻る。
自室の部屋のドアを開けた時、俺はゲームのバグを起こしたキャラクターの如く、体をフリーズさせた。
そして、一度洗面所に戻った。
また鏡の向こうの自分が出迎える。
そして、踵を返してまた自室に戻る。
また止まる。
先に言っておく。俺は一人暮らしである。
俺のベッドの上には一人の男が座っていた。
「…は?」
すっと整った鼻梁に柳のような眉。やや大きめな瞳にちいさな唇。白粉を塗ったかのように白くて肌理の細かい肌。
……見覚えのある顔。
、、、、
常盤創也は、俺の方を見て微笑んだ。
「ごめん、君は気にしないタチだと思ってさ」
そう、常盤創也は言った。
人のベッドに勝手に座ることを?
亡霊を見てしまったことを?
違う。
、、、、、、、、、、、、、、、、
常盤創也が俺を庇って死んだことだ。
「……」
俺は俯いた。今起きている現状を正確に捉えようとするが、ここ数週間の退廃した生活のせいで脳がうまくはたらかない。
常盤創也が、また口を開いた。
「自己紹介が遅れたね。俺の名前は常盤創也。こうして喋るのは初めてだね」
「お前は…」
「申し訳ないけど、もう死んでる」
一縷の希望を見出しかけた俺に、静かな声で常盤は言った。
感情は溢れ出す。ぐるぐると脳内で回っていた言葉が俺の口から自然にこぼれ出た。
「俺はお前のことを何も知らなかった。お前も何も知らなかった。俺が殺される予定だった。俺が標的だった。なのに、なのに、なんで………」
「やっぱり。結構気にするタチなんだね」
また、美青年がうっすらと悲しげな笑みを浮かべた。
「俺はね、俺の事を何も知らない君が、俺と同じ場所に居たから殺されるなんて運命を否定したかっただけだよ」
どこか儚くて崩れてしまいそうな雰囲気を纏った青年だった。
それが生来の性格なのか、亡霊だからなのかは分からない。
「君ねぇ、スーツ姿で鞄持って祭りに来る人なんてそうそう居ないって。ずっとぼーっとしてたし。アイドルは周りに目を配るのが上手いんだよ、だから何してるんだろうなって思って見てた。偶々だよ。最初から君を守ろうなんて思ってた訳じゃない」
意外とおしゃべりで茶目っ気のある性格のようで、常盤は目をぐるりと回して困惑顔の俺と目を合わせた。
黙りこくって突っ立ったままの俺を見て、常盤はやれやれと首を振る。
その動作もどこか演技じみているというか、大袈裟な感じがした。やはり、彼は芸能界の人間なのだと実感する。
「そんなに気にする事ないって。過ぎてしまった事だろ?」
「でも…」
俺はしどろもどろに言葉を紡ぐ。
「本当にそれでよかったのか?それだけで、自分の命を…」
「まぁ、本当はもう一つ理由があるんだけど…」
「…それは、……何だ?」
「ヒ•ミ•ツ♡」
常盤は人差し指を唇に当てて、気障にウィンクをした。
それが似合いすぎるほど似合っていて、また俺は、彼と俺とは遠く離れた存在である事を思い知った。
「まぁ良いや。これからよろしくね」
「…え?」
『これからよろしくね』?
「あ、ごめん俺幽霊だから君以外の人には見えないんだけどさ」
「…ん?」
『幽霊』?
「いや…なんで?」
「言ってなかったっけ?俺しばらく、淳くんと一緒にいるよ」
もう何が何だか分からなくなっている俺に、常盤はすっと右手を差し出した。
「君が前を向いて生きていけるその日まで、よろしく!」
こうして、俺たちの不思議な生活が始まった。
その時だった。
俺よりも少し背の低い青年が飛び込んできたのは。
「ーーっ!?」
犯人は驚いた顔をしたが、彼の衝動までを止めることは出来なかった。
そして、残酷な鋭利な刃物はーーー、彼の胸に深々と突き刺さった。
その時初めて、締め付けられた俺の喉が咆哮を上げた。
もう、何もかもが遅かった。
俺は深々とため息をついた。
引き出しを開けて、煙草を吸おうと中をまさぐった。最近は控えていたはずなのに、事件後は毎日のように煙を吸っている。
思い返したって良いことなんて一つもないのに、事件が起こってから毎晩の如く、俺は悪夢にうなされた。
一本目の最後を深々と肺の中に行き渡らせた後、俺は立ち上がって洗面所までふらふらと歩き、鏡の向こうの、もう一人の俺を見つめた。
目の下には消えない隈がこびりつき、頬の削げた顔は土気色。
とても大手商社の出世頭とは思えない。
俺のそんな体調をおもんぱかってか、こんな俺を役立たずと思ってか、俺の夏期休暇は月末までーーー、八月三十一日までになった。
八月ももう中旬。
一向に以前までの調子を取り戻せない俺は休暇の延長を申請しなければいけないかもしれない。
洗面所を出て、またベッドに戻る。
自室の部屋のドアを開けた時、俺はゲームのバグを起こしたキャラクターの如く、体をフリーズさせた。
そして、一度洗面所に戻った。
また鏡の向こうの自分が出迎える。
そして、踵を返してまた自室に戻る。
また止まる。
先に言っておく。俺は一人暮らしである。
俺のベッドの上には一人の男が座っていた。
「…は?」
すっと整った鼻梁に柳のような眉。やや大きめな瞳にちいさな唇。白粉を塗ったかのように白くて肌理の細かい肌。
……見覚えのある顔。
、、、、
常盤創也は、俺の方を見て微笑んだ。
「ごめん、君は気にしないタチだと思ってさ」
そう、常盤創也は言った。
人のベッドに勝手に座ることを?
亡霊を見てしまったことを?
違う。
、、、、、、、、、、、、、、、、
常盤創也が俺を庇って死んだことだ。
「……」
俺は俯いた。今起きている現状を正確に捉えようとするが、ここ数週間の退廃した生活のせいで脳がうまくはたらかない。
常盤創也が、また口を開いた。
「自己紹介が遅れたね。俺の名前は常盤創也。こうして喋るのは初めてだね」
「お前は…」
「申し訳ないけど、もう死んでる」
一縷の希望を見出しかけた俺に、静かな声で常盤は言った。
感情は溢れ出す。ぐるぐると脳内で回っていた言葉が俺の口から自然にこぼれ出た。
「俺はお前のことを何も知らなかった。お前も何も知らなかった。俺が殺される予定だった。俺が標的だった。なのに、なのに、なんで………」
「やっぱり。結構気にするタチなんだね」
また、美青年がうっすらと悲しげな笑みを浮かべた。
「俺はね、俺の事を何も知らない君が、俺と同じ場所に居たから殺されるなんて運命を否定したかっただけだよ」
どこか儚くて崩れてしまいそうな雰囲気を纏った青年だった。
それが生来の性格なのか、亡霊だからなのかは分からない。
「君ねぇ、スーツ姿で鞄持って祭りに来る人なんてそうそう居ないって。ずっとぼーっとしてたし。アイドルは周りに目を配るのが上手いんだよ、だから何してるんだろうなって思って見てた。偶々だよ。最初から君を守ろうなんて思ってた訳じゃない」
意外とおしゃべりで茶目っ気のある性格のようで、常盤は目をぐるりと回して困惑顔の俺と目を合わせた。
黙りこくって突っ立ったままの俺を見て、常盤はやれやれと首を振る。
その動作もどこか演技じみているというか、大袈裟な感じがした。やはり、彼は芸能界の人間なのだと実感する。
「そんなに気にする事ないって。過ぎてしまった事だろ?」
「でも…」
俺はしどろもどろに言葉を紡ぐ。
「本当にそれでよかったのか?それだけで、自分の命を…」
「まぁ、本当はもう一つ理由があるんだけど…」
「…それは、……何だ?」
「ヒ•ミ•ツ♡」
常盤は人差し指を唇に当てて、気障にウィンクをした。
それが似合いすぎるほど似合っていて、また俺は、彼と俺とは遠く離れた存在である事を思い知った。
「まぁ良いや。これからよろしくね」
「…え?」
『これからよろしくね』?
「あ、ごめん俺幽霊だから君以外の人には見えないんだけどさ」
「…ん?」
『幽霊』?
「いや…なんで?」
「言ってなかったっけ?俺しばらく、淳くんと一緒にいるよ」
もう何が何だか分からなくなっている俺に、常盤はすっと右手を差し出した。
「君が前を向いて生きていけるその日まで、よろしく!」
こうして、俺たちの不思議な生活が始まった。