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武器、お勧めしない言葉遣い、流血などがあります。
千世の車に乗ってしばらく。
「死ぬかと思った」
この数十分で寿命が五年は縮んだ気がする。
「だろうな。ま、俺にとっちゃ日常茶飯事だけど」
「ねぇ、ミツ兄ーー、…兄は裏社会の人間だったの?」
考えられない事だが、行方不明になって死んだ兄と千世を見ていると、なんだか不穏なモノにが変わっていたように思えてならない。
黎空にとっての美鶴は普通の大学で普通に暮らす、優しくて、笑顔が眩しい、黎空とは正反対の明るい人だった。
千世の顔が少しだけ曇る。
「裏社会じゃなくて…もう一つの社会なら片足突っ込んでた」
「どういうこと?」
千世は答えないまま、車のスピードを上げた。
(ここで質問攻めにしたって無駄か)
「ほら、着いたぞ」
(なんで…!?)
車が止まったのは、黎空の家の前だった。
「何で家知ってんだよ!」
いよいよこいつが怪しくなってきた。
(実は狙撃した人物の方が味方だったりして)
「説明すると長くなるから。まさか、お前の正体がもうバレたとは思ってなかった。すぐに上に報告しねぇと」
「上?お前働いてんの?」
「お前口悪りぃな!」
「敬語使う程の偉い奴じゃなかった」
「おい!!」
「てか、私の家で何する気ーーー」
千世がポケットをごそごそと漁り出し、鍵束を取り出した。
「よっこらせ」
「え”?」
束になっているうちのひとつの鍵が、ピッタリと鍵穴に当て嵌まった。
「お前、本当になんも知らねぇな」
ふざけている小学生男子を見ているような目で千世が言った。
「私にとってはお前が異常だよ…」
「失礼します」
さっさと靴を脱いでさも自分の家のように上がり込む千世。
「私の家だからな」
黎空の家は結構広い。そして古い。戦前に建てられた後、祖父の代でリフォームし、そして今に至る。
昔古書店を営んでいた関係で玄関がふたつあり、家の中には書庫まである。黎空が本好きなのはその影響だ。
そして、一番の特徴はー。
入ることを許されない部屋がある。
美鶴だけが、たびたびその部屋に入り、どっと疲れた顔をして帰ってくるのだ。書庫に近いだけに黎空は何度も入ってみようと挑戦するのだが、黎空が推しても引いても重厚の扉はびくともしない。
ただ、祖父母は既に他界、美鶴と黎空に両親は居らず、その美鶴も亡くなったとなれば今やこの家は十七歳の黎空ただ一人の物となる。
「向こうに着いたら、俺とリンクスで全部説明してやるから」
不服そうな黎空の心を読んだのか、諭すような口調で千世が言った。
「リンクス?」
「人の名前。偉いヒトだから大人しくしてろよ」
「そんなに子供じゃない」
「あっそ」
そうこうしているうちに、黎空と千世は大きな扉の前に立っていた。
「入れない扉…」
「お前にとっちゃな」
千世が手のひらでドアノブを握る。ぼんやりとした光が滲み出たような気がした。
「だから開かないんだっ…!?」
深い茶色の古い扉は、ぎいっという音を立ててゆっくりと開いていった。
「ようこそ、言霊の幸う国へ」
千世が、扉の向こうで待っている。
「死ぬかと思った」
この数十分で寿命が五年は縮んだ気がする。
「だろうな。ま、俺にとっちゃ日常茶飯事だけど」
「ねぇ、ミツ兄ーー、…兄は裏社会の人間だったの?」
考えられない事だが、行方不明になって死んだ兄と千世を見ていると、なんだか不穏なモノにが変わっていたように思えてならない。
黎空にとっての美鶴は普通の大学で普通に暮らす、優しくて、笑顔が眩しい、黎空とは正反対の明るい人だった。
千世の顔が少しだけ曇る。
「裏社会じゃなくて…もう一つの社会なら片足突っ込んでた」
「どういうこと?」
千世は答えないまま、車のスピードを上げた。
(ここで質問攻めにしたって無駄か)
「ほら、着いたぞ」
(なんで…!?)
車が止まったのは、黎空の家の前だった。
「何で家知ってんだよ!」
いよいよこいつが怪しくなってきた。
(実は狙撃した人物の方が味方だったりして)
「説明すると長くなるから。まさか、お前の正体がもうバレたとは思ってなかった。すぐに上に報告しねぇと」
「上?お前働いてんの?」
「お前口悪りぃな!」
「敬語使う程の偉い奴じゃなかった」
「おい!!」
「てか、私の家で何する気ーーー」
千世がポケットをごそごそと漁り出し、鍵束を取り出した。
「よっこらせ」
「え”?」
束になっているうちのひとつの鍵が、ピッタリと鍵穴に当て嵌まった。
「お前、本当になんも知らねぇな」
ふざけている小学生男子を見ているような目で千世が言った。
「私にとってはお前が異常だよ…」
「失礼します」
さっさと靴を脱いでさも自分の家のように上がり込む千世。
「私の家だからな」
黎空の家は結構広い。そして古い。戦前に建てられた後、祖父の代でリフォームし、そして今に至る。
昔古書店を営んでいた関係で玄関がふたつあり、家の中には書庫まである。黎空が本好きなのはその影響だ。
そして、一番の特徴はー。
入ることを許されない部屋がある。
美鶴だけが、たびたびその部屋に入り、どっと疲れた顔をして帰ってくるのだ。書庫に近いだけに黎空は何度も入ってみようと挑戦するのだが、黎空が推しても引いても重厚の扉はびくともしない。
ただ、祖父母は既に他界、美鶴と黎空に両親は居らず、その美鶴も亡くなったとなれば今やこの家は十七歳の黎空ただ一人の物となる。
「向こうに着いたら、俺とリンクスで全部説明してやるから」
不服そうな黎空の心を読んだのか、諭すような口調で千世が言った。
「リンクス?」
「人の名前。偉いヒトだから大人しくしてろよ」
「そんなに子供じゃない」
「あっそ」
そうこうしているうちに、黎空と千世は大きな扉の前に立っていた。
「入れない扉…」
「お前にとっちゃな」
千世が手のひらでドアノブを握る。ぼんやりとした光が滲み出たような気がした。
「だから開かないんだっ…!?」
深い茶色の古い扉は、ぎいっという音を立ててゆっくりと開いていった。
「ようこそ、言霊の幸う国へ」
千世が、扉の向こうで待っている。