美歌の歌声が大きくなる。
チケットを投げるように係員に渡し、僕は人混みをかき分けてステージの近くまで懸命に走った。
こんなに走ったのはいつぶりだろうか。
そんな思いもかき消されるほどに僕の心は昂っていた。
[明朝体]「アシタモヨウを探せ
ずっと君の中にあるモノ
ちゃんときっと、このココロに」[/明朝体]
いつの日かの僕らが好き好んで歌ったお気に入りの曲。
美歌の姿が見えた。
長い髪を束ねて、純白のワンピースを着た美歌はとても美しかった。
僕は駆けた。
ただただ、溢れる思いを歌にしたかった。
「僕はまだ、なにも出来ない」
小さく、つぶやいた。
その時、誰かと視線が交差した。
「今回は、今を生きる新生ギタリストのYu-rinさんにお越しいただきました!!まさに夢のコラボですね!」
司会者の笑顔が弾ける。
眩しくて、僕なんかとは比べ物にならない二人。
一緒に活動してきた男友達との間には壁があった。
僕が気がついていなかっただけで。
あいつも、ステージの向こうに立つほど僕と隔絶されていたのか。
もう、二人はあんなに遠くに…。
目があったのは、Yu-rinだった。
微かに瞠目した彼は、自分の持っていたマイクを僕の方へ投げた。
何故かはわからない。
あんなに小さな呟きが聞こえたわけがない。
「俺よりよっぽど、期待の新星が居ますよ」
友人は、司会者に顔を向けながら口角を上げた。
Yu-rin のウィンクが見えた。
僕はどよめく観衆たちの中、口を開いた。
「僕はまだ、何も出来ない」
美歌がこちらを向いて、唇を震わせた。
「あぁ…」
口の横につけられたマイクが、美歌の微かな呟きを増幅させて僕の耳に届かせた。
「僕はまだ、何か足りない 僕は」
訴えたい。
僕のこの感情を、何年も溜めてきたこの思いを、この世界への気持ちを。
「世界を憎みたい でも憎めない」
君がこの世界を愛しているから。
「僕はまだ、何も出来ないまま」
観客達の声が聞こえなくなる。
静かになったのか、僕の耳に届いていないのかはわからない。
「君はもう、遠くへいる
君はもう、何処か離れた地で
君は自分を誇りたい でも誇れない」
ずっと二人で笑い合えると思っていた。
「僕はもう、僕の知る君じゃない」
なのに。
「君がどれ程僕を恨もうとも
何も世界に残っちゃいないんだ
僕がどれ程君を想おうとも
世界の果てに届きやしないんだ」
全てをぶつける。
それが不思議と、僕のなかに快感を伴って流れ込んで、それが僕の歌となる。
「だからもう、会えないな」
喜びと驚きと、寂しさに身を震わせる美歌が、僕を見た。
観客達は、静かに揺れていた。
チケットを投げるように係員に渡し、僕は人混みをかき分けてステージの近くまで懸命に走った。
こんなに走ったのはいつぶりだろうか。
そんな思いもかき消されるほどに僕の心は昂っていた。
[明朝体]「アシタモヨウを探せ
ずっと君の中にあるモノ
ちゃんときっと、このココロに」[/明朝体]
いつの日かの僕らが好き好んで歌ったお気に入りの曲。
美歌の姿が見えた。
長い髪を束ねて、純白のワンピースを着た美歌はとても美しかった。
僕は駆けた。
ただただ、溢れる思いを歌にしたかった。
「僕はまだ、なにも出来ない」
小さく、つぶやいた。
その時、誰かと視線が交差した。
「今回は、今を生きる新生ギタリストのYu-rinさんにお越しいただきました!!まさに夢のコラボですね!」
司会者の笑顔が弾ける。
眩しくて、僕なんかとは比べ物にならない二人。
一緒に活動してきた男友達との間には壁があった。
僕が気がついていなかっただけで。
あいつも、ステージの向こうに立つほど僕と隔絶されていたのか。
もう、二人はあんなに遠くに…。
目があったのは、Yu-rinだった。
微かに瞠目した彼は、自分の持っていたマイクを僕の方へ投げた。
何故かはわからない。
あんなに小さな呟きが聞こえたわけがない。
「俺よりよっぽど、期待の新星が居ますよ」
友人は、司会者に顔を向けながら口角を上げた。
Yu-rin のウィンクが見えた。
僕はどよめく観衆たちの中、口を開いた。
「僕はまだ、何も出来ない」
美歌がこちらを向いて、唇を震わせた。
「あぁ…」
口の横につけられたマイクが、美歌の微かな呟きを増幅させて僕の耳に届かせた。
「僕はまだ、何か足りない 僕は」
訴えたい。
僕のこの感情を、何年も溜めてきたこの思いを、この世界への気持ちを。
「世界を憎みたい でも憎めない」
君がこの世界を愛しているから。
「僕はまだ、何も出来ないまま」
観客達の声が聞こえなくなる。
静かになったのか、僕の耳に届いていないのかはわからない。
「君はもう、遠くへいる
君はもう、何処か離れた地で
君は自分を誇りたい でも誇れない」
ずっと二人で笑い合えると思っていた。
「僕はもう、僕の知る君じゃない」
なのに。
「君がどれ程僕を恨もうとも
何も世界に残っちゃいないんだ
僕がどれ程君を想おうとも
世界の果てに届きやしないんだ」
全てをぶつける。
それが不思議と、僕のなかに快感を伴って流れ込んで、それが僕の歌となる。
「だからもう、会えないな」
喜びと驚きと、寂しさに身を震わせる美歌が、僕を見た。
観客達は、静かに揺れていた。